表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
揺訳 捜神後記/異苑  作者: ヘツポツ斎
捜神後記一巻 神秘的存在との邂逅
3/198

捜01-02 仙館玉漿


洛陽らくよう近くの山、嵩高山すうこうざんの北に大穴があり、深さも測りきれなかった。この場所は一種の観光名所になっていた。


西晉せいしん初めころ、一人の男がうっかり穴に落ちた。到底すくい上げられぬと悟った友人たちは、せめて男が死なないようにと食糧を穴の中に投げ込んだ。男はその食糧を食いつなぎ、その穴がどこかにつながっていないものかと求め、奥へ奥へと進んだ。


およそ十日ばかり行ったところで、ようやく視界に明かりが見えた。たどり着けば、そこには小屋が建てられており、中では囲碁で対局する二人組があった。


彼らは対局の合間に白湯を飲む。しばらくの旅程の末喉も腹もカラカラとなっていた男はふらりと小屋に入り、自身の窮状を訴え出た。


すると碁盤を囲むひとりが言う。

「ほれ、飲め」

男がそれを飲むと、またたく間に体力気力が充足された。


「お前はここにとどまりたいか?」

「いえ、帰りたいです」

「なら西に行け。天井に井戸があり、そこには蛇がうごめいてこそいるが、気にせず飛び込むのだ。そうすれば脱出できるだろう。万が一途中で飢えることがあるなら、手近なものを適当に食えば良い」


男がその言葉に従うと、本当に天井に蛇のうごめく井戸があった。意を決して男が飛び込むと、蛇たちはみな男を避けた。

男が井戸の中を進めば、やがて目の前に青泥のようなものがあった。美しく、かぐわしい香りを放っていた。それを食べると、男は一切飢えを感じなくなった。


そこから半年ばかりし、ついにしょくの地に出ることが叶った。


男は蜀から洛陽にまで帰還すると、こんな話があったのだ、と張華に語る。これはいったい何だったのだろうか、と。すると張華は答える。


仙館せんかん大夫たいふが飲んでいたのは玉漿ぎょくしょうで、そなたが食したのは龍穴りゅうけつ石髓せきずいである」




嵩高山北有大穴,莫測其深,百姓歲時遊觀。晉初,嘗有一人誤墮穴中。同輩冀其儻不死,投食於穴中。墜者得之,為尋穴而行。計可十餘日,忽然見明,又有草屋,中有二人對坐圍棊。局下有一杯白飲。墜者告以饑渴,棊者曰:「可飲此。」墜者飲之,氣力十倍。棊者曰:「汝欲停此否?」墜者曰:「不願停。」棊者曰:「從此西行,有天井,其中多蛟龍。但投身入井,自當出。若餓,取井中物食。」墜者如言,投井中,多蛟龍,然見墜者輒避路。墜者隨井而行,井中物如青泥而香美,食之,了不復饑。半年許,乃出蜀中。歸洛下,問張華, 華曰:「此仙館大夫所飲者玉漿也;所食者龍穴石髓也。」


(捜神後記1-2)




初読ぼく「あっこの人さくっと張華さんに会えるレベルの人なんですね」


いや迂闊に貴顕に会えすぎとちゃう? 当時の洛陽って普通に数十万規模の都市よね? 一万規模でももうトップ近くにはまともに知遇も持てないと思うんですけど。


とりあえず十日も光のない洞穴の中を淡々と進める時点でこのひとの精神力半端ねえなって思いました。現代人なら半日とせず狂うわそんな環境。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ