新たなる精霊使い 1
今回はだらだらと長い文章になりそうです><
「ここか……」
「思ったよりも時間掛かっちゃいましたね」
「そうだね……」
勇と由梨は、アパートの前に立っていた。
アンクレットの行方を追っているとここへとたどり着いたのだ。
由梨は、アパートを見上げると勇に問いかけた。
「どうします? 一般の人が拾ったみたいですよ」
「どうするも回収でしょ?」
「まぁ、そうなんですけど……」
勇の答えに由梨は、思わず苦笑する。
由梨は、どうやって回収するつもりか聞いたのだが勇には伝わらなかったらしい。
そんな会話をしているとアパートの一室から急に光が漏れだす。
それに気づいた2人の表情が引き締まった。
「この光って……」
「封印が解けたみたいだね」
由梨の途切れた言葉を勇引き継ぐ。
「行くよ」
「あっ、はいっ!」
一言いって、先に行こうとする勇を由梨が少し遅れて追いかける。
由梨が勇に追いつくとすでに勇光が漏れていた一室の扉を揺さぶっていた。
「開かないんですか?」
「あぁ……こうなったら」
勇が扉に手を向けるのを見て由梨が慌てる。
「なにするつもりですか!?」
「ドアを壊すつもりだけど?」
「乱暴ですよ」
「じゃあ、他にどうするの? 中に居るのは一般人と封印されてた精霊だよ?」
「それは……分かりました」
由梨が巻き込まれないように後ろへ下がる。
勇の手のひらが紅く閃き扉へと翳そうとすると急に重苦しい気配が消えた。
由梨が首を傾げつつ扉を開けようと引いてみるとあっさり開く。
「あの、開きましたよ……?」
由梨が後ろを振り返ると勇はもういなかった。
視線を扉に戻すといつの間にか勇が部屋の中へと入ってしまっていた。
「一応これって不法進入ですよ? せめて靴ぐらい脱いで入りましょうよ」
とどこかずれたことを言いながら、注意した張本人も土足で勇の後を追ってはいる。
勇はそれを目の端で確認しながら迷わず先ほど光が漏れていた部屋のドアを開ける。
「っ!!」
「そんな顔してどうかしました……えっ!?」
立ち止まった勇の後ろから部屋の中を覗いた由梨も驚愕する。
「うそ……精霊が実体化してる」
「ちっ……」
部屋の中には黒い翼を持った精霊が一体そして精霊に抱かれている人間――翔だ――が居た。
精霊そのものが人間に触れている……それは実体化していないと出来ない事だ。
そして、実体化出来るのは高位の精霊のみ。
二人には相手の精霊が目的が分からない、しかし精霊にしかも高位のものに一般人が
近づくのは危険すぎる、引き離すには戦闘が必要になるかも知れない
二人は自然と警戒態勢にはいった。
二人の存在を確認した精霊が口を開いた。
「貴様らは、何の用だ?」
「その人を放して欲しいんだけど」
「そうか……悪いがそういうわけにいかないな」
精霊の手に大鎌が現われるとそれを二人へと向ける。
「主を渡すわけには行かない、とりあえず消えてもらおう」
「くそっ……」
いよいよ、戦闘に入ると思われた頃第三者の声がそれを制止した。
「お待ちください」
「ダリア?」
宙にふわりと紅髪の女性が現われた。
その体は少し透けている。
「サラマンダーに属するものか、なんの用だ」
「どうかその鎌をお納めください、私どもに敵意はございません。
どうか話を聞いて頂けませんか」
「……話してみろ」
黒い翼を持つ精霊は、鎌を消したりはしなかったが2人に向けていた刃先を降ろした。
それを確認するとダリアは静かに話し始める。
なぜ、勇達がここへ来たか、なぜその人間を引き離そうとしたのかを話した。
それを聞き終えると黒き翼を持つ精霊が口を開く。
「その話からすると私は再び封印されそうだな、やはり消えてもらうか」
再び鎌を向けたとき精霊の腕の中に居た翔がうぅと唸り始めた。
「頭がボーっとする~」
翔は目をごしごしと擦ると寝ぼけた瞳で周りを見渡す。
宙に浮いている謎の綺麗な女の人、翔を抱いている謎の翼をもつ男、そして男に大鎌を向けられている謎の二人組み。
(鎌を向けられている、二人)
「……えぇぇぇぇ!!!!」
それを見た翔は眠気も一気に覚めて、男に全力で訴えかける。
「ちょっと、そんな危ないもの下ろしてっ!! 今すぐ!!!」
「では、私の名を呼んで命令しろ、さっきつけただろう」
「名前?」
(そう言えばそんなものつけたような……)
「えっと……シフェル鎌下ろして?」
「なぜ疑問系……まぁ、命令だ降ろすとしよう」
金属音を立てて鎌が降りたことを確認できると翔は鎌を向けられていた二人組みへと話しかけた。
「あの、大丈夫? 怪我とか無い?」
「大丈夫ですよ。 私たちこそ不法侵入してしまってごめんなさい」
「そう言えば確かに……えっと何でこんなところにいるんですか? それとシフェルも」
まさか、こんな大人数で強盗にで来たのだろうかと翔は考えたがまぁ仮にそうだとしても
盗る者ないしと開き直る。
「私については、お前が自分で連れてきたのだろう」
「えっ? 連れてきた覚えは無いんだけど……」
翔があれこれ考えていると由梨がそれに割り込んだ。
「さっきシフェルさん? ってあなたの事主って呼んでたけどもしかして契約してるの?」
「契約?」
「先ほど結んだ」
シフェルの答えに二人は顔を見合わせた。
お互いにアイコンタクトを交わす
(勇先輩、契約結んだって言っていますよ)
(そうみたいだな……あいつ、修行でも積んでいたのか)
(さぁ? でもどうします? 封印が解けて契約してしたんだったら、精霊をこの人から引き離す必要も無いですし、アンクレット持って返っても意味ないですよ?)
(とりあえず、ついて来てもらおう)
(そんなうまく行きますかね?)
(やるしかないだろう)
そこでアイコンタクトは終了して、勇が翔の腕を掴む。
「何?」
「今すぐついて来い」
その瞬間、勇の首筋にシフェルが鎌を当てた。
「こいつに手を出すのなら消すぞ? これは私のお気に入りだ」
その、状況に由梨は心の中で絶叫した。
(ちょっと、勇先輩馬鹿ですか! 愚か者ですかぁぁ!!!!)
そんな戦闘に突入しそうになった状況を収めたのは又しても翔だった。
「とりあえずシフェルは鎌を下ろそう、それでえっと誰だっけ?」
「勇だ」
「えっと勇、俺全然今の状況が分からないんだ。バトろうとするし契約とか意味不明な
言葉が出てくるし、それから説明してくれない?」
「ついて来たら後で説明するから、とり合えずついて来て」
「私は反対だな、また封印されるのはごめんだ」
「あっ、それについては大丈夫ですよ。契約している精霊をむやみに封印なんてしませんし
危険でないのなら封印する必要もそもそも無いですしね」
シフェルや由梨が封印などと言葉を持ち出したので余計に翔の頭が混乱する。
(あぁ~、もう意味わかんねぇ~)
翔は頭をわしゃわしゃと引っ掻き回す。
「決めたっ!! ついて行く、そんで早く説明しろっ!!」
「主がそうするなら仕方がない、ついて行こう」
「じゃあ、決まりですね早く行きましょうか」
今まで、静かに事の次第を見守っていたダリアは丸く収まったのを感じると
主である勇へと一礼した。
「それでは、失礼します……それとごめんなさい」
「ごめんなさいって、なにが?」
ダリアは静かに微笑んで空気に溶けるように消えていった。
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こうしたら、良いなどのアドバイスが有れば書いただけると嬉しいです。