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どぼん!
「 湯はわいておりますが、まだ熱くてとても 、 」
すると、囲炉裏の傍の女がこちらに膝をむけ、ありがとうございまする、と手をついて頭をさげた。
「 ・・・いや、あのう、まだ、熱くてはいれやしませんので・・・ 」
なんだか、《幽霊》だか《モノノケ》だかの、思ってもいなかった礼のことばにとまどってしまい、お茶でも飲んで待たれたほうが、とさきほど倒してしまった湯呑や急須をそろえなおした。
どぼん!
「なんと!? まさかもうはいられましたか!」
振り返った時にはもう囲炉裏のそばに女はおらず、水にとびこんだ音におどろき風呂場の戸まで走り寄った。




