30/50
約束
言ってしまってから、ようやく自分の背筋が冷えたが、口からでた言葉はもどせない。
腹をきめて顔をあげた。
「 ―― ただ、しずかにゆっくりと浸かりたい、というのならば、どうぞおはいりなさい。 ですが、汚すも壊すも、けっして、しないでいただきたい」
囲炉裏のむこうの女の顔が、こんどは横にぐにゃりとのびた。
「 つかりにまいりました 」
はて、夢の中の女も、こんなふうに同じ言葉を繰り返していたのだろうか。
それで、起きても覚えているのか?
「 ―― それは、わたくしと約束できるということですか?」
驚いたことに、これに女は、ゆっくりしずかに首をたてにした。




