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風呂に浸かりに
「 ここへきて、なにかなさろうと?」
「 風呂に 」
「 ―― は?」
「 つかりにまいりました 」
「・・・・ふろに?」
湯をもらいに、とでも上品に口にしそうな身なりで、風呂に浸かりにきたという女が、やはりなんだか、こわくなってきた。
「それは、・・・」
「 あたたかいと 」
「まあ、そうでございますが・・・」
「 つかりにまいりました 」
「はあ・・・。いや、いやちょっとお待ちくださいよ」
ゆがんだ顔の女に、男は片手をたててみせた。
「 その、おまえさまが、《モノノケ》だか《幽霊》だかは、ぞんじませんが、 風呂を汚すとか、使い物にならなくするとか、そういうのをくわだてているのなら、おことわりいたします」
女に頭をさげる。




