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雪の季節になる
たしかに、母には何度か心配されたことはある。
弟には、にいさんもしかして男のほうがいいのか、と真顔できかれたこともある。
が、どちらも最後にはあきらめたような息をつき、そうか要は人に興味がないのか、とうなだれ納得したようだ。
「 どちらかといえば、《ヤマオトコ》にひきいれられそうな気質のようじゃが、だがおまえさんの場合はまだ、山の下に心残りになるものがある。 そういう重しがあれば、ユキオンナなんかに惑わされず、無事にすごせるじゃろうから安心せい」
おどかしたくせに、安心しろといいおき、里長は男の家から預かったという風呂敷包みをおいていった。
どうやら、裁縫が得意な母がしたてた新しい浴衣のようだった。
里長のところには、その母から上等な反物がおくられ、娘四人で取り合いになるさわぎになったという。
そういう親の気遣いによって、里の人たちにも、よくしてもらえている。
これから雪の時期になるから、なにか困れば、遠慮せずにすぐ来るようにといって、長は帰っていった。