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おかしいこと
「 なに、おまえさんみたいに、しっかりとした『役目』を果たそうという男なら、惑わされんだろうがな。 ―― 街や村から、逃げるように山にきた男や、じいさんや親父から受け継いだからと、ただ日々の暮らしをすごしてるだけの男のところには、モノノケがでてきて、 ―― おかしいことになったりするんじゃ」
「その、おかしいことというのは・・・・?」
おそるおそるきくと、里長はまた豪快にわらった。
「なになに、あんたにはおこらんじゃろ。 たいがいが、女がからんでくることだが、親父さんにきいたところじゃ、あんたにそういうところはまったくない、といいさなってたからなあ」
近所のこどもにも、朴念仁とよばれておったらしいのお、といやなことを言う。