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◇
「それにしても綺麗な紫色だな。俺は順番待ちだけど、何色のお茶が来るかなー」
「リュカ、お前はどうやって私の休憩時間を把握してるんだ? 毎日タイミング良すぎだ」
「盗聴してまして」
「は?」
「はは。それは冗談だけど。でもジュールも俺に会えて嬉しいだろ?」
「言ってろ」
苦笑してテーブルに片肘をついた。
「新しい茶葉を買いに行きたいな」
「ジュールが広めたから、この茶葉も欠品してるかもな?」
「私のせいか? 必要ないと言っても口にする前に徹底的に調べられたが」
「そのおかげで効果が認められて、これだけ広まることになったんだろ? 今頃嬉しい悲鳴をあげてるかもしれない」
「純粋に困ってるかもしれないだろ」
「皇帝陛下も難儀だな」
「調べられた分、茶葉も減ったしな」
「根にもってるー」
おどけたように言う、五大公爵家の一家ハールト家の嫡男でもある幼馴染をきつい視線で睨んだあと、ため息を一つこぼした。
広めたと言うより、広まってしまったが正しいんだけどな。
◇
「ご来店ありがとうございます。お変わりなくて良かった」
「イザベル殿も元気そうで。頼んでいた茶葉を受け取りにきたよ」
「はい。ご用意しております!」
はじめて会った日から一ヶ月ちょっと。ジュールさんからも魔法鳥が飛んできて茶葉を頼まれて、用意出来たのが数日前。
それから日をあけずの来店で。
顔を見たいからと来店してくれたのが嬉しい。
「イザベル殿のハーブティーは凄く効く。おかげで疲れにくくなったし、体調が良いんだ」
「お役に立てたようで嬉しいです。森の魔女の秘密の配合なんですよ」
「だから良く効くのか」
柔らかく微笑むと、ジュールさんは数度瞬きした後、満面の笑みを浮かべた。
「あ、はい」
その笑顔が心に刺さって、思わず顔を伏せてしまった。