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第十九章 村方騒動―下剋上―   その三

 三郎衛門が、初めて惣代に就任した当時の騒動をやり玉にあげ、()()()()()()とその後の()()を強く非難した。

 一旦この場は、他所の惣代が仲裁に入って騒ぎを収めたが、今度は三郎衛門の方が本当に()()()()に走ってしまう。


 惣代の出張費用が大き過ぎるだの、割増して懐に入れてるだのとあんまり文句垂れるのなら、次回の国訴には()()()()()()()()()()も兼ねてもらえばよい、とへそを曲げてしまった。

 然も村の寄合で話し合うことなく、サッサと()()()()()()()()()()()()()()()()も兼ねてくれるよう依頼してしまう。

 当然、村役たちへの報告の場は、()()()()()()()で紛糾してしまい、収まるどころではない。

 一気に三郎衛門の()()()退()()()()の要求にまで、話が進んでしまった。

 間に入った仲裁役の惣代や住職達は、頭を抱えてしまう。


 一方非難轟轟(ひなんごうごう)ですっかりへそを曲げた三郎衛門といえば、いきなり立ち上がり、

「誰がこんなしんどい役を何年も引き受けて来た思とんじゃ!こないな言われ方される筋合いないわい!言われんでも、こっちから辞めたるわい。辞めじゃ辞めじゃ!」

と言い放ち、その場から出て行ってしまった。


 その姿を見た新兵衛たちは、ニヤリとこれ見よがしに周りの村役たちを見回し、

「皆、しっかと聞かはったな。三郎衛門はん自らお辞めにならはったで」

 と確認し、早々に次期惣代選を行うことを承認させて、この場は解散となった。


 三郎衛門付き添いの千吉と喜平は慌てて後を追い、一テンポずれて息子の政三郎も後に続く。

 ところが探し回るまでもなく、玄関でうずくまる三郎衛門が見つかった。

「三郎衛門はん、どないしたんよ!心の蔵が苦しいて止まりそうなんか?死んだらあかん!」

と、千吉が抱えるように支える。

「あほ!誰が死ぬんじゃ!わし殺す気か。なんや立ち眩みして、腰が立たんのじゃ。手えかせ」

「喜平!駕籠や、駕籠呼んでんけ」


 千吉が叫ぶも、三郎衛門は慌てて呼びに行こうとする喜平を呼び止め、

「だんない、だんない。(大丈夫)余計なことして騒ぎ立てるな。ちょっと手え貸してくれたらええのや」

「お父はん!」

 と縋り付いて、涙ぐむ政三郎の首を抑えて何とか立ち上がろうとする三郎衛門を二人が支える。

 ようやく立ち上がった三郎衛門は驚くほど軽く、力が感じられなかった。


 喜平も千吉も何も気づかずにいたことをひどく悔やんだ。

 こんなに弱っていたとは、何のための側仕えか!

 中の歓声を背後に聞きながら、四人はゆっくりと夕闇の中へ歩を進めて帰路につく。

 気丈にも支えられながら、屋敷に着くまで自分の足で帰った三郎衛門は、この後二度と床から起き上がることはなかった。




この物語も最後のクライマックス。とはいえ、タダでは起きない三郎衛門はん。

何やら裏がありそうです。



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