役人の腐敗
「讃岐国は貧しい国なのか?」
道真は疑問を持った。讃岐国は米や塩、魚、海苔、昆布などが特産品であった。これらの品物は品質が高く、質の良いものであった。ところが、官吏の腐敗によって庶民の生活は困窮を極めていた。
「投餌不支貧 売欲充租税」
道真の作った漢詩である。漁師は魚をとっても貧乏のままである。税金ばかりが取られると。民衆が辛酸をなめている時に役人だけが甘い汁を吸っていた。役人の税金の取り方は恣意的であった。ルールに基づいた公正性や透明性は皆無であった。役人達は空虚であった。
彼らには目的意識がなかった。ただ漠然と日々を過ごしているだけであった。彼らにとって人生の意味や価値はなかった。あるのは役職と金銭への執着のみであった。
道真は嘆息するしかなかった。
「讃岐国の民よ、すまぬ!」
道真は心の中で詫びた。そして、この国に平和をもたらすために自分ができることは何だろうかと考えた。
「民のために働く役人が私腹を肥やしてはならない」
それが道真の持論であった。道真は役人が権限を悪用することを恐れた。道真は讃岐国府の役人の様々な不正を発見すると是正していった。道真は「不正・汚職は厳罰に処す」という姿勢を示した。役人が職務で罪を犯した場合は機械的に罰を倍にした。
このために道真には役人からの人気はなかった。
「何でこれほど嫌われるのだろう」
道真は不思議に思うのと同時に、不安にもなってきた。
「このままではまずいな」
道真は、讃岐国を安定させるために様々な政策を実行した。民の暮らしをよくするために、まず租税を軽くした。道真は讃岐国内での農業生産力を増強するために、灌漑用水路を整備したり、農地開拓を行ったりした。道真は現地の役人任せにせず、自ら現地に赴いて行政指導を行った。道真は自らの足で歩き、現地の状況を把握して改善策を考え実行した。
「道真様のおかげで生活が良くなりました!」
「菅原様、あなたは素晴らしい方だ。私はあなたのことを尊敬します」
「恐れ入ります」
道真に感謝する人が増えた。道真は讃岐国司として善政を敷いたため、次第に人々から慕われるようになった。
讃岐国には道真を疎ましく思っている者もいた。腐敗官吏達である。彼らは道真を悪く言った。彼らは口汚く罵り始めた。
「何だ、あの野郎! 俺達の生活を良くしておきながら、あんなに偉そうにしやがって」
「あいつは自分だけいい思いをしているんだぞ」
「そうだ、そうだ」
「許せねえなあ……」
「あいつは讃岐国の恥さらし者だ。あんな奴がいるから讃岐国はダメになるのだ」
彼らは口々に不満を言い合った。道真は彼らの言葉を聞き流した。
「どう思われても仕方がないさ。私はただ、自分が正しいと思うことを行っているだけだからね。私は諦めないぞ。いつか必ず、この国を正しい姿に戻してみせる」
道真は決意を新たにした。道真は自分の信念に従って行動し続けた。その結果、多くの人から支持されるようになっていった。