博士と助手くん
1,天才博士は退屈
「あー、暇だぁ、暇だよ助手くん」
「はい?」
「だーかーらー暇だと言っているんだ!」
「何ですか博士、藪から棒に」
「藪から棒でも何でもないっ、毎日毎日この研究室に籠って!研究、研究、実験、実験の日々じゃないか。退屈だぁ退屈だぁ、退屈で夜も眠れない。あー私は気が狂ってしまいそうだよ。誰か私を楽しませてくれる人はいないかなぁぁぁ」
「ちっ、藪蛇でしたか。博士、そんな子供っぽく駄々をこねないでください」
「私は子供ではない!この魅力的な大人のレディに向かってなんてことを言うんだ助手くんは!」
「そんな小さな胸で誇らしげにしても意味ないですよ博士」
「な、な、なんだとっ!」
「大丈夫です。博士は全体的に小さくて可愛いですよ」
「セクハラだぞバカっ!私は立派な成人だ!」
「ぐはっ、み、みぞおちはやめてくださいよ」
「ふんっ、知るかそんなこと」
閑話休題
「そういえば、暇だから楽しませろって話でしたね」
「そうだった、いやー忘れてたよ」
「じゃあこの話は無かったことに…」
「嘘だよ!完璧に覚えているね!さぁ何をしてくれるんだい助手くん」
「では、運動をすればストレス発散になると思うので、バドミントンとかどうですか?」
「いいだろう、助手くんのその顔面にスマッシュを何度もぶち込んであげようではないか」
「怖、怖いですよ博士」
「ウウッ、グスッ、アァァエーンゥゥ」
「そんなに泣かないでください」
「だって、だってぇ、助手くん強すぎるんだもん」
「高校の頃、バド部ですから」
「ずるいぞ、最初から有利な勝負を持ち掛けていたとは。これは私もやり返さないと気が済まないよ!」
「えー」
「ガシャ、シャ、シュッ、パーン、ギチチチ」
「ふっ、はっ、っ」
「ガシャ、ウィィ、シュ、シュッ、パーン!」
「はー、僕の負けです。強くなりましたね博士」
「ふふん、そうだろう、そうだろう」
「まぁ………ロボットですからね。博士はただボーっと見てただけですもんね!」
「私が作ったロボットなのだから、実質私の強さだろう!」
「いつの間にこんなの作ってたんですか」
「暇な時に私が作り出した、人型超高性能万能AIロボット、通称ロボトくんだ」
「こんな所で軽く天才出さないでくださいよ、名前すっげー安直だし」
「な、名前はどうでもいいだろう、しかもこいつ喋れるんだぞ」
「コンニチワ、オゲンキデスカ」
「おお、めっちゃ博士の声だ」
「私の実際の声を録音しているから当然さ。魅惑のボイスに聞き惚れるといいよ!」
「オナカスイタナー、コンバンワ、イイテンキデスネ、ジョシュクンハナゼアンナニムキリョクナンダ……モットグイグイキテクレテモ」
「あああああああああーー」
「今なんか助手くんって聞こえ――」
「あぁーごめんよ助手くん、ちょっとロボトくんの調子が悪いみたいだ!今すぐに修理しなければー」
「わー」
閑話休題
「それで、退屈は収まりましたか博士」
「…」
「博士?」
「収まるわけがないだろう!というか場所が変わっていないんだよ。研究室からまた研究室に行ったんだよ、研究室to研究室だよ!場所が変わっていないから気分転換にならないよー。というかなんで研究室に小さな体育館みたいな部屋があるんだよ!おかしいよっ!」
「博士が運動できるスペースが欲しいってお願いしてたじゃないですか」
「くっ、あまりにも私が優秀すぎて国が従順なせいか」
「自意識過剰はそこまでにしてくださいよ」
「なんだとう」
「それより、どうやったら退屈が収まるんですか?」
「それを考えるのも助手くんの仕事じゃないか」
「そう言われましても……それじゃあ、水族館にでも行きますか」
「デートかね、助手くん」
「デートですよ、博士」
「博士、遅いなぁ」
「すまんねー助手くん遅れちゃって、待った?」
「全然、今来た所ですよ」
「それじゃあ行こうではないか」
テクテク
「いやー、人気の水族館に来れて良かったですねー博士」
「本当にそうだね助手くん。ん?あれは間違えて入れられたミミズかな」
「チンアナゴですよ」
「こっちにはイワシの群れもいるじゃないか」
「あれはアジです」
「おっ、今度は手づかみで取れるメダカだね」
「あれはドクターフィッシュですよ。博士、体験していきますか?」
「何を言っているんだい助手くん。無理に決まっているじゃないかー」
「あはは、そうですね博士」
「おっちょこちょいだなあ助手くんは、あっはっはっ」
「そういえば博士は水族館にも白衣で来るんですね」
「そういう助手くんだって白衣ではないかーあっはっはっー」
「そうでした、うっかりしてました」
「それにしても、もう夜の9時かぁ、お腹減ったなあ」
「今日はハンバーグでも作りますよ」
「わあ、やったぁハンバーグだぁ!嬉しいー………って違――――う!!」
「なんですか博士、いきなり奇声だして」
「違―――う!なにもかも違――――――――う!どこが水族館デートだ助手くん。ただの水族館の動画ではないか!?ノリでデート風な会話に付き合ってしまったけども!ただ白衣で夜の9時に水族館の動画を見てるだけではないか!そして、私の魚の知識が乏しいことが現になっただけではないかっ!」
「大丈夫ですよ、博士は研究全特化型ですから。魚について詳しくなくても問題ありません」
「えーい、フォローが欲しかった訳ではない!なんだこのまやかしのデートはー!」
「そうですか、博士は水族館あんまりでしたか。それじゃあ今度は映画館、もしくは空の旅や、列車で旅行なども…」
「全部動画ではないか!また研究室で動画見るだけじゃん、in研究室じゃん!これが助手くんの考えるデートなのかっ!」
「そんな騒がないでくださいよ博士。ハンバーグ作ってあげますから。息抜きデートは明日にしましょう」
「………分かった」
2,博士とデート
「おはよう助手くん、いい朝だね」
「おはようございます博士」
「じゃあ今日も私の退屈を紛らわせるために頑張ってくれたまえよ」
「そんなに暇じゃないんですけどね僕たち、仕事ありますし」
「まぁそんなことを言うんじゃないよ助手くん、もう3か月連勤くらい働いただろう」
「確かにそんぐらいは働いてますね」
「ところで、助手くんは私を喜ばせるためのデートプランは考えてきたのかい?」
「完全無欠なノープランです」
「おい」
「すみません。眠いから寝ちゃいました」
「助手くんはある意味ぶれないね。まぁそうなると思って、今日は私がプランを考えてきた!」
「嫌な予感がします」
「ふっふっふっ、これから助手くんは私のためにゼエゼエハアハアと血反吐を吐き出しながら全力を尽くすんだyo!」
「聞くの怖いですけど、いったいどんなデートプランなんですか」
「なぁに心配することはない、ただの王道なデートだよ。まずは服装だ!お互いが白衣のままじゃ雰囲気がでないだろう」
「それもそうですね」
「ということで、助手くんはオシャレな服に着替えてから私の部屋まで迎えに来たまえ!」
コンコン
「迎えに来ましたよー、博士ー」
「!!まっ待つんだ、助手く」
ガチャ
「あ……」
「……」
「…………ありがとうございます」
「さっさと出てけバカ―!!」
閑話休題
「いててて、本気で殴らないでくださいよ博士」
「うるさい、女性の部屋にすぐ入る方が悪いんだ」
「まさか、まだ着替え中だとは思わなかったんですよ。結構時間使いましたし」
「女という生命体は準備に時間がかかるものなのだよ!」
「でも僕は嬉しいですよ。博士がデートプランに、ラッキースケベを入れてくれてたなんて。とても眼福でした」
「君はそういうところがあるよな!この変態むっつりスケベめ!」
「男なんてみんなこんな感じですよ。あっ、その黒のワンピース似合ってますね。普段白衣ばかり見ているので新鮮です。綺麗ですよ博士」
「っ!急に褒めるなバカ、緩急がおかしいんだよー」
「不服でしたか?」
「……不服じゃないよ。とても、嬉しいさ」
「それなら良かったです」
「もう!助手くんにはいつも調子を乱されるよ。軌道修正して予定通りデートをしようじゃないか」
「この後は何を?」
「それは、、、おうちデートさ!」
「まさか初っ端からおうちデートとは」
「助手くんと戦ってみたいゲームがあってね」
「それが、これですか」
「あらゆる武器、ギミック、使い魔などを使って、最終的には相手を肉塊にしたら勝利だよ」
「口調とは裏腹にめっちゃ物騒すぎません?」
「助手くんには昨日バドミントンでしてやられたからね。少しはやり返さないと!」
「根に持たれてるー」
『Ready fight!』
『you lose』、『you lose』、『you lose』…………
「もう少しっ…」
ガャジュッ、グチャア、『you lose』
「くそっ、流石に強いですね博士」
「はっはっはー、もう10連勝してしまったよ!けど、助手くんも飲み込みが早いね。ちょっとひやひやしちゃった」
「次は絶対に勝ちますよ」
『Ready fight!』
「ん、なんですかこれ?超広範囲暗黒連射深紅爆裂銃ってすごい痛い名前の武器」
「なっそれは!天文学的な確率でしか出ない超レア武器じゃないか!」
「へーそうなんですか」
「これは負けられない。私の腕の見せ所だー!」
「ちょっ、博士、ソファーの背もたれの高い場所に立たないでください!危ないですよっ」
「おっとと、あっ」
バタン!!
「いてー」
「……………」
『TIME UP!』 『DRAW』
「引き分けちゃいましたね」
「……」
「…博士、いつまで覆いかぶさってるんですか」
「え、あぁ、た、助かったよ助手くん」
「たく、ゲームに熱中しすぎですよ、博士」
「……こう見ると助手くんは結構まつ毛が長いんだなぁ」
「えっ、なんですか急に。」
「いっいやー、つ、つい、ね」
「……」
「……」
「お盛ンデスネ」
バッ!
「博士!なんであのロボトくんがここにいるんですか!しかも言葉が流暢になってますよ!」
「昨日のうちに改良に改良を重ねた結果、完全自律型のほぼ人間みたいなロボットになったのだよ!」
「進化が目まぐるしいですね!」
「イヤー、スミマセン。邪魔シチャッテ、お茶デモ持ッテキマス」
「博士、たった一日ですごいことし過ぎです」
「そこまで言われると照れちゃうね」
「褒めてません」
「ハイ、お茶デス。ソレニシテモ見テルコッチガ恥ずかしいクライデシタヨ。今朝ノラッキースケベからココマデ、ワタシニ砂糖ヲ何回吐カセル気デスカ。博士ガ、助手クンノタメニ何の服ヲ着ヨウカ悩ンデイル姿ハ、微笑ましカッタデス。先程ノ、助手サンガ博士ヲ庇ッテ助ける姿モ、最高デシタ。ソノアト、フタリ共ミツメアッチャッテ。モウ!ヒニンハシッカリシテクダサイネ!ハハハハハハハハハハハハハハハ!」
「博士、このガラクタ処分しましょうか」
「そうだね助手くん。ぶっ壊してしまおうか」
「ヒィィ!オタスケェェェ!」
閑話休題
「む、もうこんな時間か。お昼ご飯にでもしようじゃないか助手くん」
「そうですか。博士、なんかリクエストありますか」
「何を言っているんだい助手くん。今日は私がご飯を作るのだ」
「えっ、大丈夫ですか。料理はいつも僕がしてるのに」
「ふふっ、これから助手くんは私と新婚ごっこをしてもらうよ!」
「えー」
「駄々をこねるんじゃない!今日は私を楽しませる日だろうー。何事も経験だろう!?やってみようじゃないか!挑戦するのだー、やだやだやだやだー、私の言うことを聞け―!」
「博士の方が駄々こねまくってるじゃないですか」
「えーんえーん」
「分かりましたよ、それじゃあやりましょうか。新婚ごっこ」
「やったぁ!」
「ただいま、博士」
「おかえりなさい、あなた。今日も映画館のチケットちぎりお疲れ様」
「いったい僕はどんな設定にさせられているんだ」
「ご飯にする?お風呂にする?それとも、わ・た・し?」
「それじゃあ、お風呂で」
「ご飯しかないだろう!次点でわたしだろう!なぜお風呂なんだよー」
「じゃあ、ご飯で」
「まったく助手くんは、ほら、頑張って作ったんだよ」
「お、おぉー、……紫、ですね」
「頑張って作ったんだよ、食べないの?食べてくれないの?助手くん?グスっ」
「くっ…」
パクッ
「……美味しい。美味しいですよ!?いったいぜんたいどんな料理か分からないですけど」
「ひ、一言多いぞ助手くん!」
閑話休題
「トランプ、オセロにジェンガ、将棋。結局部屋でゲームしまくってるだけですけど、これでいいんですか?」
「こーゆーのでいいんだよ助手くん。ほら王手だ」
「あー……参りました」
「よろしい。さて、次は趣向を変えてかくれんぼをしようか」
「そんなに趣向変わっていない気もしますけど、いいですよ」
「それじゃあ助手くんは目をつぶって1分数えて、私を捕まえにきたまえ!」
ヒュン
「行動力速いなあ博士」
・・・・・