回想
ーーおいで。
ーーこっちへおいで。
真夜中にその声が部屋に響いた。
ーー誰?
ーー誰の声なの?
柴ちゃんはぼんやりとした目を開ける。
フッと鼻につく香水の匂い。
ーーこの匂いは、、前の、、ばあちゃん?
「ばあちゃん、いるの?」
柴ちゃんが聞いた。
「私はもー向こうに行かないと行けないんだよ。でも、、ずっと柴ちゃんの事を大切に思ってるよ!この家で大切に育ててもらってね」
「ーーばあちゃん、ありがとう」
「いつまでも見守っているからね。忘れないで!!」
そう言って、ばあちゃんの声は聞こえなくなった。
ばあちゃんのところに呼ばれ、着いていかない、と答えたあの日から、ばあちゃんの声は聞こえなくなった。
きっと、ばあちゃんはあの世へとやっと旅立てたんだ。
ーー俺ともこれで本当にお別れが来たんだろう。
ばあちゃん、、。
すごく心配かけてごめんな。
それと、ありがとう。
絶対にばあちゃんの事を忘れないから、俺の事いつまでも、見守っていてね。
散歩道の途中にある公園。
柴ちゃんは立ち止まって、空を眺めた。
赤い夕陽が俺を見下ろしていた。
ーー俺は本当にこれで良かったのだろうか?
心のどこかに迷いを感じながら、過ぎ去ったばあちゃんとの思い出を懐かしんでいる。
もう二度と戻らない日々の暖かさを、けして忘れないように。
朝。
母が見守る中、家に帰ってきた夕夏は元気な声で言った。
「ーーただいま。心配かけてごめんね」
「もう大丈夫」
ーー良かった。
ーー夕夏が無事でほんとに良かった。
ーー神様、ありがとう。




