再出発
ポチは深い眠りの中にいた。
いつの間にか朝が来たようで、周囲が賑やかになっていく。
「由美、もー早くご飯食べちゃいなさい」
由美の母の声。
「わかってるってばー!ちょっと待ってー」
鏡の前で、髪を結んでいる。
「しー」
由美のところに歩いていくと、由美が口元に人差し指を添えた。
手の中の匂いを嗅ぐ。
クンクンクン。クンクンクン。
「これあげる」
由美は手の中から、おやつを一本出してそれを俺にくれた。
いつも通りの毎日だった。
これまでと何にも変わらない。
あの時、思いっきり噛んじゃったのにーー。
「ーーじゃ行ってくるね」
「行ってらっしゃい」
この日、俺は初めて由美を送り出すーーいってらっしゃいと声をかけて。
その事にまったく違和感は感じなかったのが不思議だった。
「よしよし」
由美が俺の頭を撫でる。
毎日がめまぐるしく過ぎていく。
その日。
夕夏は遊園地に連れていってもらえる事になった。ワクワクして昨日は眠れなかった。
目をはらして、階段を下りていくと、静香が言った。
「おはよー。眠れなかったの?」
顔を見るなり母が言う。
なるほど、さすが母はよく見ているもんだ。
「うん。楽しみでーー」
「じゃ急いで顔を洗ってきて」
「はーい」
夕夏と母、そして祐司が乗り込むと、車が動いた。
運転手は祐司だった。




