すれ違い
ーー俺は一人だ。
ーーいつだって、、。
ふぅ。
ポチは小さなため息をつく。
夜がもうすぐ明けるのだろう。
街は少しずつ明るみを帯びている。
「ーーいってきまーす」
由美の母親が仕事へと出掛けていこうと玄関のドアを開けた隙に、ポチは外へ飛び出した。
眠そうな顔で階段を降りてくる由美。
「ポチが、、ポチが、、逃げたー」
母親は怒鳴るようにして叫ぶ。
「ーーどーしたの?」
さすがの由美もビックリして目を冷ました様子だった。
玄関のドアを開け、パジャマのまま由美が飛び出す。
ポチは、目の前に座っていた。
道の真ん中にーー。
スピードを出した車が近づいてくる。
ーーもー間に合わない。
咄嗟に由美が飛び出した。
飛び出した由美に驚き、ポチが逃げたその瞬間。
キキキーー。
物凄い音を立てて、車が止まった。
急停止した車は、もともとそんなにスピードが出ていなかったせいか。
普通に止まり、由美は車にひかれると思ったのだろう。
腰を抜かし、動けなくなっている。
「ーーごめん。俺のせいだ、、」
ポチが由美の元に近づく。
「ーー無事で良かった」
ようやくの思いで、我に返った由美がポチを抱き締めた。
ーーあなたのせいじゃないよ?
ーーポチ、あなたが必要なんだよ?
由美はポチにそう言った。
その言葉を信じる事すら、出来ないポチはトコトコと歩いていった。




