柴ちゃんの性別
俺は男。
間違いない。
ずっとそう思って、生きてきた。
ーーでも、この頃思う。
世間では、子供を産める体を女だと言う。
残念ながら俺は、メスなのだろう。
雄が良かったけどーー。
お父さんもお母さんも「俺」と言う事に対して、何も思っていないようだった。
柴ちゃん回想。
あの頃、柴ちゃんは話せなかった。
当時は犬語で話していたが、今なら分かる。
「お母さん、俺、今日遊びに行ったら、俺が一番キライなヤツがいたんだ。黒い毛並みの生意気なヤツだった」
「ーーキライって言葉はキライだな」
そうお母さんに言われた事もあった。
俺はそれからはキライって言葉を減らしてきた。
俺って表現に対しては、誰も咎める事はなかったからだろう。
そんな風に昔から俺、俺と男言葉で、自分を表現してきた。
それが未だに抜けない。
「私」ーーそう自分を表現するのが、正しいのだろうが、ずっと「俺」と表現してるからか、「私」なんて表現するのが気持ち悪い、、。
ようやく、自分の性を理解した。
俺は、女なんだ。
これまでは、ワンワン言ってれば犬とだけ話せたが、今は違う。人の言葉を話せるようになってしまったんだ。
俺ーーこのままでいいのだろうか?
そんな事を考えていると、夕夏の声がする。
ハッと我に帰った。
「ーー柴ちゃんはね、女の子なんだよ」
「ーー今その事を考えてた。俺、ずっと男だと思い込んで生きてきたんだ。だから、ずっと自分を男として、オスとしての呼び方で自分を表現してきた。それが抜けなくて」
「そっか、、じゃ、私の前にいる時は柴ちゃんも自分の事を「私」って表現して」
ん?
わかった。俺に言えるかな?
ーーわ、わ、、わたし?
すげー違和感と共に挫折感を感じた。
「そうそう。言えるじゃん?」
夕夏は頭を撫でる。
ーーわ、わ、、わたし?!
女言葉で言ってる自分が気持ち悪い。
「はぁ、、ムリだ、、」
すぐに柴ちゃんは、妥協しようとする。
「ーーダメだよ。柴ちゃん。女の子なのに、周りに勘違いされちゃうよ?」
初めての事だった。
俺っていう自己表現を咎められたのも、私って言ってって言われたのもーー。




