運命
退院したその日。
祐司と静香に囲まれ、私は問われた。
柴ちゃんたちの散歩中に事故が起きた事もあり、柴ちゃんたちとお別れした方がいいんじゃないか?と。
ーーお別れなんてする訳がない。したくもない。
ハッキリとそう答える。
「今回はたまたま周りに人がいたから、気づいてくれて良かったけど、、周りに人がいなかったらと思うとゾッとする」
静香は言った。
確かに。
あの時、周りに人が誰もいなかったなら、私はここにいなかったかも知れない。
幸いにもケガ一つしていなかったのだけれど。
せめて柴ちゃんが言葉を話してくれたらーー。
トコトコトコトコ。
吠えもせず、私のところに柴ちゃんが歩いてくる。
頭を撫でると安心したようにして、柴ちゃんがコロコロと甘えるしぐさをしている。
その日。
私は柴ちゃんと翔大を両脇に抱えるようにして、深い眠りについた。
温かい。
こんな時間がずっと続いていたらーー。
その夜。
枕元で声がした。
「ーー俺、今回は考えさせられたよ。遊んでただけなのに、、あんなオオゴトになっちゃって、、ごめんな。夕夏」
肉球で夕夏の頭を撫でる。
いつも彼女がそうしてくれたようにーー。
ーーん?
目を覚ますと、大きな影が見えて驚いた。
声も出せずにいると、、
ペロッ。
ざらついた舌。
窓の向こうから木漏れ日が入り込むと、その姿を現した。
こちらを覗き込むようにして、眺めているのは柴ちゃんだった。
真夜中。
「ーー俺、迷惑かけちゃった。ごめん」
小さな声で柴ちゃんが言う。
「ちょっとした悪ふざけだったんだ。悪意はなかったんだーーでも、こんな事になって、俺すごい反省してるんだ。夕夏には伝えておきたくて、、」
「ーーうん。伝えてくれてありがとう」
夕夏は微笑んで聞いた。
「ーーどーしてこれまで話さなかったの?」
「話すと周りが気持ち悪いって言うのを聞いてたら、何でだか分からないけど、話せなくなったんだ。言葉を忘れた訳でもないのに、、」
「そうだったんだ。まだ話せる事を知って、ちょっと安心した」
本当にホッとしていた。
まだ話せる。
私の友達。これからもずっとーー。




