旅立ち
ーーごめんね。
ーーバイバイ、チビ助たち。
まだ名前すらも決められていない様な子達が旅立っていく。
その姿を遠目に見て、涙を滲ませる。
柴ちゃんと共に残った犬を「翔大」と名付けた。
人の様な名前であるが、柴ちゃんがそうして欲しかったって言ってたのを、思い出したから。
まだ人の言葉を話せた柴ちゃんが、言っていた。
桜の花びらが舞う中で強く思う。
ーー私には欲しいものがある。
家で柴ちゃん一家と暮らす時間が欲しい。
そして、私は7歳になった。
夜になると、お母さんが、祐司のおじさんがバースデーソングを歌ってくれ、私がローソクの火を吹き消してすぐに電気がついた。
「ーー誕生日、おめでとう」
祐司と静香の声がハーモニーを奏でる。
でも、嬉しくない。
こんなのつまんない。
ーー私には欲しいものがある。
もう一度、柴ちゃんの子供たちを取り戻したい。
ある程度の事は我慢してきた。
幼い頃から。ーーだけど。
「誕生日なんて、こんなの嬉しくないーー私は柴ちゃんの家族と一緒に暮らしたいのにー」
父であったはずの祐司、そして母に対して私は本心をぶつけた。
今さらどうなるものでもないと、思いながらーー。




