柴ちゃんの家族
「ーー夕夏、ちょっと来なさい」
静香に呼ばれている。
「ーーはーい。わかったー」
明るくそう答えると、母の元にかけていく。
「ーー座りなさい」
母が言った。
いつもと何か違う。
何かが違っている。だけど、それが何かはわからなかった。
私は椅子に腰をおろす。
「どうしたの?お母さん、、」
「柴ちゃんに子供が出来たわね?五匹も?」
「なんでそれを?」
「祐司から聞いたのよ。その件で話があるのーー落ち着いて、よく聞いて」
「はい」
「柴ちゃんの子供だから、カワイーのは認めるわ。でもね、あんなに多くは飼えないのーーだから、何とかしなきゃいけない」
ーー捨てろ、と言うことなのか。
遠回しではあるが、母の口ぶりからそう聞こえた。
ーーまだもう少しの間はいてもしょうがないけど、、。
母の言葉が止まった。
スタスタスタ。
四本足で、柴ちゃんが歩いてくる。
ワンッ。ワンワン。
その声は怒っている様で、声のトーンがいつもより低い。
警戒心むき出しにして、柴ちゃんが訴える。
目で、声で、表情で。
しかしこんな状況になっているにも関わらず、以前のように人の言葉では話さなくなった。
以前ならこんな話をしていたら、人間の言葉で、「ウソつき」だの何だのと言っていたはずだ。しかし、、今はごくごく普通の様に、ワンワン語で吠えている。
けたたましく耳に残る声。
柴ちゃんの哀愁漂う背中。
私はもうどーにもならない事に頭を抱えた。
事実をねじ曲げられはしないのだから。




