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願い  作者: みゆたろ
33/75

老人

その夜。


ワンッワンワンワンワン。


けたたましい程の柴ちゃんの泣き声で目を覚ました。

祐司が駆けてくる。

「どーした?どーした?」

静香も駆けつける。


ワンワンワン。

ガルルー。


すごく怒った表情をしている柴ちゃんの声が低い。


ーー一体何があると言うのだろう?


母と父が柴ちゃんの目の先を追う。

そこには誰だろ?誰か分からないが、人影の様なものが浮かんでいる。

間違いなくそれに対して柴ちゃんは警戒している様だった。


私には年配で気品のあるお婆ちゃんの様に見えた。


「ーー」


何か伝えたい事があるのだろうか?

年配のその人は口をパクパク動かしている。

その声は聞こえて来ないがーー。

目を閉じて、耳を澄ませる。


「ーーこの子を、、頼んだよ」


年配の人がそう言ってる様に聞こえる。


「ーーあなたは?」


目の前の老人に、問いかけてみる。

しばらくして老人の声らしきものが聞こえてきた。


「私は、、私はーー」


ーーなに?

聞き取れない。老人の声にノイズが重なる。


「私はあなたのお母さんのお婆ちゃんにあたる存在ーー」


老人が言った。

母のお母さんのお婆ちゃん?ーーって事は、もう生きているはずない?

ーーもしかして幽霊?


漠然とそんな思いを巡らせたが、今は怖いとは思わなかった。

「安心」する気を持っているのかも知れない。老人が触れた部分はなぜか暖かい感じがする。

しかし、その老人の手はするりとすり抜けていく。


柴ちゃんも目の前にいる老人に、尻尾を振り今度は喜んだ声で鳴いた。


ーーワンッ。


老人の側を行ったり来たり、チョロチョロとしている柴ちゃんは落ち着かない様子だ。

少しなついているようにも見える。


何となくこんな事を言っているんだろう?


そんな感覚だけで、幽霊と話をした様な気分になる。不思議な気持ちーーでも、イヤな感覚はなかった。


ほんの一瞬瞬きをした瞬間に、そこにいたはずの老人は消えてしまっていた。


ーー一体、彼女は何者だったんだろう。

もはや知る術はない。


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