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怒り
「ーーさっきから言わせて置けば、あんた一体何なのよ?」
母は柴ちゃんの首もとを掴んだ。
怒る時の体勢だ。
「ーーおう、帰ったのか。帰ったらただいまくらい言えよ」
柴ちゃんが言う。
「あ、ただいま」
思わず、と言った様子で、母が言った。
「自分の気持ちにも気づかないなんて情けないな、、」
柴ちゃんが呟く。
「何よ、私の気持ちってーー」
蚊のなく様な微かな声で、母が言った。
「静香って言ったか、、あんたは片桐祐司の事が好きなんだ」
「すっ、好きじゃないわよ」
「否定し続けて、何か実るのか?」
柴ちゃんに聞かれ、ハッと我に帰る。
ーー好き?祐司の事を?
ーー誰が?
グルグルとその言葉が回っている。
思考が停止する。
ーーわからない。何が一体正しいのか?でも、ただの犬にそんな事言われたくない。
母は寝室に入っていった。
私もその後に続く。




