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第2話

二十分間の昼休み放送を終え、僕たちは放送室に持ち込んだ給食を食べながら喋っていた。放送委員会の中でランダムに組まされた班で、まだ二回目の放送だったから、会話は少しぎこちなかった。


そんな雰囲気の中で、僕と愛莉が同じスマートフォンのゲームに嵌っていることが発覚した。お互いにスマートフォンを買ってもらったばっかりで、課金もせず空いた時間を見つけてはちまちまと進めているという状況だったから、ゲームの進度も同じくらいだった。


放送室を出て、六年生の先輩と別れて、僕と愛莉は五年生の教室へと足を向ける。


「今日さ、放課後一緒にやらない?」


僕と愛莉が嵌っていたのは協力プレイができるゲームで、協力プレイをした方が断然有利にゲームを進められる仕様になっていた。だから、僕はやや興奮気味の声色で愛莉を誘った。


「やる! どこでやる!?」


愛莉は瞳を輝かせてそう訊いてから、


「放送室でやろ! わたし、今日放課後放送の当番だから」


と、僕を放課後の放送室へと誘った。


その日、僕たちは放送室に集合して、二人でゲームを楽しんで、午後五時に愛莉が放送をして、帰り道が分かれるところまで一緒に歩いた。そして、来週も放送室でゲームをしようと約束した。


翌週、僕が放送室で待っていると、約束通り愛莉がやってきた。僕たちは先週と同じようにゲームをしたり、それから、お互いのことを話したりして過ごした。この日は僕が放課後放送の担当だった。


「交互に放送してみない?」


そんなことを思いついたのは、午後5時になる直前のことだった。僕たちはゲームをやめて放送の準備に入っていた。マイクを口元に寄せ、原稿をマイクの下に置き、時計の針が午後五時ちょうどを示すのを待つ時間。二人で壁掛け時計を見つめる沈黙の時間に、僕はふとそんなことを思いついた。


「交互にって?」


愛莉は時計から視線を離し、僕と目を合わせた。


「原稿を交互に読むんだよ」


僕は愛莉の瞳を真っすぐに見ながら言った。愛莉は僕の意図を理解したらしく、うんうんと二度頷く。僕が壁時計を仰ぎ見ると、午後五時を数秒ほど過ぎてしまっていた。


「一行ずつね」


僕はそう言いいながらつまみに手を伸ばす。愛莉は一度だけ頷いて、自分の座っている椅子を僕の座っている椅子にぴったりとくっつけた。愛莉の顔がとても近い。


つまみを回して、DVDプレーヤーの再生ボタンを押して、切なく清冽なクラッシック音楽をBGMに据える。


「こんにちは。帰りの放送です」「みなさん、下校の時刻となりました」「今日も一日、楽しめましたか?」「学校に残っている生徒は帰り支度をして」「寄り道せずに帰りましょう」「そして、また明日、元気に登校しましょう」「さようなら」


短い間隔で、交互に口元をマイクに寄せて、僕たちはなるべく滑らかに聞こえるように放送を流した。

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