2、ウオッカとウサギさんと腸内フローラ
地下鉄麻布線猫舘駅を降りてすぐ、猫舘ビルという雑居ビル2階に「女性専用Bar 秘め百合」が営業している。
この木曜日(明日で姫百合荘オープン半年になるという日)、店に入ってすぐのコルクボードの前で、2人の女性客が張り出された思い出の写真に見入っていた。
一番上にはバニーガール時代のクリス店長の写真。
「これ店長だよねー」
「かわいいね、こんな髪長かったんだー」
その下には結婚式と思われる写真が数枚・・・ 純白のウェディング・ドレスの黒髪の美女、そして深紅のウェディング・ドレスの褐色の女性、麗しきツーショット。
「同姓結婚式だ!」
「うわ、きれい・・・」
「この赤いドレスの人、もしかして金曜と日曜に来る占いの先生じゃない?」
「この店で褐色肌の人、パンちゃんと魔女先生しかいないもんね!」
その横の写真も女性同士の結婚式のようだが、これは両者ともに純白ドレス。
「おおっ、これ店長だ!」
「パートナーは日本人なんだね、きれいな人・・・」
さらには店長とパートナーの、ダブル和風花嫁姿の写真もあった。
「日本では同性婚はまだ認められてないけど、こういう式を挙げる人もいるんだねえ」
その時ドアが開いて、新たに入ってきた2人連れがコルクボードの前を通り過ぎていった。
2人の女性は振り向いて、「お、店長!」「噂をすれば・・・」
今日はカウンターの奥では、黒髪をポニーテールにした褐色肌で長身のパンテーラが店長を務めており、あとはバイトのスタッフのみ。
パン「あれ、クリスに夜烏子? 休みの日くらい出てこなくていいのに」
「今日は六本木ヒルズでデートした帰りなんでーす。クリスがお店が気になるっていうから」
「木曜でもけっこう入ってるなあ。パンちゃんファンの常連さんが多い・・・」
小さなテーブル席に腰を下ろし、とりあえずビールを注文。
ストロベリーブロンドをショートにしたクリス、今日は珍しくミニスカート姿。
常連客がチラチラと彼女を見ては、
「店長、プライベートの時は感じがちがう・・・」
「なんかセクシー」「いやらしくないんだけど色っぽいよね」
パートナーの夜烏子は自慢げに、「クリス、ねえさんに負けず劣らず脚がキレイだもんね・・・ 店長の時もミニにすればいいのに」
「それだと女性向けの店じゃなくて、オジサン向けみたいじゃないの。当初のプランだと、『ドキドキするような店』じゃなくて『まったりできる店』を目指してたんだけどなー」
「あまりスイーツのメニューをあまり置かないのも、クリスのこだわりなんだよね」
「スイーツのお店はたくさんあるし、女性が入りにくいわけでもないじゃん」
ビールのグラスが空いたところで、
クリス「さて、キンキンに冷えたウオッカをやりたいところですが、奥さん、つきあいませんか?」
夜烏子「女房酔わせて、どうするつもり?」
クリスはウオッカをストレート、夜烏子はウオッカ・トニックを注文したところで、小さなテーブルの上で頭を突き合わせるようにして、ヒソヒソ話に突入。
今宵は2人ともノースリーブの服なので、肌色の面積が多くてセクシーな絵面である。
夜烏子「ウチでは絶対、クリスがいちばんスタイルいいよ! 2番がローラさんかなあ」
クリス「仲間うちでランキングするのは禁止でしょ!」
夜烏子「あ、そーか! えへへへ・・・ 今、クリスの体のことしか考えられなくてさ」
顔を上気させるパートナーを、しみじみ眺めるクリス。
「今まで、あまり相手できない日が続いて申し訳なかったね! 夜烏子に負けず劣らずインでセが好きな私だけどさあ、やっぱり店を軌道に乗せるまではね・・・」
「わかるわかる! 疲れて帰ってきて、なかなかセをする元気はないよね。でも、これからは週休2日だし」
ほとんどキスするかのように顔を近づけ、声を潜めて、
「これからは夜烏子とガンガンHする! スケベなことでは私も負けてないっすよ! あと紅鬼さんの言ってる全員恋人計画の課題も・・・ 夜烏子はみんなとやった?」
「えーと、まりあさんと燃子さん、湯香ちゃん、龍子、アリスンがまだで、残り5人とは済み」
まりあと燃子はまだカップルになって日が浅く、お互いの絆を強めている段階なので、他の住人が恋人にすることはできない。
クリスは指折り数えて、「私は紅鬼さん、ミラ姉、ローラ、パンちゃんと済みだから・・・ お互い次は龍子が目標かな?」
「龍子・・・ あの子もけっこう、パンちゃん以外の相手とはあまり乗り気じゃなさそうなんだよね」
「ま、そういうタイプの子もいるよ。私らが性欲強すぎるんだよね・・・」
夜烏子は、グラスを握ったクリスの手の上から自分の手を重ね、
「私たち、お似合いのカップルだね!」
「姫百合荘で唯一のお見合いカップルなのにね。相性バッチリだったねー」
「みんなのようなドラマチックさに欠けるけど・・・」
「私は夜烏子にたどり着くまで、けっこういろいろあったんだよ!」
「あ、そうだったね・・・」
それは2年近く前のこと。
クリスは錦糸町の「バニーさんのお店 ぺーぺーしゃ」というロシアン・キャバクラのナンバーワンのバニーだった。
が、勤務が明けて自宅のアパートに向かうクリスの足取りは重く、シケた顔をして、心は憂鬱だった。
3ヶ月つきあった日本人男性と、今夜破局したのである。
クリスにとっては3人目の男・・・ 最初の相手は高校時代、2人目は大学に相当する訓練学校時代、そして3人目は初めての日本人だったが・・・
「仕事を辞めろ、家庭にいろ、俺は浮気するけどお前はするな」という態度の男であり、別れるしかなかった。
そのうえセックスもヘタクソ、クリスを満足させたことは1度もない。
「ぺーぺーしゃ」の客の中では比較的若く(頭髪もそろっており)、まあまあイケメンで金持ちだったのだが、やはり無理。
(はあ~っ どうして、こうロクな男がいないんだろう・・・ 恋人は欲しいのに・・・ 1人はイヤだよう1人はイヤだよう)
錦糸公園の入口に差しかかったところで、「おねーさん、ちょっとちょっと」と声がかかった。
振り向くと、全身をすっぽりと黒い布で包んで、濃い化粧の目だけをさらした、見るからに怪しい女が、地面に店を広げていた。
「バニーのおねーさん、悩みがあるようじゃないか。ちょいと運勢見てあげるよ」
理系のクリスはふだんなら占いの類は信用しないのだが(まして、この女の怪しさといったら!)、今回ばかりは吸い寄せられてしまった。
「どうしてバニーってわかったですか?」
「それはねえ、むっふっふ」
クリスが着替えの際、取り外すのを忘れたまま頭に残っているバニーの耳を見ながら、占い師は勝ち誇った笑みを目に浮かべていた。
「悩みはズバリ、男だね!」
「えええーっ!」
ショックを受けるクリス、先ほど「どうして、こうロクな男がいないんだろう」とつぶやきながら歩いていたことさえ、記憶にない。
占い師は手を伸ばすと、クリスのそばかす顔、真剣なまなざしのタレ目、ほんのちょっとだけウサギのように前歯2本が出ている口とかわいい唇をなでてみて、
「これはひどい、占うまでもなく男運が相当悪い。一生いい男との出会いはないと言い切れる」
「えええ・・・そんな・・・ 何がいけないです?」
「あなたはまったくいけなくありません、いけないのは男です。で、考えてみたんだけど。男のことは忘れて、女を恋人にしてみる、という選択はどうかな?」
クリスは頭を殴られたような衝撃を受け、
「女! 女ですか・・・ そういうシュミはまったくないんだけど・・・」
「女となら幸せになれるかもしれない」
「幸せにはなりたいけど・・・」
占い師は立ち上がると、「ちょっと私といっしょに来なさい」
大きなダラッとしたバッグに商売道具を詰めこんで、クリスの手を引っぱって歩き始めた。
「ええ・・・うちに帰りたいんだけどなー、どこ行くんですかー」
行き先は、ラブホテル「スケヴェニンゲン錦糸町支店」
「えええええっ!」
「ホテル代は私が出しますから。サービスですよ」
部屋で服を脱いだ占い師は、とんでもない美女だった。
「えええええっ・・・」
左の頬に2つの小さな赤い星のタトゥーがある美女は、「さあさあ、バニーさんも脱いで」
(この人と、これからセックスするの? 女同士で?)
目の前に立ちはだかる褐色の美しい肉体から目が離せないクリス、もう進むしかなかった。
実際、心の底では男という生き物に、心底ウンザリしていたのである・・・
すべてが終わった後、クリスは涙を流していた。
「こんなに良かったの、はじめってッス・・・」
占い師の美女は、スマホで誰かと話している。
「あ、私だけど。行きずりの子とHしちゃった。錦糸町まで来られる?」
クリスは全身の力が抜けて立ち上がることもできず、「誰か・・・来るんすか?」
占い師は冷蔵庫からビールを出して、「私の彼女。すっごく怒ってたから、スッ飛んでくるよ」
(え、ちょっと待って・・・)クリスは意識を集中した。
「もしかして修羅場?」
「修羅場の『修羅』ってさあ、インドの神様なの知ってた?」
「そんなことどーでもいいでしょ! 私をなんちゅーことに巻きこんでくれるんですか!」
「私の恋人、怖い女だからさあ。殺されるかもしれんね」
と言ってる間に、ドアを激しくノックする音。
「私の女を寝取るやつは誰だー!」と、恐ろしい声がドアの向こうから。
クリスはハッと思いついて、(そうだ、これは美人局っていう日本の伝統的な恐喝犯罪だ! まんまと引っかかってしまうとは・・・)
占い師がドアを開けると、怒りに顔を真っ赤にした紅鬼が飛びこんできた。
「泣く子はいねえがーッ!」
クリスと紅鬼は、お互いの顔を見て「ああっ!」
「あなたは、えーと・・・くきさん、でしたっけ?」
「あの時のバニーさん? たしか名前は・・・バニーさん?」
「いえ、クリスです」
占い師は大して驚きもせず、「なんだ知り合いだったの? どうりで運命のつながりを感じたわけだ」
紅鬼はコホンと咳払い、「実は、今はまだ話せないある一件で・・・ バニーさんのお店で会ったんだよね。店の名前はたしか、ひーひーふー・・・」
「ぺーぺーしゃ、です」
「それはどうでもいいけど、どうしてクリスさんが私のミラルと?」
「それはこっちが聞きたいですよ! どうしてツツモタセなんかしてるんです? そんなにお金に困ってるんですか?」
「ツツモタセって何? フランス語?」
ここでミラルが手帳から1枚の写真を取り出し、クリスに見せる。
「私たちパートナーなんだよ」
例の、赤と白のウェディング・ドレスで写ってる2人の写真だった。
「へえ、本当に女性同士で・・・ めっちゃくちゃきれいですねー!」
クリスの肩をポンとたたくミラル、「女同士、悪くなかったでしょ? 次は私のパートナーを試してみておくれ」
「えええええっ!」
紅鬼はタオルを巻いただけのクリスの体を、ねっとりと見まわす。
ほどよく筋肉のついたスラリと伸びた肢体、若さあふれる健康的な色香。
「クリスさん、すごくきれいな体してる・・・ 何かスポーツしてたの?」
「私は祖国ではバイアスロンの選手だったですよ」
バイアスロンとは何だったか紅鬼が記憶をたぐっていると、ミラルがまったくの別方向から、
「足がけっこう筋肉あるよ! で、お尻がコリコリして男の子みたい。下半身は完全にスポーツ選手だね」
紅鬼はツバをゴクンと飲みこんで、「男の子のお尻・・・ 私、男性との経験がないものだから・・・」
クリス「くきさん、待って! せめてシャワーを浴びさせて・・・」
紅鬼「ダメ。ミラルの匂いが残ってる方が興奮するから」
終わってから・・・
クリス「紅鬼さんもステキでした。すみません、シャワー浴びたいんですけど、連れてってくれませんか・・・ 腰が立たなくて・・・」
3人でシャワーを浴びながら、紅鬼は高揚した気分に包まれていた。
「女性の体ってすばらしい・・・ クリス、すごい良かったよ! ミラルとも夜烏子とも、またちがう・・・新しい世界! 1人の女性の体には、ひとつの宇宙がある・・・」
ミラルもクリスの体を洗い流してやりながら、「クリスかわいいよクリス!」
ようやくサッパリして、3人で並んでベッドに腰かけ、それぞれ好きな飲み物を飲む。
クリス「あのー、お2人がイヤでなかったら、たまに会って今夜みたいなことしませんか?」
紅鬼「うん、百合セックス友達になろう! だけどクリス、その前に・・・ 今の仕事やめない? バニーさんのことじゃないよ、KGBのことだよ」
クリス「ちょっと古いですよ。今はKGBは解体されてSVRです」
ミラルは驚いて、「えっクリスってスパイだったの?」
紅鬼「あのバニーさんの店自体がKGBの工作拠点なんだよね?」
クリスはうつむいて、「私、モスクワのとある有力者の家の前に捨てられてた捨て子だったんですよ」
紅鬼「え、シリアス話?」
クリス「その有力者は、それまでも身寄りのない子供を養子にしてて、私は12人目の養子でした。私が10歳になるころ、90歳近かったその有力者は亡くなりましたが、義理の姉や兄が私をかわいがって育ててくれました。で、私が高校を出た時・・・」
紅鬼は不安そうにソワソワ、「やだな、重たい話かな・・・」
クリス「私にはバイアスロンの選手としてナショナル・チーム入りする、あるいは理系の成績が良かったのでエレクトロニククス系の大学に進む、という選択肢があったのですが」
紅鬼「なんだ、自慢話か」
クリス「そのどちらも選ばず、ロシア対外情報庁の訓練学校に入りました。ロシアでは昔から、人生の勝ち組とはKGBの一員となった者・・・という伝統があったんですよ。そういうわけで私は工作員となって日本に来たわけですが・・・ ダメでしたね。スパイにぜんぜん向いてませんでした笑 むしろ接客業に向いてることがわかりました・・・ つーことで、前々から辞めようと思ってたんですよ」
ミラルが心配そうに、「無事に辞められるの? 口を封じられたりとかは?」
クリスが笑って、「映画の見すぎですよ!一応国家公務員だし。それに私まだ下っ端で、重要な情報は何も知らないから」
上司に恵まれていたこともあり、クリスの退職の手続きは順調に進んだ。
そんな中、夜烏子との「お見合い」・・・ 初対面の時は2人とも、ハンパなく緊張してガチガチだった。
2度目に会ったのは、クリスの「ぺーぺーしゃ」での最後の勤務の日、ギリギリ間に合って夜烏子は、クリス最後のバニー姿を見ることができたのである。
「かわいい、スタイルいい、せくしー!」
完全に夜烏子は落ちていた・・・ やがて迎える「初夜」。
「こんな優しい人には出会ったことがない」と、涙を流す夜烏子。
クリスも「恋人は男でないといけない、そんな固定観念を捨てるだけで、こんなかわいい子とラブラブ生活を送れるなんて!」
ロシア情報機関とは関係ない一般のロシアン・パブで働き始めたクリス、風太刀家の援助もあって日本に帰化できた。
そして、あくまでも「疑似」ではあるが結婚式。
幸せな同姓カップルとして、新たな人生を歩き始めたのである。
ほどよく席が埋まっている「秘め百合」の店内を見回すクリス。
「一度だけ、女性専用バーというのをやってみたいなって紅鬼さんに話しただけなのに・・・ この若さでお店をまかせてもらえるなんて! 自分一人の力だったら、一生無理だったかもね」
「ねえさんは、ウチらでいちばん接客業向けなのはクリスだって」
「紅鬼さんへの借りは一生かかっても返せないよ。よくそこまで、私なんかを信用してくれた・・・」
実際にはクリスは雇われ店長であり、オーナーという意味では「秘め百合」共同経営者の1人に過ぎないのだが、そんなことは構わなかった。
姫百合荘へと帰る地下鉄の中で、「久々にエクスタ・テニスでもする?」と、もちかけるクリス。
夜烏子「あれってどういうルールだっけ・・・ いくとポイントだっけ、いかすとポイントだっけ?」
クリス「たくさんいった方が勝ちじゃないの?」
夜烏子「でも、それだと相手をいかさない方が有利なわけだから、やっぱりいかすとポイントでしょう?」
クリス「しばらくやってないから忘れちゃったね!」
2人が話してるのは、姫百合荘で考案されたセックス競技についてである。
翌朝、紅鬼は2人の「テニス」の結果が16対10でクリスの勝ちという報告を受けた。
「え、これって夜烏子が16回いったってことだっけ? クリスががんばったってこと?」
考案者自身ルールを忘れていた。
姫百合荘の豆知識(8)
ポッペンブルック伯爵令嬢レディー・アリスンは現在、英国大使館で翻訳の仕事などを手伝っている。(英国秘密情報部「MI6」の業務の一環)
この仕事でアリスンは報酬をいっさい受け取っておらず、事実上ボランティア。(そのかわり勤務地・勤務時間・勤務内容について自分の希望を通してもらえる)
月~木の週4日を大使館で勤務、残りの日はトレーダーとして、姫百合荘にこもって株式投資などに専念していることが多い。
投資家としての嗅覚は、語学の才能に次いで彼女が誇る第2の才能であり、毎月かなりの額を稼ぎ出し、姫百合荘の生計を支えているのだ・・・
姫百合荘建築費用2億円のうち、1億8千万円を提供したのもアリスンであり、たびたび「姫百合荘の大部分は私の所有物だー!」と、恩着せがましく紅鬼を責め立てる。
しかしお金を稼ぐ人がいちばん偉いのであり、誰もなかなかアリスンには逆らえない・・・
またしても土曜日がやってきた。
出勤前、念入りにメークをしながらローラは、ドレッサーの鏡に映る、愛しい娘アンがベッドに寝転がって絵本を呼んでいる姿を、優しい目で見つめていた。
「何読んでるの、アニー」
「これー」
「なになに」
尻の穴から王妃シリアナ
「ちょっとアリスン!」
隣りの部屋に飛びこむと、パソコンに向かって株式取引をしていたパートナーのアリスンが、血走った眼で振り返り、
「なにさ!今話しかけるな!」
仕方なくローラは階段の上から2階に向かって、「ちょっと湯香! すぐ来てよ!」
「なんじょるのー」と、湯香が階段を上がってきた。
「これ見て!アニーが読んでる本! 何よこれ、なんなのいったい!」
「だから、なんでいつも私に八つ当たりするんだよう」
絵本の表紙を見て、「あ、これ! 今話題のすごく勉強になる、いい本だよ。腸内フローラについて子供にもわかりやすく説明してあるの。消化器科の先生もオススメしてた」
「へー、そうなの?」
アンが自慢げに、「王妃シリアナの国が平和だと、ウンコもちょうしよく出るのだ!」
ローラは複雑な表情で、「教育的な本ならいいか・・・なんか下品だけど・・・」
さらにもう1冊の絵本をランドセルから取り出すアン、「これもいっしょに借りてきた」
ゲリはゲリでも鬼ゲリー
アン「おなかがいたくなった男の子が、あいてるトイレをさがして大冒険するんだよ!」
ローラ「ちょっと湯香、これは・・・」
湯香は絵本をパラパラめくってみて、
「これはただの、くだらない本です」
ローラはわあっと泣き出して、「湯香のばかあっ! 娘が・・・娘が下品な本を・・・」
湯香「だから、なんで私のせいに・・・」
第2話 おしまい