3 先輩。大好きです。
先輩。大好きです。
「おはようございます。先輩」
朝、学校に行く途中の道で、そんな風に奥山花は後ろから元気よく声をかけられた。花が振り向くと、そこには花の一個下の後輩である松岡真夜の姿があった。
「おはよう。松岡さん」
花は言う。
にっこりと笑った真夜は、そのまま花の横の位置まで移動をする。
「先輩。なにかあったんですか?」
いきなりそんなことを真夜は言う。
「え? なにかって、なにが?」
花は言う。
「なんていうか、先輩。今日はいつもと少し違った風に見えたから」とうーんという表情をしながら、真夜は言った。
「別になにもないよ。いつも通りだよ」にっこりと笑って花は言う。
でも、内心花は少し驚いていた。
まるで真夜に自分の心の中にある葛藤やわだかまりを見抜かれてしまったような気がして、花は少し複雑な気持ちになった。
花の心が朝から、もやもやしている理由。
それは井上千夏から届いた、あの手紙のせいだった。あの手紙を読んでから、花の心はずっと、曇っていて、すっきりと晴れた天気になることは一度もなかった。
「おかしいな。やっぱり先輩。なにか私に隠してませんか?」
真夜は言う。
「隠してないよ。なにも隠していない」にっこりと笑って花は言った。
「ほら。松岡さん。急がないと学校。遅刻しちゃうよ」
花は言う。(もちろん、そんなことを言ったのは、真夜の話をそらすためだったのだけど、その言葉は嘘ではなかった)
「え? 本当ですか? あ、本当だ!」
時計を見て時間を確認した真夜は言う。
「先輩。急ぎましょう。ダッシュです!」真夜は言う。
「わかった急ごう」花は言う。
それから二人は道路の上を早足で駆け出して、少し先の場所にある二人の通っている中学校まで、息を切らせながら、移動をした。(時間には二人ともなんとか間に合った)