7.いざ、勝負っ!
さぁ!待ちに待った対決の日です!
「こんにちは。」
「おーう!嬢ちゃんやっと来たか。今日はウチで勝負することになったから中に入ってくれ。」
「はい。」
「あー!クリスちゃん!やっほー昨日ぶり〜!」
「あらぁ、貴方がクリスちゃんねぇ!かわいぃわねぇ。」
何この人。馴れ馴れしく頭を撫でないで欲しいんですけど。
「私の名前はランスロットよ。よろしくね!」
「はぁ。」
「こら。ランスロット君、やめなさい、『何この男…』という顔されてますよ。………それよりも、彼女の名前はサラさんでは無いのですか?」
「え?クリスちゃんだって聞いてるけど……?」
あーそういえばそうでした。説明するのでそんなにじーっと見つめないでほしいです。
「あぁ、私は街に来てることがバレてはいけない相手がいるので、歌うときは偽名でクリスとして名乗っていました。本名はサラです。」
「ちょ、街に出るとヤバイって、お嬢ちゃんもしかしてお貴族様か?」
「いえ。まぁ、色々と事情があるんですよ。………というより、嬢ちゃんって呼ぶのやめてもらえませんか?私、この街の法律で言えば成人しているのですが。」
「「「えっ!」」」
「え!クリス……サラちゃんは一体何歳なの!?」
「16歳ですよ。」
「マジかぁ。12歳くらいだと思ってた。」
えっ!そんなに幼く見えるのかな。
「まぁ、話はそこらへんにして、早く始めましょうよぉ〜!私、昨日からフェルちゃんとの対決楽しみにしてたのよ!」
「そうですね。審査員はサラさんで良いんですよね?誰から始めますか?」
「はーい!僕やる!」
「分かりました。その後にリカルドで良いですね?……サラさん始めても良いでしょうか。」
「はい!」
「うし、じゃあ始めるね!」
そう言ってマイクさんは演奏をはじめた。
華やかな踊り子の格好をした女性が踊り、その周りが妖しく光ってなんとも幻想的だ。
クラクラするような色気を醸し出していて酔ってしまいそうだ。
彼の演奏に惹きつけられて、抜け出せられなくなりそうだ。彼の演奏が直に私に入ってくる。熱くて蕩けそうに甘くて、とてもドキドキする。
「……ふぅ。どうだった?サラちゃん〜?」
「凄かったです!なんか、凄いエロい感じでした!こう、情熱的な愛とか、甘ったるい恋愛感情とか、大人って感じとか……、また、演奏技術も素晴らしい!スウィングしてジャズのようなリズムを怪しさのあるあの演奏に組み込んで違和感なく溶け込ませたのはとても素晴らしいですし、また、「はーい。じゃあ俺の演奏に行くぞ?しっかり聞いとけよ?」
「えっちょ、リカルド!こんなにきちんと褒められることないんだから、最後まで聞かせてよ!!」
「いやだ。」
「君、僕のこと嫌いなんでしょ!?そうなんでしょ!?」
あぁ、話しすぎたようです。もう少し話したかったけど、仕方ないですね。
「そうですね。リカルドさんの演奏もとても楽しみです。」
「……おぅ。そ、そうか。」
「もー!サラちゃんの浮気者ーー!!」
うっわ、何言ってるんでしょうかこの人は。
「ほら、やめとけ。ガチで嬢……サラが引いてるぞ?」
「うっ……!」
「ほらほら、早く始めなさい。」
「はいっ!」
「……はい。」
「じゃあ、行くぞ?」
今回の曲はどうやらテンポ感の良い、リズミカルな曲のようだ。
マイクさんの演奏に対抗してなのか、タイプの違う町娘のような踊り子が楽しそうに長いスカートを揺らして踊っている。
本当にヨーロッパのような街並みの中に居るような現実味と、活気がある。
しかし、植物や家などが歌っているような、そんな非現実的な映像見える。
そのちぐはぐさが、好奇心を掻き立て、ワクワクする。
人が踊り、家が歌い、花が手を叩く。そんなドキドキして、これ以上ないくらいの楽しさが伝わってくる。
とても、楽しい!
「っふぅ。どうだ!」
「ええ、素晴らしかったです!あの、現実味ある街並みや活気と、非現実的な無機物画家動き出すという驚きや、ワクワク感。それがダイレクトに伝わってくるとても良い演奏でした。また、「はいはーい!サラちゃーん!それで、どっちを選ぶのかなぁ〜?」
「ちょ、まだ、感想聞きたいんだがっ!」
「さっき僕のを遮ったくせによくいうよねぇ?」
「それはそれだっ!」
「なにそれっ!理不尽!?」
「はいはい。それで、サラさん。どちらを選ぶか決めましたか?」
「ええ。決めました。」
今回の勝負、お二人ともとてもレベルの高いものでしたが、私の中では決定的な差があるように感じました。
……しかし、それが無くなれば一気に才能が開花するやも知れませんね。
さて、期待されているようですし、お答えしましょうか。
さて、どちらが勝つのでしょうか?
長くなりそうだったので、良いところで区切ってしまいました!
結果発表は次回となります!