4.食い違い②
ふぅ。なんとか無事に王宮に着いたようです。クラスメイトさん達と会うと、色々とめんどくさそうなので、ご飯も自室で済ませ、あまり外に出ないようにします。
明日に備えて、早く眠るとしましょう。
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ふぁ。寝坊してしまいました。もうお昼なようです。
私の体内時計はとことん狂っていますね。
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また、劇場にやってきたわけですが、なにやら騒がしくなっている様子。どうしたのでしょうか。野次馬さんに聞いてみましょう。
「こんにちは。劇団員さん達はどうなさったのですか?」
「あぁ。それがな。凄い大切なものを無くしたとかで捜してるみてぇなんだよ。」
「そうなんですか。」
まぁ、私には関係なさそうですね。楽器だけでも貸してもらいたいのですが。取り敢えず、あちらの方に話しかけてみましょう。
「すみません。」
「あ?嬢ちゃん今ウチは忙しいんだ。出直してくれや。」
「いや、……」
「ほら、行った行った!邪魔だよ!」
むぅ。取りつく島もない。これは、今日あまり無理矢理お願いすると私の心証が悪くなってしまいますね。
出直しましょう。
さて、取り敢えず、歌でも歌ってお金を稼いで、楽器を買うことにしましょう!
今ならどんな歌でも歌える気がします!
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と言うわけで、あの騒ぎから離れた場所にある酒場の人に今日のステージに立つ許可をもらうことができました!
もし気に入っていただけなかったら、ノーギャラ出演となってしまいます。頑張りましょう!
っと、こんなところにお偉いさんが来るとは思えませんが、一応いつものコンクールスタイルにしましょう。
あ。言うの忘れていましたが、私はそこそこの有名人だったので、学校では貞子のような前髪で生活して、コンクールではしっかりと前髪を整えて、メイクをしていました。出ていました。……全然印象が違うっていっつもおどろかれるんですよ?どやぁ!
……え?そんなキャラじゃないだろって?私は心の中ではハイテンションなんですよ!顔に出ないだけで。
こほん。化粧品を買うお金もないので、今日は前髪を整えるだけですが、準備は整いました!
張り切って演奏しましょう!
「皆さん。はじめまして。私は来栖……クリスと言います。今日は歌を歌いたいと思います。」
おーう!嬢ちゃんー!やれやれー!
というような野次が飛ぶ中私は歌いはじめました。
このような観客の方の近くで演奏するのは初めてで、緊張する中だけれども、強面なお客さん達はお酒で上機嫌で、そのせいか、すごく優しそうな人達に見えて、そんな所でで歌える幸運に感謝しながら。
自分でお金を稼ぐ第一歩を踏み出した期待感。高揚感を感じながら。
そんな気持ををバンド演奏をしているイメージで歌いました。
そうしたら、楽器もないのにどこからか、私が望む『音』が聞こえます。
きっとこれも魔法なのでしょう。
あぁ、なんて幸せ。観客の皆さんと歌う一体感。とても楽しいっ!
「……っふぅ。ご静聴ありがとうございました。私は楽器を買うために資金集めをしています。ご協力頂けると、もっと良い演奏ができるようになると思います。よろしくお願いします。」
一瞬間をあけて、拍手と歓声が上がりました。
嬢ちゃん!すげぇ歌だったな!楽しかった!全員で歌うのも良いもんだな!俺1000リィンだすよ!それなら俺は5000リィン!いや、俺は1万リィンだ!おぉっ!
という、声が聞こえて、私は嬉しいやら楽しいやらで、泣きそうになりました。
きっと、これはコンクールで演奏するだけでは得ることができなかった幸せ。
この体験ができて、良かった。