14.終わりの終わり。
そして、紅茶が少しぬるくなってきた頃。
「急ぎのため、失礼いたします!魔王が居た地域一帯が更地となっており、生命反応はありませんでした!」
王様の顔がどんどん険しくなり、急に立ち上がりました。
「勇者様。この世界を救っていただき誠に感謝申し上げます。対価は、3つ。最初の2つは喜んでお受けいたしましょう。そして、3つ目は私の最も大切なもの、という事でしたね。……私の1番大切な物は、…………私自身の命で御座います。どうぞ、お受け取り下さい。」
「なっ!なりません!王よ!魔王がいなくなった今、国を立て直すのには貴方のお力が必要です!……そうだ!国宝!勇者への報酬は、『女神の雫』にいたしましょう!あれは、この世に1つの特別なもの。この上のない報酬となるでしょう!」
うっわ……。ウッザ。なに、『女だから宝石でもやっとけばいいだろ!』みたいなコイツの考え。まじウゼェわ。あーあ。せっかく助けたけど、潰しちゃいましょうか。
「……やめないか、みっともない。国だけでなく世界を救ってくださった方に嘘を申すな!勇者様は、『報酬』でなく、『対価』を求めている!そのような『モノ』を欲して、我々に協力してくださったわけではないのだ!」
………へぇ。よくわかってるねぇ。王様。流石賢王とか言われてるだけあるよ。でもね……
「それなら、王様はなんで嘘をついているのですか?……貴方の1番大切なものは自分の命なんかじゃあないでしょう?」
「…………いや、私は卑しい人間だ。自分のことしか考えられないのだよ。」
「そう………。そうやって私を騙すなら、もう知らない。貴方の大切なものだって壊しちゃう。……その中には私の大切なものだって入っているのよ?だから、そんなに怖い顔しないで?絶望を楽しみましょう?」
ほら、目を見開いて。貴方が嘘を言ったせいで、この世が終わるのを見届けて。
私はグリンと、後ろを向く。
伝令騎士様、お貴族、震えてる。
…………ねぇ、どぉして?
「…………………………何を言うか。お前のような狂人には出会ったことがないわ。大切な物とは、下町の楽団の者たちか?」
「そうですよ?……本当に素敵な時間でした。それに、とても優しい方々でした。………でも、私はあの人たちからこれ以上、もらうものなんて何もない。それなら、最後に、私の肥やしになって貰えば、ただのいい思い出になります。…………素敵でしょう?」
「………この、狂人がっっ!!なぜ、無辜の民にそんなことをしようと思える!?なぜ、お前はそのように何もかもを見通すのだ!?やめろ!やめるんだ!目をつぶれ!手を切れ!足を落とせ!首も落として、口を縫え!………………………頼む。頼むからやめてくれ。」
膝をついて、頭を擦り付けて。そんな事をしても、そこまでしても変わらない。当たり前でしょう?
さぁ、つぶやいて。おわりなの。
「《 》!」
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真っ暗で、少し寒い。湿度は楽器にとって最適。
音がよく響きそう。
「ねぇ、母さん。ここはどこ?何でこんなにも暗いの?」
「それはねぇ、暗いと何も見えないでしょう?」
「うん。」
「それはねぇ、とても素敵な事なのよ。」
「そうなの?」
「そうなの。母さんが言っていることが間違っていることなんてあった?」
「そんなこと、あるわけない!」
「そうでしょう?……母さんはこれからちょっと出かけなきゃいけないの。だから、バイオリンをあげるわ。」
「ほんと!やったぁ!!」
「本当よ?だから、私が帰ってくるまでに、母さんが涙を流すくらいの素敵な曲を弾けるようにしておいてね。」
「わかった!」
「いいこねぇ。……でも、それが出来るまで、貴方は陽の光を見ることはないわ。がんばるのよ?」
「うん!」
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「どうでしたか?面白かったでしょうか?面白かったら幸いね。……どう?一曲、聞いていく?テーマはね……」
今までありがとうございました!とても、楽しく(?)書けました!
まぁ、楽しく描けるような明るい作品では無かったような気もしますが……。
ともかく!ここまで読んでくださった皆様に感謝を。
少しでも、心に残ってくだされば幸いです。