13.平和主義なもので。
「……ほう。して、対価とはなんだ?」
「一つ、あの微妙に役に立たない勇者達を壊してしまいました。なので、許して下さい。二つ、討伐が終わったら、私には不干渉でお願いします。呉々も私を利用しようなどと思わないように。三つ、貴方の一番大切なものを私に下さい。」
とても、怪訝な顔をされていますね。頭の回転が遅いのでしょうか?……まぁ、質問の内容は予想できますが。
「………?二つ目の条件まではのめる。しかし、最後の条件はどういう意味だ?」
クス。やっぱり。
「言葉のまま解釈していただいて結構ですよ。貴方が、一番大切に思っているものを私に差し出して下さい。」
「……それは、私個人としてか。それとも…」
そんな、『ここが勝負だ!』みたいな、顔をして。そんなに気張るほどのことでもないと思うのですが。
後ろの人が、『は?』みたいなかおをしてますよー。
あははっ。超カオスですねー。
「それは私が決めることではないですね。貴方が王であるという事実は貴方が貴方であるということなのですから。」
「…………ふむ。そうか。相分った。承諾しよう。」
「はっ?!王よ!?」
「ありがとうございます。では、早速討伐しましょうか。」
「「はっ?」」
ふふっ。『何言ってんだ』みたいな顔を王様が晒しちゃっていいんですか?まぁ、どうでもいいですけど。
「いやだなー。忘れちゃったんですか?私の言葉はこの世の理そのものですよ?だから……『魔王及びその支配下のものは消滅する。』……」
地の底から聞こえてきたようなような轟音が部屋中、いや、世界中に響いた。
地震のような、人の本能が恐れ、平伏すような。
そして、それは一瞬にして収まった。
「な、なんだったのだ?……真逆……。」
王の小さな呟きが耳が痛いくらいの静寂が支配する部屋に響いた時。
「緊急事態により、失礼致します!魔王の魔力反応及び、魔物の反応も消滅致しました!何かしらの罠の可能性が高いため、偵察用の軍を動かす許可を求める旨を将軍がこの書類にまとめております!どうかご指示を!」
「……………いや、一度将軍を呼べ。今すぐに、だ。」
「はっ!」
「……王様。今、どんな気持ちですか?」
……まぁ、その苦虫をダース単位で噛み潰したような顔をしてら所から丸わかりですけどね。
「…………」
えー。無視ですかー?ひどーい。
「第1軍隊将軍、ラキニルール入試致します!」
わぉ。将軍さんって大きいんですね。
獅子のたてがみの様な赤い髪に鋭い目。2mは有るであろう身長に、岩の様にゴツゴツとした筋肉。
野生的でいながら、理性を感じさせる立ち振る舞い。
まさに『将軍』ってかんじですね?
「お、………おお、将軍。魔王の偵察は少人数で良い。それも移動速度が優れている者だけで。」
「………っ王よ!?魔王の魔力反応が消えた非常事態で、そのようなこと……死ねと言っているようなものです!」
「………」
将軍はきっと、部下思いのいい方なのでしょうね。
でも……今、そんなことを王様に行って大丈夫なんですかね?
「王よ!答えて下さい!どのようなお考えですそのような指示になったのか!」
「少し…………かなり、大変な状況だ。この者、勇者がたった今魔王を討伐したと、余に知らせた。」
「な、何を言って……」
「あぁ。そうだ。頭がおかしくなったと考える方が妥当だろう。だが…………先の轟音。タイミングよく消えた魔王の反応。……………そして、この者が嘘を言っているとは思えん。………………………よって、確認だ。速度に優れた者が素早く私に情報をもたらすことができる様に。」
「そ、そんな!そんなことがっ!有るはずがっ!有るはずが無い!」
「………ねぇ、いつまでその繰り返しを私に聞かせれば気がすむの?『早く、王様の命令聞いて動け。』」
「了解致しました。それでは。」
ふぅ。良い仕事したわ。王様もいくら忠臣といえど、あんな押し問答は大変でしょうし。
……でも、なんか、空気重く無いですか?私が、部屋の空気を柔らかくしたと思ったのに。
仕方ない。もう一肌脱ぎますか!
「最速といえば、ドラゴンナイトという者たちが一番だと聞きました。どの位で帰ってくるのでしょう?」
「……………5分だ、な……。」
へぇ!5分!それは、なんとも早いですねぇ。
じゃあ、紅茶でも飲んでゆっくりしましょうか。