12.力とはなんぞや?
さっきまでのあの威勢はどこに行ったのでしょう?
まぁ、ふふっ!どうでもいいですが。
それよりも、今はしたい事が沢山あります。
きっと、この為に私は力を使えるようになったのかもしれないですね。
「さぁ、頭を勝手に弄られて、狂いそうになった気分を教えて下さいな。……《喋ろ》じゃあ、新倉からどぉぞ?」
「……っはぁ!!私はぁ!清水クンに言われたから貞…来栖さんをイジメちゃったのぉ!仕方無かったのよぉ!」
「今、そんなことは聞いていませんが?………はぁ、本当に使えないですね。では、《記憶を見せろ》」
「ひいっ!………ぁ、アァァァァグガァアッッカァァァァィタィタァァァァァ」
あっは。これは、いい。
「ひぃ………、っぁ」
それに、糞尿垂れ流しの汚さが此処までとは知りませんでした。いい経験ですね。
悲鳴がここまで響くのも知らなかったです。
絶望の色。これは濃いですねぇ。
それにしても、いくら着飾っても最後がこれじゃあ、締まらないですねぇ?
大切なのは心とは、この事ですねぇ。
「ふむ。中々興味深いものでしたね。………あぁ、狂ってしまいましたか?……すみません。」
きっと、『狂う』とはこのようなモノなのでしょう。
かわいそうに。
よく私も狂っていると言われたりはしましたが、足元にも及びませんね。
あぁ、涙が出てしまいそう。
だって、口角が何かおかしい。
目だって痙攣してる。
体も震える。
さぁ、落ち着いて。一呼吸。
「さて、どんどん行きましょう。」
「…………っ!待って!来栖さんっ!」
「………どうしたのですか?赤座さん。」
「わた、私はっ!貴方を見捨ててしまったけど!此処までされるほどのことはしてないはずっ!」
「ちょ、逃げんなテメェっ!」
あぁ、なんて見苦しい。
そんな媚びた目で見ないで下さい。
今なら足さえ舐めそう。
でも、これこそがきっと人間。追い込まれた獣。
手段なんて選ばない。泥臭い汚さ。
……きっと私の糧となる。
「《赤座以外黙れ》、そうですね。赤座さんは何もしてませんね。」
「そ、そうでしょう!だから、ね?助けて下さい!」
「えぇ、分かりました。」
ふふっ。なんて可愛らしい。
………ふむ。空気が湿ってきましたね。こんなに胸糞悪いことは早く終わらせましょう。
あぁそう言えば、雨の日に捨てられていたあの仔犬。一体どうなってしまったんでしょう。
きっと、こんな表情をしていたかしら。
「ほ、ほんとっ!ありが…………………いやぁぁぁぁっ!イタイィィィァウッアガァァァ」
「ふふっ。お疲れ様です。」
「ナ……、ンデ?」
「あぁ、別に貴方が何もしなくても、何をしても同じことをするつもりだったので、気にしないでくださいね。」
「ナ……………ン、デ?」
「え?………あぁ、もしかして助けてもらえるかも、と期待させてしまいましたか?ふふっ。そんな事はしませんよ?貴方たちの全ては私の糧にする為にあるのですからっ!」
あはっ。なんですか?その表情は。
そんな、あの仔犬のような目をしないで下さい!
そんな、理解出来無いモノを見る目をしないで下さい!
そんな、そんな、そんなぁ!
悲しくなってしまいます……。
ふふっ。でもねぇ?
傷を治さなければ、他の人にイジメを止めてもらえたかもしれないってことに、貴方は気づいているのでしょうか?
あっははは!
「さぁて、絶望の味には飽きてきたのでまとめて見ちゃいますね〜。上野、斎藤、寺崎《記憶を見せろ》」
「あれぇ?泣いてます?大丈夫ですかぁ?」
ん?あぁ、なんだ雨ですか。
そうですよねぇ?私にした事はもっと酷いのにこんな事で泣くわけがない!
しとしとと降る雨はなんとも気持ちを落ち着かせてくれますねぇ。
「ハァ……。」
ふふっ。溜息をついただけですよ?
仔犬くん?そんな震えないで下さい!
………それとも、雨で冷えただけですか?
もしくは………恐ろしいものでもみたのでしょうか?
まぁ、すぐに理解できますからね。
大丈夫ですよぉ?
「ふむ。飽きましたねぇ。みんな似たり寄ったりで、もうどうでもよくなってきましたが……、最後のメインディッシュは清水ですね。」
「ひいっ!や、やめろっ!そ、そうだ!俺を殺したら王が黙ってないぞっ!大人しなく開放しろっ!殺されたくなきゃなぁっっ!」
「………」
「だ、大体っ!戦えないからって、王宮でいい生活した引きこもりを、稼いでやってる俺らが自由に遊んで何が悪い!この無能ガァっ!」
「………」
「音楽家とかいう、ハズレスキルとかマジドンマイなんですかどぉ?音楽とか使えなすぎっしょぉ!……ひいっ!」
清水の股間にはシミが出来ていた。
あははっ。それは雨?
臭いクサイ。くさいなぁ?
「言わせておけば。お前がそんなことを言える立場だとでも思ってるの?自分のケツも拭けないような奴が粋がってるんじゃないよ。」
あーあ、そんなにガタガタ震えるなら言わなきゃいいのに。
でも……目は血走り猛禽類のよう。まだ生きることを諦めてはいない目。必死に頭を回転させているんだね。偉い偉い。
意味はないけどね笑
ふふっ!悪くは無い。
ハァ、一呼吸。
それだけでも大きく肩が揺れる。
この気持ちはなぁに?
「さぁて?じゃあ、《記憶を見せろ》」
ねぇ、その笑顔を、赤く染まった景色をもっと見せてよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
煌びやかなシャンデリア。
一つ一つの彫刻に一体どれだけの価値があるのか恐ろしくなりますね。
これが、秘密裏に使われる客間であるというのだから笑えない経済力ですね。
「時間を取っていただきありがとうございます、陛下。」
「良い良い。他ならぬ勇者殿の頼みであらばな。」
今回は王様とその側近さんのお二人をお呼びしましたが、側近さんの圧力がすごいですね。好々爺な表情を見せる王様と正反対です。
「時間を取っていただいたのは他でもありません、魔王討伐の件についてです。」
「ほぉ……何か気になることでも?」
「えぇ。魔王とは素晴らしい黒魔術であり、最強の魔物であり、魔物の父であるのですよね?」
「その通りだ。」
「そして、今回お話ししたい件と言うのは、『私が魔王を討伐しましょうか?』という事です。」
「なっ!?たわけっ!寝言は寝て言えっ!王宮に住み着く無駄飯食らいがぁっ!」
「いや、話を聞こうではないか。」
「っ!?王よ!」
「恐悦至極にごさいます。……と、建前はこのくらいで。私は『音』を自在に操れるのですが、それつまり、誰も私には逆らうことはできないと言う事です。」
「「なっ!?」」
「そこで、恐らく討伐は可能だと思うのですが「待てっ!」
「はい?何でしょうか。……言葉をかぶせるなんて。」
「本当にそんな力があるのなら出鱈目ではないかっ!ある訳がない!」
ふぅ。何故私はこんなに嫌われてるのでしょうか。私何かしましたっけ?
まぁ、王様まで疑わしい目を向けてますし、披露してみましょうか。
「では、側仕えさん。《紅茶を入れなおせ》。」
「はい。……どうぞ。」
「ありがとうございます。」
「いえ……………えっ?私は一体何を?」
「私が命じたことを貴方が遂行したまでですよ?」
「そんな馬鹿な!私は由緒正しい公爵家の長、お前のような小娘に奉仕するなど……」
え?側仕えさんじゃなかったのですか?
あぁ、だからあんなに突っかかってきたのでしょうか?
王の御前でぇ!みたいな感じでしょうか?
分からないですけどね。
だからって、そんな絶望した顔をしないでくださいよ。
生まれたての子鹿+熟れてない果実みたいな。
「ほっほ。プライドと魔力の適性の高いお前が催眠術にかかる訳がない。……サラ様。可能ならば魔王を倒してはいただけないでしょうか?」
「ええ、構いませんよ?……勿論対価はいただきますが。」
ねぇ、王様。貴方は国民のために何を見せてくれるのでしょうか?