11.本能
今回から病み展開が続きますね。
ご注意ください。
真っ暗な中で、永遠と演奏をする。
あぁ、ずっとずっと音楽と一緒にいたいな。
ねぇ、お兄達。なんでそんな悲しい顔をしてるの?
辛いだろう?何が?分からないよ。分からない。
あぁ、あっちに行って。平凡を見せないで。
目が潰れてしまう。
私にとっての最善なんだから。
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早朝。まだ朝日が空気に混ざって、朝露が光っている頃。
「………気持ちの良い朝ですね。」
☆☆☆☆☆
「こんにちは。フェルディナンド団長さん。」
「あぁ、サラさん。どうでしたか?バイオリーンの弾き心地は。」
「えぇ、とても良かったです。……でも、他の楽器にももっと触れてみたいですね。」
「分かりました。では、フルルトなんてどうでしょう?」
「えぇ。是非。」
☆☆☆☆☆
「おーサラ!おはよう。今日は何やらかすんだ?」
「失礼な。何もやらかしませんよ。」
「本当かぁ?……なぁ、ちょっと見学していってもいいか?」
「えぇ。構いませんよ?是非批評もお願いします。」
「え?俺がお前に言えることなんて有るか?」
「…………。」
「おい、無言やめれ。分かっているが、傷つくわ!」
「ふふっ。仲良いねぇ?漫才?」
「違うわっ!………って、なんでマイクがいる!?」
「えぇー?君に会う必要無くなーい?」
「くっそ、この野郎っ!」
あぁ、幸せですね。
あ、インスピレーションが。想像が。
「なぁ、今日はお前のために新しい遊びを考えてきたぞ!……なんだと思うー?」
「あははっ!ヒントは〜魔女狩り〜!貞子は滅ぼさないとねぇ?」
「あはっ!その顔ウケる〜!」
あぁ、辛い。痛い。怖い。
あ、インスピレーションが。想像が。
「いやぁ、今日も素晴らしい演奏でしたね!………でも、本当に大丈夫なんですか?あまりにリアルで……」
「はい。最近は想像が掻き立てられて……なので、大丈夫です。」
「そう……ですか。」
あぁ、あたたかいな。
あ、インスピレーションが。想像が。
「おっはよー!」
「あらぁ、今日も可愛いわねぇ!メイクしたらもっと可愛いのにぃ!」
幸せ。
「あっはっは!今日は微塵切りぃ!」
怖い。
「素敵です!ぐわっと心が鷲掴みなされるような……」
嬉しい。
「なぁ、最近大丈夫か?曲の感じがその………大丈夫ならいいんだが。」
あたたかい。
「なんで!俺が!見下される!?俺はっ!勇者だぞぉ!!」
「ごめん!ごめんねぇ!!っ!!」
痛い。
怖い。
想像。
必要。
執拗。
心配。
想像。
安堵。
想像。
幸せ。
寒い。
辛い。
想像。
想像。
想像。
想像。
「最近虐めんの飽きて来たからさあ?………殺しちゃおうかと思って!やっと、赤座が1分以内なら生き返らせることができるようになったんだよぉ〜なぁ?」
「と、ゆーことで!」
「《死の黒炎》!いっけぇー♡」
真っ黒な闇が近づいてくる。
濃厚な死の気配。そんなものを知らなくても反応が全力で警鐘を鳴らす。
でも……………、なんて、安心する。
きっと、これは全てを飲み込んでくれるブラックホール。
穴なのか、渦なのか。わからないけどまん丸でむしろ可愛い。
あぁ、思考がゆっくりだなぁ。
「《生き返れ、戻れ戻れ、我は神をも阻む者也。輪廻転生を阻む者也。生死を司るは我也。我こそ最上、最高位で有る。全てのものは我に平伏す。死なば諸共。我の行く手を阻む者よ。我の名の下に輪廻転生を受ける権利を剥奪しよう。》《運命変異》っ!」
白い光。これ以上無く神々しい。
辺り一面に響く鐘の音。精霊が舞、歌う。
中心には慈愛に満ちた美しい女性。
顔が歪み、赤い涙を流す。
「あははっ!本当に生き返ったぽいよ!?ヤバっ!」
「これはいいなぁ!殺り放題じゃん!」
「それなー!こいつの生命力ゴキブリ並じゃん?」
「おい!返事しろよ!生きてんだろっ!」
「ふ……ふふ」
あぁ、乾いた風が気持ちいい。
きっと、これはプレゼントだ。
新しいものを切り開いていく私への。
「あっ!……………ふっ!ふふっ、ふふふふ。…………分かったぁ!分かっちゃいましたー!」
さぁ、私を苦しめた人達。
上野、斎藤、清水、寺崎、新倉、赤座。
ふふふっ。あぁ、可笑しい。
貴方達だけが、そっち側だと思いましたぁかぁ?
ねぇ、笑ってよ。笑って!!
「貴方達をぉ?殺せばいいんですねぇ!」
「あは、うっわぁ、遂にこいつ狂ったのかぁっ!?」
や、ばい、やばいやばい。いや、こいつがやばいはずがない。
喉に汗が伝う。
「なぁ、やばくね?」
「キャハハっ!んなわけっ!やばいわけ無いじゃん!こいつ能無しの職業だよ?」
そうだ!そうだよな!やばいわけが………
声が響いた。甲高い声だ。………人間が出せるのか怪しいくらいに。痛々しい声。
「…………っぐぅぁぁぁがぁぁぁぁ」
「ひっ!!きゃぁぁあぁぁぁぁ!」
「なぁぁぁぁにぃぃ?あグッゥッックゥァァァガァ!」
「っぐぅぁぁぁがぁぁぁぁ っっ!だ、大丈夫かぁーーー?!」
仲間の死にそうな声が聞こえてくる。
鶏を絞め殺した様な。
心配、怖い、何が起こってる?
濁流、情報、痛い痛い痛い痛い痛い痛い!
うるさいっ!うるさいうるさい!なんで、叫んでんだよっ!ウルセェなぁ!
あ…………るぇ?な、頭、頭?
笑い声?笑ってる。痛い痛い痛いいたいうるさいっ!笑うな!俺をワラうナァぁぁぁっ!
………何言ってんだ俺は。笑ってんの俺じゃん。
「あはっ!あははははっ!…………ねぇ、《起きて》《正気を取り戻して》」
あ………れ?何してたんだ俺は?
あ……………あ、そうだ。こいつに、殺されかけたんだ。仲間を、俺を、勇者を。
何故生きてる?何故?何故何故何故何故?
「…………っぅぐうっっ!……お前っ!な、何を!した!」
「ひっ!きゃぁぁぁぁぁっ!」
「うわぁっ!こっち、こっちに来るなぁ!」
「上野っ!新倉っ!落ち着け!そいつは…」
「五月蝿いですねぇ。《黙れ》」
「「「っ!……」」」
「やっと、静かになりましたね。………では、少し、お話をしましょうか?」
音楽のために。