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音を司りし者が望むもの  作者: お狐
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8.いざ、勝負!②

「勝者は、マイクさんです。」


「っ!なんでっ!?なんでた!!」


「落ち着きなさい、リカルド。サラさん。説明してもらってもいいですか?」


「はい。団長さん達は理由が分かっているようですがご説明しましょう。この勝負、只の音楽技術の勝負でしたらリカルドさんが勝っていたでしょう。しかし、これは職業を持った演奏者同士の魔法を併用した戦いなのです。」


「………どういうことだ?」


「はい。リカルドさんは町民の活気と非現実的なものを合わせて不思議な世界観を表現していました。それは、とても素晴らしい表現力であると言えますね。


マイクさんは夜の踊り子が怪しく踊っている様子を表現しました。しかし、それだけでは無いのです。それにプラスして、その背景まで見せたのです。

観客が踊り子に向ける愛情や、恋慕、下卑た思いまでも私たちに伝わり、いえ、伝わるというのには語弊がありますね。直接頭に流れ込んできて、音楽の背景が、時間の流れが分かるのです。


ここまでくれば分かるのでは?リカルドさんが負けた要因は一つの方向性からの一つの感情しか表現できてないことによる深みのなさです。


普通の演奏では不可能な一つの音に感情を何個も込めることが魔法を使えば可能になるのに、そのことを意識しきれなかったことが貴方の足りない部分です。


………まぁ、リカルドさんにも、マイクさんにも改善すべき点が多々ありますが。」



「…………そ、うか。ん。俺に何かが足りてない事は分かっていたんだ。でも、それが掴めなかった。……サンキューな。サラのお陰で俺はもっと上手くなれることが分かったよ。………少し、便所行ってくるわ。」


「……はい。団長さん達の演奏まで、少し時間がかかると思いますよ。」


「……おう。ありがとう。」





「いやぁ、サラちゃんは予想以上に凄かったのねぇ。あれくらいの差普通じゃわからないわよ〜!だって、リカルド君、技術で全部カバーしちゃうんだもの!」


「………そうだね。僕が勝ったけど、勝てた気がしないもの。というか!技術で負けるとか!負けたも同然だし!」


「そうかもねぇ。……でも、勝ちは勝ちよ!反省はして、自信は持ちなさい!」


「………はい。」


「そういえば、マイク君にも改善点があると言っていたけど、具体的には何処なんですか?」


「えーと。……少し、クラッリネット貸してもらえませんか?」


「えっ!?サラちゃん、吹けるの!?」


「ん?ランスロット君。君知らなかったのですか?彼女は『音楽家』という、聞いたことのない職業持ちなんですよ。その為、楽器全般吹くことが可能なようです。……あぁ、そこの君、クラッリネットを持ってきてくれないかい?」


「それは凄いわねっ!余計にサラちゃんが欲しくなっちゃったわ!」



うわ、ちょっとめんどくさそうです。


あ、楽器持ってきてくれた!いぇーい!



「ありがとうございますっ!」


「さっきまで、すっごい嫌そうな顔してたのに、切り替え早いわねっ!?」


「では、やりますねっ!」


「無視っ!?」






夜に踊り子が蠱惑的な()()を浮かべ辺りには怪しい光が飛ぶ。シルクの上等な衣装をはためかせ、時には少女のような顔を、時には悲しげな色気のある表情、挑発的な表情、怒りの表情ところころと変わり、なんとも不思議で惹きつけられる女性。


あの店員は彼女に純粋に恋をしているだろう。

青年らしい、純粋で無垢な憧れに近い焦がれるような感情。


あの男は昔の恋人だろう。昔のことを思い出し、彼女といる楽しさ、彼女が離れていく絶望、それでも、恨むことは無い、果てなき愛情。


あの観客は彼女を抱きたいと考えているのだろう。かなり下品なことを考えているが、とても夢心地で幸せだ。


彼女はみんなに愛される。彼女は天使で悪魔で、人間だ。なんて素敵な人なんだろう。







「ふぅ。どうでしたか?」


「……な、な、なにあれ!?それ、僕が最近作曲したばっかりの新作なんだけど!?なんでもう吹けるの!?というか、なにあの表現力!?なんかもう、意味わかんないーーーーー!」


「…………………ほんとに、サラちゃん、予想以上、ヤバイ、、。わね。」


「本当に素晴らしい。マイク君も素晴らしい演奏でしたが、サラさんのは別格でした。彼の演奏がモノトーンの正確な描写だとしたら、サラさんのものは、鮮やかな水彩画。本当に傾国の美女の人生を見ているような心地でした。しかし、写実的でありながら、感情を読ませることによって観客に想像の幅を与え、より味わい深いものとなっていま「はいー!そこら辺で終わりねー!」


「なんでですか。今、凄く語りたい気分なのですが。」


「私は、今、猛烈に、弾きたいの!フェル君もそうでしょう!」


「まぁ、今の演奏を聴いてしまったら、弾かずにはいられませんね。」


「そーでしょう!じゃあ、私からでいいかしら?」


「おや、大トリを譲ってくれるのですか。」


「えっ!………やっぱり、後にするわ。」


「そうですか。では、私から。」





演奏の評価は上々のようですが、まだまだ深められますね。頑張らないと!



………というか、団長さん、絶対すぐに弾きたかっただけでしょ。








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