3.疑問と方法
前述の実験。相補性の確認と述べましたが、本当にそうでしょうか?
ここからは個人の主張になります。
相補性の確認とするためには三つの条件が必要と私は考えます。
第一に二重スリットでの片方を通ったかどうかの確認をすること。
第二に二重スリット通り抜けた後、スクリーン上で観測されること。
第三に可干渉性がスクリーン上で存在すること。
何故この条件なのか。
第一は当然ながら粒子性として二重スリットの片方を通ることを確認することは必要でしょう。
第二と第三は干渉するかしないかを問うというには必要なものと考えるからです。粒子性を示したから波動性が見えなくなったというには、スリットを抜けたスクリーン上が直線性でスリット状の影となるだけでなく波としての性質によって広がりなどもないことが望ましいから、それを問うために第二条件が必要だと考慮した次第。
更に第三条件で片方を通過確認しても波動的な性質が残っていないことを完全否定するために必要だと考察し、付け加えました。
相補性ということを肯定するためには粒子性を示したら波動性を示さないということを強く言う必要があると思ったのです。
『二重スリットの片方に電子が通り抜けてきたら粒子をぶつけて確認』は第一条件は充たしますが、第二条件は粒子同士の衝突による擾乱によって阻害されます。
『片方のスリットを通り抜けたら偏光面を90度回転させる』場合でも第二条件は充たしますが、第三条件の可干渉性が失われています。偏光面が直交すれば干渉はしません。
つまり私の考える三つの条件を上記の二つの実験はともに充たしていない。
従って相補性を確認出来てはいない、と考えます。
スクリーン上で干渉する可能性が初めからないのならば実験するまでもないわけです。
世の中には反論するならば代案を出せと言う空気があります。
おかしいのが確かならその主張をし、それに賛同した別の人が代案を考えても良いと思うのですけど、代案のない主張は潰されてしまいます。
仕方がないので代案です。
光子型でも考案しましたがより確実性がありそうな電子型を説明します。
まずは第一条件を充たすための検出器。これが必要です。
直接触れるというのは論外です。吸収型も他の条件より否定されます。
しかし通ったという確認のためにはある程度は影響を与えることは仕方がありません。
そういったものはあるのだろうか。
コイルを輪っか状にしてその輪っかの中を荷電粒子が通過するとコイルに電流が流れる。
その電流のエネルギーはどこから来るのか。
そのコイルと荷電粒子の速度差からだろう。
従って入射される荷電粒子の速さが変化する。
これは波長が変わることも意味する。
量子の波動をこの場合、物質波――ド・ブロイ波――から計算される。
粒子の質量をm、速さをvとすると運動量はp = mv。
プランク定数h。
波長はλとすると λ = h/p となる。
荷電粒子一個を検出できるよう、そしてその波長をあまり変化がないようにコイルに流れる電流の抵抗が小さくなるようにするべきでしょう。
通過だけなら第二条件には問題はない。
第三条件は他の入射時での速さと同じ荷電粒子で干渉することを確認する必要があります。
一粒子で干渉するのに別の粒子で干渉の確認が出来ないとはならないでしょう。
二重スリットの間に仕切りでも置いて別々に荷電粒子を発射して干渉するのか確認し、それが可能なら片方に上記のコイルを設置して干渉するように調整する。
問題は波長が変化すれば干渉縞が上手く現れなくなると予想されることか。
これは振幅の腹と節の位置が変化してしまうと予想されるからだ。
何が問題かと言うとスクリーン上で広がりは確認されるかも知れないが、干渉縞がないと波動性は存在しても二重スリットの両方のスリットを通過したわけではない、ということになる。
二重スリットを片方隠した時でも直進性の方が強いのか、広がりはあまりないみたいだから、広がっていれば違いは明白ではあるだろうけど。
だが相補性が正しいと主張するにしても間違っていると主張するにしても疑問の余地を残しておけば、また私のようにおかしいと突っ込む人が出てくるだろう。
ではどうするか。これは難しい。
二重スリットの横にもう一つスリットを用意し、仕切りで分けた上で試験粒子を干渉用に放つというのはどうだろうか。
その運動量――つまり速さ――を、コイルの通過の前後の二種類で実験を行えば干渉させることによってどうなるかが判断できるのではないだろうか。
もちろん干渉用に試験粒子を放つわけだからその確認をまず行う必要があるだろう。
二重スリットの片方を塞いで試験粒子と干渉するかを先に確認する。
干渉したら、コイルでの通過確認を可能としたときに、コイル通過後の速さの試験粒子と干渉するかの確認も行う。
またコイルによって速さが変わったら干渉しなくなるように調節できたとしよう。
[1]試験粒子をコイル通過前の速さにする。
(1)コイル通過確認。
(2)――未確認。
[2]試験粒子をコイル通過後の速さにする。
(1)コイル通過確認。
(2)――未確認。
と、4つを区別してスクリーン上の結果を確認する。
[1][2]は単独で実験することになるが、(1)(2)は同時に行われているため、コイルのカウント後にスクリーン上に粒子が現れたならば、それはコイルを通過した粒子のもの(1)と。二重スリットへの入射粒子のショットノイズからカウントして、コイル通過を確認せずスクリーン上に粒子が確認されたらそれは(2)であるものと判断して分けて記録するようにする必要がある。
[1]の試験粒子の速さをコイル通過前にするならば、(1)では未干渉(2)では干渉、[2]だと逆になると考えられる。
[1]-(1):未干渉=スリット状の影
[1]-(2):干渉
[2]-(1):干渉
[2]-(2):未干渉
ただしこれは相補性が保たれるとした場合だ。
粒子の局所性のために二重スリットのどちらを通過したか確認をすると相補性により、波動性としての二重スリットの同時通過はありえないというものなら、だ。
そうでなければ別の結果もありうる。
またそうであるからこそ実験をする意味がある。
例えばコイルによって確認された粒子性を示した上で二重スリットの同時通過だ。
[1]-(1)にてコイル通過でエネルギーを消費した粒子にはスリットの形の影として、そしてコイルが設置してない方のスリットから試験粒子と干渉する波動がスクリーン上に干渉縞を残したら?
この場合は相補性は崩れます。
粒子性としてカウントされたのにもかかわらず局所性を示さず、波動性として二重スリットの両方を抜けているという証拠になってしまうため相補性の片面だけとならないからです。
このように反証可能性がある実験によって科学は確認されるべきではある。
論拠は二重スリット実験そのものです。
結論は実験していなく提案ですので、ありません。