40 スパルタ修行開始!
「はぁ、はぁ……。まさか、本当にこの研究所を調べ終えるのに、十年も時間を要する事になるとはな……。はぁ、はぁ……。もっと早く済むと思ってたんだがな……」
片膝をつき俺は言う。
研究所を調べるだけでこのざまとはな。
「仕方あるまい、こうもハプニング続きだとな……」
地べた座りルイーザは言う。
「ルイーザ、あの時の事……すまなかったな」
俺は研究所内を調べている際に起きた、ハプニングの事をルイーザに謝った。
「気にするな。あれは、仕方の無い事だ……」
神妙な面持ちでルイーザは言う。
「やっぱり、覚悟した方がいいのかな……」
地面に座り下を向いて俺は言う。
「……そうだな。少しずつではあるが明らかに昔のお前に戻りつつある。……多分、切っ掛けはあの村で初めて魔王と出会った時、それから十二の魔王との接触、神の領域、その度にお前の中にいるあれは目覚め始めていた」
暗い表情でルイーザが言う。
「俺は怖いよ……。昔の自分に戻ったら俺は、この世界を破壊しないといけなくなる。
そんなの嫌だよ……。それに、凛達と別れる覚悟なんてしたくない。だけど……抗えないんだ。あれの力が強すぎて自分じゃどうする事もできないんだ。……あれは誰にも止められない。たとえそれが神であったとしても。故に……天上天下唯我独尊」
両目に涙を浮かべて俺は言う。
「ゼローグ……。それでも、覚悟はした方がいいよ。その方が唐突な別れよりもマシだろう」
そう言いルイーザは俺を抱き寄せる。
「頭では分かってるんだ。だけど、それでも……」
俺はどうしたらいいんだ……。
セシリア……お前に会いたいよ……。
こんな時、お前が側に居てくれたら。
きっと……。
暫くして抱き寄せた格好のまま、ルイーザがこう言う。
「少しは落ち着いたか?」
「あぁ……」
俺は涙を服で拭い立ち上がる。
せめて、昔の自分に戻るまでにセシリアを生き返らせないと。
でないと、もう二度とあいつに会えないから。
「屋敷に戻ろうか……。それとも、もう少し休むか?」
ルイーザは立ち上がり言う。
「いや、大丈夫だ、屋敷に戻ろう。外じゃ一日とはいえ心配してるだろうからな。それにアルシアとメロディアの修行もあるしな」
近くで寝かせていたリアンを抱っこして、俺は言う。
今は気持ちを切り替えてアルシアとメロディアの修行に集中しないと。
「そうだな」
そう言いルイーザは俺の身体の中に入った。
『無理するんじゃないぞ? ゼローグ』
分かってるだろ?
俺は無理してでもあいつを……セシリアを取り戻す。
梨沙との約束を果たす為にも……。
『それでも、やっぱり無理するなよ』
……努力はするよ。
さぁ、帰ろう。
「空間移動!」
屋敷に戻り「ただいま」と俺は言う。
「おかえりなさい。ゼロ」
一礼してナナは言う。
まだ広間にはナナだけか……。
「アルシアとメロディアに朝食を食べ終えたら地下に来るように伝えてくれ」
そう言い残し俺は広間を後にした。
地下に着き俺はアルシアとメロディアの、修行プランを考えていた。
普通に修行した所であいつらには絶対に勝てない。
レイナにはギリギリで勝てるだろうが……。
問題はシェリルだ。
神器所有者の時点で天地がひっくり返っても、アルシアとメロディアに勝ち目はない。
シェリルの所有する神器、全てを従えし魔術の王女。
そして、臨界突破者となった全てを従えし魔術の王女。
やっぱり、アルシアとメロディアも神器を手に入れないと無理か……。
ただ、神器を手に入れても駄目だ。
臨界突破を使えないと意味がない。
想像以上に骨の折れる仕事だな。これは……。
どうしたものか。
『お前の神器を二人に貸すのは駄目なのか?』
思いを巡らせる中、ふとルイーザが言う。
俺の所有する神器は、どれも強力だ二人に扱えるか……。
だけど、そうも言ってられないか。
確実に勝たなきゃならない戦いで、賭け事はしたくないが仕方ない。
アルシアとメロディアに賭けよう。
すると、背後から二人の人物に声をかけられた。
「団長……」
「ゼロちゃん」
俺は振り向き二人の少女、アルシアとメロディアにこう言う。
「修行、始めるぜ。せめて、臨界突破者状態の俺を殺せるくらい強くなってもらう。覚悟はいいか?」
「うん。大丈夫」
「出来てるよ」
二人は覚悟を決めた表情で答える。
俺は異空間からブレスレット型の神器、重力を取り出し腕にはめる。
二人は神器をウデにはめる動作を見て、二人は俺から距離を取り臨戦態勢に入る。
「神器解放、重力! アルシア、メロディア。殺す気で来い!」
先に攻撃したのはメロディアだった。
メロディアは俺に向けて、無数の炎の弾を俺に向けて放つ!
が、炎の弾は俺の周囲に留まる。
なるほど、一発、一発じゃ俺に致命傷を与えられないから、無数の炎の弾を周囲に留める事で、逃げ場を無くし一気に放つつもりだな。
俺の予測通りメロディアは、炎の弾を一気に放った。
だが、重力の力を以てすれば関係ない。
「グラビティ・フィールド!」
途端、同時に放たれた炎の弾は俺ではなく、地面に放たれた。
「どうして、団長に向かって放ったのに、真下に……」
驚きの表情でメロディアが言う。
そして、それは隣に居るアルシアも同様だった。
「これがグラビティ・フィールドの力だ。グラビティ・フィールド内の重力を俺は自在に操れる。今回は真下に重力が働いている」
俺はグラビティ・フィールドの能力を、二人に説明する。
さて、次はどう出る?
「これが、フィリナ王国最強の騎士ゼローグ……」
アルシアはぼそりと声を漏らした。




