36 屋敷への訪問者
メロディアとアルシアに活を入れた後、次は梨沙に活を入れようとしたが、朝食の支度を終えたナナが広間へ入って来た。
梨沙に活を入れるのは、朝食を食ってからにするか。
俺はソファーに座り凛に預けていたリアンを、自分の膝に乗せる。
各々が朝食を食べ始める中、俺はリアンに朝食の食パンをジャムを塗り、食べさせる。
お陰で焼いた食パンは、リアンに食べさせるのを終える頃には、すっかり冷めている。
リアンに食べさせると同時に、自分も食べれば解決するのだが、子育て? に馴れない為かそうもいかないのだ。
世の中の母親は凄いものだ。
毎日、こんな大変な事をしているのだから。
おまけに、家の家事もやっているというのだから驚きだ。
屋敷の家事等は全てナナがしてくれているから、俺はリアンの世話だけで済むのに、このざまだ。
母は偉大とかよく言うが、その通りだと常々思う。
まぁ、俺は母親じゃなくて父親だけども。
屋敷の住人の親である事に変わりわない。
俺からすれば全員、産まれたての赤子と変わりない。
昔の俺はこんな事思わなかったのになぁ。
歳のせいかな。自分の年齢分かんないけど……。
そうこうしてる内にリアンに朝食を食べさせた後、すっかり冷めた食パンにジャムを塗り、かぶりついた。
朝食を終えて食器等を台車に乗せた後、ナナは何時もの様に広間を出て、後片付けをしに行った。
さて、朝食も食ったしさっきの続きといこうか。
リアンは朝食を食べて満足したのか、ソファーで眠りについていたので、凛にリアンを任せた後、梨沙に話しかける。
「梨沙、お前に話しがある」
「うん、私も」
真剣な顔で梨沙は言う。
俺と梨沙は広間から出て、二階の俺の部屋に向かった。
部屋に入ると俺達は隣り合わせにベッドに座った。
暫くの沈黙が続いた後、梨沙が口を開いた。
「ゼロ、悪魔だったんだね……」
「あぁ、まぁな」
俺は頬を掻き俯いたまま答える。
「それじゃあ、初めてこの世界に来て、レヴィアタンと出会った時に見せた、ゼロのあの姿がゼロの本当の姿って事?」
当時の事を振り返り梨沙が言う。
「あぁ、そうだ。……怒ってるか?」
俺は梨沙の方をチラッと見て言う。
「そうでもないよ。強いて言えば仲間と戦う辛い選択をしたゼロにかな」
悲しそうな表情で梨沙は言う。
それを聞いて俺は暫しの間、フリーズしていた。
「俺の心配をしてくれんのかよ」
半笑いで俺は言う。
「うん。だって、私の中でゼロが一番だから……大好きな人を心配するのなんて、当然でしょ? ……だから、無理しちゃ駄目だよ?」
優しい表情で梨沙は言う。
こんなストレートに一番とか、大好き人って言われるとは思ってなかったな。
まぁ、恋人なんだし当然か。
怒ってるんじゃなくて、心配であんなに元気がなかったのか。
……無理、か。
「いいや、無理するね。これは俺が決めた道だ、だったらそれが茨の道だろうと無理してでも、信じて進むしかねぇだろうさ。……後悔しないように」
既に固めた決意を胸に、俺は梨沙に言う。
「そっか、それじゃあ約束して、必ずセシリアさんを生き返らせて、幸せになるって……」
約束を叶えるように頼む梨沙。
今の答えで納得したのかな?
それとも……。
「あぁ、約束するよ。必ずセシリアを生き返らせて、セシリアや凛、梨沙や屋敷に住んでる皆と、最っ高に幸せな日常を掴み取るって」
梨沙を安心させる為に、笑顔で俺は言う。
話しを終えて俺と梨沙は広間に向かい、ドアの前まで来た所で泣き声が聞こえてきた。
中に入ると目が覚めたリアンが、泣きじゃくっていたのだ!
俺は直ぐさまリアンに駆け寄り、抱っこする。
すると、さっきまで泣きじゃくっていたのが、嘘の様に泣き止み再び眠りについた。
「よっぽど旦那様の事が好きなんだね。……妾達と同じだ!」
笑顔で唯は言う。
リアンと最初に出会った時も思ったけど、俺を好きになる要素が何処に、あったのだろうか……。やっぱり、疑問だ。
今朝の事をナナ達に話して、研究所でリアンや人工神の加護について調べないと――。
すると、ピンポーンと屋敷のインターホンが鳴り、ナナは広間を出て訪問者の対応をしに行った。
すると、ナナは数分で広間に戻って来て、こう言う。
「ご主人様にお客様です。玄関で待っています」
「え、俺に? 誰だろ」
リアンがまた泣くかもしれないので、俺はリアンを抱っこしたまま、広間を出て玄関に向かった。
そして、そこに居たのは――。
「久しぶりだね、ゼローグ殿。会いたかったよ、ボクも彼女もね」
俺はこの二人の人物に、驚きを隠せなかった。
そう、そこに居たのは……。
「シェリルとレイナ……どうして、ここに」
どうやら、あの研究所に行くのは、また今度になりそうだ。




