08 幽霊屋敷の噂を知ってますか?
「ゼロちゃん幽霊屋敷の噂知ってる?」
宿屋での生活を始めて二週間が経った日の朝、朝食を食べている時にアルシアがこんな事を言ってきた。
「幽霊屋敷?」
「私知ってるよ誰もいない筈の廃墟になった屋敷から、女の人の声が聞こえてくるんだって。他にも屋敷の中に入った人は二度戻って来ないって言う噂でしょ?」
そう言って幽霊屋敷の噂について、説明してくれるオリヴィア。
「もしかしてその屋敷に行きたいとか言うんじゃないだろうな」
「行きたい!」
「やっぱりか」
「どうせ暇なんだからいいでしょ。面白そうだし行ってみようよぉ」
どうせ暇とは失礼だ。
確かに暇だけど言われると腹立つ。
だけど暇なのは事実だし興味もあった。
「アリアの許可が降りたらな」
「やったぁ!」
行くのが決まった訳じゃ無いのに、凄く喜んでいるアルシア。
念の為アリアに許可を取るつもりだけど、アリアの事だから軽い感じで良いよ! とか言いそうだから怖い。
「凛とナナは来るだろ?」
「お兄が行くならわっちも行くでありんす」
「はい。私はご主人様のメイドですから」
ナナは俺には勿体無いくらいに、良くできたメイドだなぁと思う。凛も相変わらず俺について来るので、それだけ俺と、離れたくないんだなぁと思う今日この頃。
「三人はどうする?」
「私は勿論行くよ面白そうだからね」
オリヴィアもアルシア同様に意外に乗り気だ。
「私も行くよ」
オリヴィアに続いてメロディアも行くと言ってきた。
そして、最後に梨沙に全員の視線が集まる。
「私も行くよ、皆行くのに私だけ行かないとは、言えないから」
「無理しないで、宿屋で待っててもいいんだぞ」
「無理なんかして無いよ。ただ一人で宿屋で待ってて幽霊が出たりしたらいけないから」
とても分かりやすい反応だ。
要するに一人で宿屋で待つのは怖いから、ついて来ると言う事だ。
これで全員で幽霊屋敷に行くことになった。
まぁアリアの許可が降りたらだけどね。
朝食を終えて部屋に戻ると、俺は凛と一緒にアリアに、幽霊屋敷に行く許可を取りに行くところだ。
凛にはただ許可を取りに行くだけで、直ぐに戻って来ると言ったのだが、もう二度と離れたりしないと約束したのだから、絶対について行くと言って聞かなかった。
まぁ、約束したのは俺だからしょうが無いか。
俺は検索空間を使ってアリアの居場所を検索する。
アリアの居場所が分かったので、凛と一緒に空間移動でアリアの自室に移動する。
「到着」
「急に現れるな。ビックリするだろ、ん? 隣りに居るその子は誰だ?」
「俺の可愛い義妹」
俺がそう言うと凛はアリアに自己紹介をする。
「わっちは凛。よろしくでありんす」
「私はアリアドナ・アグィレサローベ。アリアでよい。知ってるだろうがこの国の女王だ、よろしくな凛よ」
二人の自己紹介が終わり本題に入る。
「アリアは幽霊屋敷の噂知ってるか?」
「うむ。一応なそれがどうかしたのか?」
「アルシアがそこに行きたいって言うんだよ」
「良いよ」
ほらね、俺の予想通りアリアはあっさりと、幽霊屋敷に行く事を許可してくれた。
「ありがとな。それじゃ俺達は行くよ。じゃあな」
そう言い皆が待ってる宿屋まで、空間移動で移動する。
部屋に着くと皆は椅子に座って待っていた。
「どうだった?」
そう言って俺に近づいてくるアルシア。
「良いってさ」
「それじゃあ早速幽霊屋敷に行こ。でも夜に行ったほうが雰囲気が出ていいかな?」
と言う事で俺達は夜になるまで、トランプなどをして暇つぶしをしていた。
夜になり全員で幽霊屋敷へと向かう。
空間移動で行くと折角の気分が台無しになると言うので、全員で歩いて行くことになった。
屋敷に着くと俺は検索空間を使って、屋敷の構造を調べていると、中にはとんでもない化物が潜んでいる事がわかった。
しかも、屋敷の中には一人の女性が、閉じ込められていた。
「どうしたのゼロちゃん顔が引きつってるよ。中に何か居たの?」
「あぁ。下手したらこの屋敷に入る人間全員、中に居る奴に食い殺されるだろうぜ。軽い気持ちで来たけど面倒な事になったな」
「そんなにヤバい奴が居たんだ」
そう言ったアルシアはあっけらかんとしている。
「この中には俺と凛とメロディアだけで入る。異論は認めない」
「えぇ! どうして?」
早速文句を言うアルシアは凄く不服そうだ。
それもそうだろう、折角幽霊屋敷に来たのに、入る事を許され無いのだから。
「なんで凛とメロディアなの?」
そう言い屋敷に入る人選について、聞いて来るオリヴィア。
「凛とは約束をしたから。メロディアは残りの五人の中でまともに戦えるから」
「まともに戦えるってどういう事? ゼロちゃん」
今度はアルシアが俺に聞いてくる。
「まず梨沙は戦う事が出来ないからお留守番、そしてナナは梨沙を守る為のボディガード。オリヴィアの檻の能力で捕らえられるのは実体を持った奴だけ、実態のない幽霊には無意味、様それに障害物の多いこの屋敷じゃフルに能力を活用出来ない。そして最後にアルシアはちょこまかしてるから」
「え? 私の理由だけおかしいと思うんだけど。て言うか本当に幽霊いたんだ」
俺は梨沙達四人を万が一の時の為に、隔離空間の中に隔離させる。
「さて、入りますか」
こうして俺達三人は、屋敷の中に入っていった。
何で、こうなったんだろうか……。