32 その正体……
「ねぇ、エロス。彼は愛する女性を生き返らせる事が出来るかしら?」
天界にて、椅子に腰掛け彼――ゼローグを見守るエロスの背後から、一人の女性が声をかけた。
「どうかしらねぇ、今の彼には色々と問題が多いからぁ。……既にセシリアを生き返らせる方法は、自分の手の中にあるのに彼はそれに、気付いてないみたいだし……。早く彼女を生き返らせて、思いっきり彼女に甘えて欲しいけど……もどかしいわぁ」
頬杖をつきエロスは言う。
「そうね……。彼は、これからの自分の過酷な運命に、立ち向かっていけるかしら……?」
不安そうな顔で女性の神は言う。
「それは彼次第ね……。でも、もし私が彼の立場だったら私は……全てに絶望して死にたくなるわね。だけど、呪いがそれをさせない……。貴方はどう? フレイヤ」
遠くを見つめながらエロスは言う。
「私も貴方と同じかな……。本当、難儀よねぇ」
悲しそうな表情をしてフレイヤは言う。
「そうね」
弱々しく答えるエロス。
*****
俺――ゼローグは地下にて十二の魔王と、神の領域等について会話していた。
「なぁ、何でたった二度の変身で、維持時間が伸びてるんだ?」
俺の素朴な疑問を、ベルゼブブに聞いてみる。
まぁ、天才の俺だから維持時間伸びたって事なら納得だが、流石に神の領域だそういう訳ではなさそうだけど……。
「さぁな、ただ、現状分かっているのはどうやら、同じ悪魔でも俺達とお前とじゃ、領域が違うって事だけだ……」
メモ帳を懐にしまい、難しい顔をしてベルゼブブは言う。
「そうか……。それよりも、さらっと俺の正体を言ってんじゃねぇよ!」
突然、俺の正体を暴露したベルゼブブに、驚きつつも俺は言う。
まぁ、今は俺達しか居ないから良いけども。
そんな感じで俺達以外の奴に、俺の正体をポロッと言われては困る。
殆どの奴が俺の正体を、知らないのだから……。
「構わないだろう? ここには俺達しか居ないんだ……。心配するな公の場で言ったりはしないさ。お前の正体は誰にも、知られてはならないのだから……」
真剣な顔でベルゼブブは言う。
そう、ベルゼブブの言う様に俺が悪魔だという事は、絶対に知られる訳にはいかないのだ……。
まぁ、それくらいの事はこいつらも、重々承知の筈だからな。
そこらへんはこいつらを信じるが。
「それにしても、二度の変身で一時間以上も維持できるとは……。俺達がその領域に達するのに、どれだけ殺し合った事か……。天才のなせる技って事かね」
俺の方をまじまじと見て、ベルゼブブは言う。
天才のなせる技ってやっぱり、俺が天才だから神の領域の維持時間が、大幅に伸びたって事なのかな?
でも、天才なら限界突破者や臨界突破者の維持時間を伸ばすのに、そんなに苦労するのだろうか……。
なんか、自分が本当に天才なのか不安だ……。
『安心しろ、お前は間違いなく天才だ。限界突破と臨界突破、その何方も使える事が何よりの証拠だろう? だから、何も心配する必要はないさ』
そっか、ありがとうなルイーザ。
『まぁ、一応、相棒だからな』
「なぁ、そろそろ神の領域を解除してもいいか? まだまだいけるけど流石に疲れた」
地面に座り込み俺は言う。
「あぁ、構わん。いいデータが取れたからな」
そう言ったベルゼブブは、随分と気分が良さそうだった。
そろそろ、上に戻ろうかな。
あいつらも心配してるだろうし。
そういえば、絶対空間を解除するの忘れてたな。
そう思い絶対空間を解除した。
「俺は上に戻るけどお前達はどうする?」
俺は立ち上がり魔王達に聞く。
「俺達はサタン達が目覚めたら行くよ」
気絶しているサタン達を見て、ベルゼブブは言う。
「ねぇねぇ、でもぉ、挨拶ぐらいしてかないとぉ、失礼じゃない?」
気怠そうにしてベルフェゴールが言う。
「そういう訳にもいかねぇだろうさ……」
二人の会話に入りアザゼルが言う。
「そうだけどさぁ」
諦めの声でベルフェゴールが言う。
さて、いい加減、上に戻らないとな。
やっぱり、立場的にも魔王達は地下にいた方がいいよな。
「そういえばぁ、ゼロにぃ、聞きたかったんだけどぉ、神器はどうしたのぉ?」
一歩前に出てトロンとした瞳で、サキュバスは言う。
相変わらず昔と変わらず、おっとりした奴だ。
「ん? 神器ならあるだろ?」
そう言い俺は自分の神器を、幾つかサキュバスに見せた。
「そうじゃなくてぇ、ゼロがぁ、元々ぉ、持ってたぁ、自分の神器だよぉ」
超至近距離でサキュバスで言う。
随分と近づくなぁ。
ちょっと、照れくさい。
自分の神器ってアレの事を言ってるのかな?
あれ? どうしたんだっけ?
忘れちゃったぁ……。
まぁ、その内分かるだろ。多分。
『適当な奴……』
うるへぇ。
「どっかにやって忘れちったぁ。てへっ!」
頬を掻き俺は言う。
「そう、それじゃあ、神器は私がぁ、見つけておくねぇ。見つかるか分からないけどぉ」
俺から離れてサキュバスはそう言った。




