31 敗北の中の奇跡
取り敢えず一人、だな。
残りは十一か……。
この変化は長く保たねぇから、さっさとケリつけねぇと。
シェリルと戦り合った時は、僅かな時間しか維持出来なかった……。
今回もそれぐらいと考えるべきか、それとも……。
いや、こうしてる時間が勿体ねぇな。
次は厄介な能力のバロールで行くか……。
俺は瞬時にバロールとの距離を詰め、バロールの腹部に、強烈な一撃をお見舞いする!
「残り十……」
バロールが吹っ飛んだ方向を見ながら、俺は言う。
「あの漆黒の鎧が本気とか言いながら、まだ力を隠してやがったのか……ッ! 食えねぇ野郎だ。……しかも、それは……」
嫌気が差した様にニーズヘッグは言う。
俺は標的をニーズヘッグに定め、バロールの時の様に距離を詰める――。
「――吹っ飛べ」
そう言い俺はニーズヘッグに、重い一撃を喰らわせる。
そして、サタンやバロール同様、ニーズヘッグも為す術もなく、吹き飛んで行った!
それにしても、とっくに制限時間は過ぎてるのに、未だこの状態を維持出来ているのは、何故なんだ?
「やはり、俺達とは明らかに領域が違うな……」
ぶつぶつと言いながらベルゼブブは、顎に手をやり難しい顔を、している。
レベルって何だ?
一体、何のレベルだ?
すると、ベルゼブブは両手を上げて、こう言う。
「降参、俺達の負けだ……」
「何?」
勝てないと知っての降参なのか?
いや、そんな筈は……。
能力を使えば、まだ戦り合えた筈だ。
なのに、どうして、それをしない?
それとも、本当に勝てないと知っての、降参なのか?
ベルゼブブは何を考えてんだ……?
「少し話しをしないか? その状態は解除せずに」
魔神化を解除してベルゼブブは言う。
気絶したサタン、バロール、ニーズヘッグを除いた他の魔王も、魔神化を解除して集まって来た。
「構わないが、話って何だよ……」
俺はベルゼブブに言う。
この状態って何時まで、保つんだろうか……。
最初がほんの数秒とかだったし、今回は数分って所か?
「その姿になったのは今回が初めてか?」
ベルゼブブはメモ帳を取り出し言う。
「いいや、以前にも一度だけ……」
俺が言うとベルゼブブは、質問の答えを興味深そうに、メモ帳に書き記した。
「その時はどれくらい維持出来た?」
ベルゼブブは次の質問を口にする。
「ほんの数秒だったけど……」
俺は何気なくベルゼブブの質問に答える。
「ッ! それは本当か……ッ!」
ベルゼブブは、ハトが豆鉄砲を食らったような顔で、俺に詰め寄り言う。
「あ、あぁ……」
俺はベルゼブブの反応に、驚きつつもそう答えた。
一体何をそんなに驚いているんだ?
今の俺の頭の中は、はてなだらけである
「やはり、ゼローグだからなせた技、といった所か……」
そう言ったベルゼブブは、嬉しそうな顔をしてメモ帳を見ていた。
俺だからなせた?
どういう意味だ?
話が全然見えてこないぞ……?
「ベルゼブブ?」
「ゼローグ、それが何なのかは知っているのか?」
ベルゼブブは再び俺に質問してくる。
「いや、知らないけど……」
俺は質問に答える。
ベルゼブブはこれが何なのか、知っているのかな?
「単刀直入に言う。それは、神の領域だ」
ん? こいつ今なんて言った?
神の領域って言ったか?
いやいや、そんな訳ない。
ちょっと、もう一度ベルゼブブに聞いてみよう。
「ごめん、もっかい言ってくんない?」
よし! 次はちゃんと聞くぞ。
さっきのは何かの聞き間違いだろう。
「そいつは神の領域って言ったんだ」
うん、聞き間違いじゃ無かったね。
明らかに神の領域って言ったね。
………………。
…………。
……。
マジか……。
え? 嘘でしょ?
俺の今までの悩みって、何だったの?
あんだけ悩んだのに、実は既に神の領域に至ってましたって……。
間抜けすぎるだろ。
まぁ、お陰で限界突破者や臨界突破者の、維持時間を伸ばす事が出来たし、悪い事ばかりじゃ無かったか……。
「ハハハ、笑える……」
俺は尻もちをついて言う。
俺の今までの苦労を返してくれ……。
「誰か、ゼローグが神の領域に、至ってからの時間を、数えてた奴いるか?」
ベルゼブブは辺りを魔王達を見渡し言う。
「ゼロが神の領域に至ってから、丁度一時間たった。ゼロのその様子だとまだまだ、維持出来そうだが……」
メフィストフェレスが言う。
たった数秒の変身時間が、二度目の変身で一時間まで、伸びたのかよ!
しかも、メフィストフェレスの言うように、まだこの状態の維持には余裕がある。
何でたった二度の変身でこんなにも、維持時間が伸びているんだ?
*****
ゼローグが再び神の領域に至り、神の領域を解除する頃から遡ること、一時間……天界では――。
「どうやら、外界にて再び彼は神の領域に至った様ですぞ。最高神様」
ゼウスは跪き言う。
「えぇ、今度は十二の魔王とのギリギリの戦いの最中で……。やはり、強者とのギリギリの戦いが、あの子を神の領域へと至らせるようね」
最高神は言う。
「それにしても、この短い期間で二度も……彼の特異な出生が、そうさせたのかもしれませんな」
ゼウスは彼――ゼローグについて話す。
「そうね。……これからも、あの子を見守ってくれるかしら? エロス」
最高神はゼウスの隣で跪く女性――愛の神エロスに言う。
「おまかせ下さい、最高神様」
エロスはそう言うと、その場を後にした。




