30 完全敗北
「その漆黒の鎧の姿なら、俺達が能力を使っても、問題はなさそうだな……」
口元の血を手の甲で拭い、サタンは言う。
さぁて、ここからが本番って所だな。
だけど、流石にこの姿でも全員で、能力を使われちゃあ、困るなぁ。
どうする? どうやって切り抜ける?
この姿だって、そう長くは保たない。
この状況を打開する方法は……。
あれこれ思考を巡らせる中、ベルゼブブが真正面から突貫して来た!
ちっ、考える暇は無えって事かよ!
俺は、ベルゼブブの攻撃をバック転で回避し、ベルゼブブに拳を放つが、瞬時にベルゼブブも拳を放つ。
互いの拳がぶつかり、大気を震わせる程の衝撃波が生まれた。
その反動で俺とベルゼブブは、後方に吹き飛んだ!
「――くっ」
「――がっ」
パンチを放った右拳がジンジンする。
見てみると右腕の鎧は、さっきのパンチの衝撃で、少しヒビが入っていた。
右腕の鎧は直ぐに修復したが、このレベルの戦いを繰り返してると、一瞬でこの姿――不滅龍化は、解除されちまうな。
それに、いくら不死身でも戦いを続けてると、身体への負担は大きそうだ。
シェリルと戦った時の、変化が現れれば楽に、勝てるんだろうけどなぁ。
そもそも、あの変化は本当に、何だったんだろうか……。
まぁ、取り敢えずはこの不滅龍化で、踏ん張るけどそれでも駄目なら、あの黄金のオーラが現れる事に、賭けるとしようか。
正直、この姿でも通用しないのなら、現状あの変化が頼みの綱だ。
よし! もうひと踏ん張りしてみるか。
「行くぜぇ!」
そう言い俺は両手に六つずつ、サッカーボール程の魔力の玉を、作り出した。
それを高速回転させ魔王達に放つ!
一つ一つの魔力の玉が、魔王達を襲う――!
魔王達はそれぞれ、ガードしたり、躱したり、同じ力の魔力の玉で、相殺したりなどしていた。
やっぱ、この程度の攻撃はダメージにすらなんねぇか……。
「今度はこっちの番だね!」
イフリートが両手に炎を纏い、攻撃を放ってくる!
灼熱の能力か……。
……本当、魔王ってのはどいつもこいつも、面倒くせぇな。
俺は煉獄を取り出し瞬時に神器解放し、イフリートの炎の攻撃を、同じ火力の炎で相殺する。
「……ジリ貧、か」
以前サタンが言っていた、煉獄の三百万度の大火力をおみまいしてやるか……。
俺はサタンに向かって、幾つもフェイントを入れて、飛び出していき煉獄を三百万度の、温度に変化させる。
サタンは俺の動きが読めず、放たれた斬撃は見事、サタンに直撃した!
「うがぁぁぁあああぁぁッ!」
攻撃を喰らったサタンは、悲鳴を上げていた!
サタンが斬撃を喰らった箇所は、真っ黒に焼け焦げていた!
その様子だと煉獄の業火は、随分と熱い様で……。
まぁ、三百万度なんてデタラメな火力の炎、普通は熱いで済まねぇけどな。
「三年前、お前がご所望していた三百万度の、煉獄の業火だ。特と味わいやがれ!」
流石にこれでサタンは、リタイアだろう。
後は残りの魔王達だな……。
と、言いたいがこれで無事だった場合、確実にサタンの能力が発動する――。
「ゼロぉぉおおぉグぅぅぅうううぅぅ!!」
炎の中から現れたサタンが、憤怒の形相で叫ぶ!
ハハハ、おいおい、どんだけ頑丈なんだよ。
普通ならこれで、終いだろうがッ!。
おまけに、めちゃくそ怒ってんじゃねぇか……。
ったく、どうすんだよ……状況が余計に悪化した……。
『自業自得だろう……?』
もうちょっとフォローしてくれよな……。
『これはフォローのしようが無いだろう?』
はっきり言うなッ!
俺が一番そう思ってるわッ!
はぁ……何でこうなるんだろうか……。
「――っ!」
――刹那、どういう訳か後方へ飛ばされた俺は、口から大量の血反吐を吐いた。
今、一体何が起きた!
血を拭い状況を確認しようと、思考を巡らせる。
『憤怒が発動したサタンに、やられたのだろうな……』
おいおい、次から次へと。
明らかに、今までの数十倍は、パワーアップしてやがるじゃねぇかッ!
さっきの攻撃でマスクは、完全に破損していた!
たったの一撃でこの鎧を破壊するのかよ……ッ!
マスクは直ぐに修復したが、そう何度も野郎の攻撃を、喰らってらんねぇぞ!
……こんなデタラメな力、御免こうむりてぇよ。
「ここまでサタンがキレた所を見たのは、初めてかもな……」
そろそろ、不滅龍化も解除されるな……。
あの変化が現れるとも思えないし、こうなったら、臨界突破か限界突破で、対抗するか、それとも魔王化か……。
だが、魔王化したところで敵う訳ねぇか……。
魔神化もまともに使えねぇしな。
本当、面倒くせぇ事したな、俺。
魔王化も魔神化も駄目となると、臨界突破か限界突破の何方か、か。
長期戦を見越して臨界突破かパワーで押し切る限界突破か。
長期戦になるとジリ貧は必至、となると限界突破か……。
考えても埒あかねぇ!
今は限界突破で耐えるしかねぇ!
「限界突破!」
煉獄は光の粒子となり、足、太腿、腰、胸、腕、肩、顔、俺の全身を覆うと紅の鎧を形成していく!
「限界突破者、煉獄、全身鎧!」
俺とサタンは同時に飛び出し、ただただ殴り合う。
その度に此方の鎧は破損していく。
そして、破損する度に修復する。
サタンの放つ拳打は一撃で、鎧を破壊していく。
俺も負けじと反撃するが殆ど、ダメージが無い様だった。
限界突破者の維持時間を伸ばす修行はしてないから、以前と変わらない僅かな時間だ。
こんな事なら限界突破者の方も修行しとけば良かった。
「糞ッ! このままじゃ!」
防戦一方の状態で俺は言う。
俺はサタンの繰り出す攻撃に、反応出来なくなっていたのだ!
流石に不滅龍化に加えて限界突破は、身体への負担が半端ねえや。
そして、俺は遂にサタンの攻撃を、防ぐ事が出来ずにサタンの攻撃を、喰らっちまった!
「――がはっ」
俺は地べたに這いつくばり、血反吐を吐いた。
はーはー……まずい、本格的まずい。
既に臨界突破者は解除されている。
こうなってくると、あの変化が現れねぇとマジ死ぬわ……俺。
俺は何とか立ち上がるが、どうやら立つので精一杯の様だ。
俺は異空間から支配の拳銃を取り出し、自分に向けて撃つ――。
これで、俺の身体を俺が支配すれば、まだまだ戦れる。
かなり、無理してるがな。
俺は拳を握り締め、サタンに向かって一歩、また一歩と歩を進める。
シェリルの時と同じだな……。
あの時もボロクソになりながら、シェリルと戦り合ったけ……?
両手が握れるならまだ戦れる、とか言ってたっけな。
「行くぜ、サタン!」
「来いッ!」
互いに睨み合い言う。
お互いに飛び出し拳を繰り出す――。
――刹那、俺の身体から黄金のオーラが現れた!
そう、あの時と同じギリギリの土壇場で、訪れたあの変化――。
その変化により俺の放ったパンチは、サタンの放ったパンチの速度を上回り、サタンは吹き飛んでいった!
俺のパンチを喰らったサタンは、どうやら気絶している様だった。
何とかサタンには勝ったな。
この状態なら残りの魔王達も、倒せるだろうが流石に体力が、持たねぇな。
吹っ飛んだサタンから、俺に視線を移した他の魔王達は、驚きの表情で俺を見ていた――。




