28 完全勝利
「よりによって、一番最悪な状態の、ゼローグになるたぁなぁ」
嫌気が差した様にニーズヘッグは言う。
「仕方ねぇだろうさ。いきなり魔王全員とご対面じゃあな……」
頭を掻きながらサタンは言う。
「あの状態になってないだけマシだろうさ」
バロールは言う。
「話は済んだか? 虫螻共」
腕を組み我は言う。
「あぁ、全力でいくぜ。ゼローグ……いや、ルシー」
神の領域へと至りサタンは力強く言う。
ほぉ、あれが神の領域か……。
だが、神の領域と言っても、所詮はこの程度か。
この我の力には遠く及ばないな。
さて、戦う前にこの邪魔な臨界突破者を解除するか。
我は即座に臨界突破者を解除し、異空間に煉獄をしまう。
この程度の奴らを相手に、神器を使うまでも無い。
「さぁ、来い」
その言葉が開戦の合図となった――。
十二人の魔王は瞬時に魔神化となって、我に攻撃を仕掛ける。
我はその全ての攻撃を片手で凌ぐ。
ふむ、どうやら、神の領域はこの我に片手を、使わせるぐらいの力はある様だ。
だが、我を倒すには至らないな。
「くっ! 俺達十二人の魔王、それも神の領域に至った魔王が相手で、敵わねぇのかよ!」
幾度も我に攻撃を仕掛けながら、サタンは言う。
「そう、気を落とすな。そもそも、この世界、いや全世界の頂点たるこの我に、勝てる筈が無いのだ。そんなに、我に勝ちたいのなら、自らの能力を使えばいいだろう。まぁ、全て無駄だろうが」
魔王達の全ての攻撃を躱し我は言う。
「舐めやがって」
憤怒の形相でサタンが言う。
「それが、強者たる我の特権だ」
サタンとの会話の最中、バロールが魔眼の能力を使って、我の動きを止めてこう言う。
「油断したなルシ」
「油断したのは我では無く、貴様だろうバロール」
我が言った直後、バロールは後方に吹き飛んで行く。
それを見たサタンは、唖然としていた。
迂闊に我の攻撃範囲に入るから、そうなるのだ。
さて、次はサタンか。
「バロール!」
後方に吹き飛んでいったバロールに、視線を移すサタン。
その一種のスキを我は見逃さず、サタンの顔に強烈な一撃のパンチを、放った。
「――っ!」
バロール同様、サタンも後方に吹き飛びバロールの横に倒れた。
と言っても、その内、目が覚めるだろうがな。
さて、そんな事より、次は誰にしようか。
残りの魔王を見渡す中、メフィストと目が合った。
よし、次はメフィストにしよう。
次の相手が自分と気付いたのか、メフィストは攻撃の構えを取る。
「メフィスト、貴様の誘惑の能力は、我には意味を成さんぞ」
不敵に笑み我は、メフィストに告げる。
「くっ……」
苦渋の表情のメフィスト。
――刹那、我は背後から何者かの攻撃を喰らった。
傷一つないがな。
仮に傷がついた所で、我の身体は瞬時に再生するがな。
「俺が相手だ。ルシ」
攻撃を放ったニーズヘッグだった。
覚悟を決めた様な表情で、ニーズヘッグは言う。
相手は、メフィストのつもりだったが……まぁ、いいか。
「いいだろう。来るがいい、全力でな」
我が言うと、ニーズヘッグは我に向かって、飛び出してくる。
ニーズヘッグは無数の拳打を放つ。
はぁ、ただ殴るだけか……。
安直な攻撃だ。
何の芸もない。
これでは、戦いにすらならんな。
つまらん、余りにもつまらない。
ニーズヘッグの拳を、人差し指で受け止めて、我は言う。
「まさか、これで全力と言う訳じゃないだろう? ニーズヘッグ」
そう言われた、ニーズヘッグの表情は絶望の色となっていた。
それだけ、全力で放った自分の拳が、人差し指のみで止められた事が、ショックなのだろうな。
まぁ、ニーズヘッグの拳じゃ無かろうと、誰の拳だろうと、我は人差し指で全て止める事が出来たがな。
そもそも、その気になれば我は、何もせずともこの世界を、滅ぼす事が出来るのだがな。
「そんな……バカな……」
はぁ、やはりこの程度か……。
絶望させてくれる。
この程度で全力とは、良く言えた物だ。
これはニーズヘッグ……いや、十二の魔王全員に言える事か……。
神の領域に至った魔王が、聞いて呆れるよ。
「もう、面倒だ。魔王全員まとめて止めを刺そうか」
空に向けて右手を伸ばし、魔力の玉を作り出す。
練り上げた魔力の玉は、次第にどんどん大きくなっていく。
莫大な質量の魔力の塊。
放てば絶対空間を破壊し尽くし、ここら一帯を一瞬で更地に出来る程の、威力だろう。
「おいおい、冗談じゃねぇぞ! こんなもん放たれたら、俺ら諸共お終いだぞ!」
我が作り出した魔力の玉を見て、驚きの表情でマモンは叫ぶ!
「そう思うのなら、これを止めてみせろ。腐っても魔王だろう? まぁ、無理だろうがな」
我の居ない間に、強くなったと言っても、やはり弱者である事に、変わりなかったか。
我の期待を裏切った罰として、こいつら全員一度死んで貰おうか。
「もう止めて、ルシちゃん!」
我の前に立ちはだかり、レヴィアタンは言う。
わざわざ死にに来たか……愚かな女だ。
我に恐怖したままでいれば、苦痛なく死ねただろうに。
「貴様にこの我は、止められん。弱者には、死ぬ運命しか無いのだ。死ね、虫螻共!」
我は空高く飛ぶと、練り上げた魔力の玉を魔王に向けて放つ――。
「――がっ! ……ちっ、時間か……」
片膝を付き頭を押さえ我は言う。
手元の魔力の玉は、徐々に縮小していくと、最後には跡形もなく消え去った。
「はぁ、はぁ。……俺は一体、何を……」
頭を押さえながら、辺りを見渡し俺は言う。
「ルシちゃんが、元に……戻った……」
呆然としたままレヴィが言う。
自分の髪を見てみると、銀色から何時もの黒髪に戻っていた。
あの後、俺はどうしたんだっけ……。




