26 中途半端な男の戦う理由
俺――ゼローグは、梨沙と隣り合わせに座り、湯船に浸かっていた。
……気まずい。
どうしてこうなったんだ……。
昼食の時もそうだった。
何故、連続して気まずい雰囲気に、苛まれなければいけないんだ……。
もう、嫌……。
「ねぇ、ゼロ、昔の貴方ってどんなだったの?」
気まずい空気の中、梨沙は聞いてくる。
「どうして、急にそんな事を聞くんだ?」
梨沙から視線をずらし俺は言う。
「地下で言っていた事が気になって……」
俺の方を向いて梨沙は言う。
やっぱり聞いていたのか。
「そうさなぁ……。傲慢で、非情で、不遜で残虐で、天上天下唯我独尊、最低最悪の野郎さ」
過去の自分を思いだしながら、俺は言う。
本当、ひでぇもんだよ。
セシリアと出会ってなかったら、俺は今、どうなっていたんだろうな。
「傲慢な所以外、全然違うね……。今と正反対だ」
半笑いで梨沙が言う。
「そうだな……」
「地下での事、ルイーザさんと何の事で揉めてたの?」
真剣な眼差しで梨沙が聞いてくる。
「何の為に戦っていたのか、さ」
下を向き弱々しい声音で俺は言う。
「何の為に、か……」
さぁて、そろそろ上がろうかな。
あんまし長湯して、逆上せたらいけねぇし。
浴室から出ようと俺は立ち上がる。
「もう、出るの?」
腕で胸を隠して梨沙は言う。
「あぁ、逆上せるといけねぇからな」
俺がそう言うと梨沙も立ち上がり、湯船から出て来た。
脱衣所に戻り二人で着替えている時に、梨沙がこんな事を聞いてきた。
「ねぇ、前から気になってたんだけど、どうして髪を伸ばしたままにしてるの?」
パンツを履きながら梨沙が言う。
そういえば、言ってなかったな。
まぁ、恥ずかしいから言ってなかっただけなんだけどさ。
「約束だからだよ」
梨沙が用意してくれた服に、着替えながら俺は言う。
「約束? 誰との?」
ブラジャーを着けながら梨沙が言う。
「誰だと思う?」
梨沙に微笑み俺は言う。
「えっ、えーっと、うーん。…………ナナさん、かな?」
俺は見事正解した梨沙に拍手をする。
「当たり」
「どんな約束をしたの?」
着替えを終えた梨沙が聞いてくる。
「それは……ちょい恥ずかしいし、言ってもいいのかはナナによるかな」
頬を掻きながら俺は言う。
「そっか、じゃあ、ナナさんに聞いてこよ」
そう言って梨沙は脱衣所を出て、梨沙の居るであろう広間に、向かった。
「え?」
行っちゃったよ……。
俺の話し全っ然、聞いてねぇし。
取り敢えず俺も広間に行こう。
着替えを終え梨沙に続き、俺も広間に向かった。
広間に入ると梨沙がナナに、約束の事を聞いている様だった。
「話しても構いませんよ」
あっさりとナナが言う。
「あっ、いいんだ……」
随分とあっさりとしてんのな。
恥ずかしいとかナナは、思わないのだろうか……?
「そういう事だから、どんな約束か聞かせてよ。ゼロ」
にっこりと笑い梨沙が言う。
「はぁ、分かったよ。……俺と出会ったばかりの頃のナナは、今と違ってこんなに器用じゃなかったんだよ。だから、色々と失敗も多くてな、失敗続きで自暴自棄になった事もあってな。自分の記憶も無くて、何をやってもダメで、私は人とは違うんだ! って。それで、俺はナナの長く伸びた髪を結んで、ポニーテールにして、時間の流れを早くした隔離空間を使って、自分の髪を、ポニーテールが出来るくらい伸ばして、ナナと同じ様に俺も、ポニーテールにしたのさ。そして、そん時に約束したんだよ、これからはこの髪型で居るって、そうすりゃ、もう人とは違うんなんて事はないだろ?」
ナナの側に行き、ナナの頭を優しく撫で俺は言う。
「そうだったんだ……。あっ、そうだ!」
思い出したかの様に梨沙は言う。
梨沙の仕草を不思議に思い、俺とナナはお互いに顔を見合わせる。
梨沙は自分の髪を下ろし、ポニーテールにしてこう言った。
「これで私もナナさんとおそろーい!」
ポニーテールの長さは、俺やナナの半分以下だが、ちゃんとしたポニーテールになっている。
「ありがとうございます。梨沙様」
優しく微笑みナナが言う。
「梨沙でいいよ。ナナさん!」
嬉しそうにして梨沙が言う。
「それでは、私もナナでいいですよ。り、梨沙」
少し恥ずかしそうに、でも嬉しそうにして、ぎこちなくナナが言う。
「うん!」
満面の笑みで梨沙が言う。
俺はそんな二人が愛おしく思い、二人を抱き寄せた。
ありがとな梨沙。
お前のお陰で随分と、気が楽になったよ。
ナナもありがとな。
お前には感謝してもしきれねぇよ。
身の回りの事を含めてな。
――大好きだぜ。
「ねぇ、ゼロ。地下で言ったよね。何の為に戦っていたのかって……」
俺に体を預けて梨沙が言う。
「あぁ」
急にどうしたんだろう? 梨沙。
さっきまで、こんなシリアスな雰囲気じゃなくて、和やかな雰囲気だったのに。
「約束とか、大切な人を守る為にじゃないかな? 色んな人と交した約束を守る為に、大切な人達を守る為に、戦って来たんじゃないのかな? セシリアさんを生き返らせるっていう、自分との約束の為だったり、ゼロの愛した人を守る為だったり……。私の勝手な想像だけどね」
梨沙が言う。
約束と大切な人を守る為、か……。
確かに、そうかもしれねぇな。
セシリアを生き返らせる、自分との約束。
俺が愛したセシリアや、凛、梨沙、大切な人を守る為に……。
……そうだな、よしっ! そんじゃ、これからは、その約束や大切な奴を、何がなんでも守る為に、戦っていけばいいのかな。
勿論、セシリアを生き返らせる約束の他にも、守るべき約束は沢山あるし、守りたい奴も沢山居るけどさ。




