25 中途半端な男は何の為に戦うのか?
………………。
…………。
……。
瞑想、座禅、そしてルイーザとの手合わせ。
今更だが、これで本当に臨界突破者と、限界突破者の維持時間を伸ばせるのだろうか……。
修行なんて殆どした事がないから、正解が分からない。
先生みたいなのが居たら、こんな苦労しないんだろうけどさ。
まぁ、師匠は居るんだけどなぁ。
剣の修行してもなぁ……。
「……はぁ、俺は一体どうしたらいいんだ……」
『どうもこうも、死に物狂いで強くなるしかあるまい。大切な奴を失いたくないのならな』
そんな事分かってるさ……。
だけど、分かんねぇんだよ。
どうすれば、強くなれんのか。
どうすれば、神の領域に至れんのか。
どうすれば、強大すぎるお前の力を完全に扱える様になるのか。
どうすれば、俺自身の力を、コントロール出来る様になるのか。
……どうすれば、俺は……。
「……中途半端、だな」
『何?』
だって、そうだろう?
十二の魔王の力、魔王化。
その先の力、魔神化。
強大すぎるお前の力。
神の領域。
そして、俺自身の力。
……強くなろうと、幾つもの可能性に手を伸ばし、幾つもの神器を集めたが、結局、俺は強くはならなかった。
俺は昔と何にも変わらない。
只、ひたすらに強さを追い求めた、あの頃と……。
……何にも変わらない。
俺は何の為に戦っていたんだ……。
すると、ルイーザは俺の身体から現れた。
「ルイ――」
俺はルイーザに殴られた。
殴られた俺は、後方に吹き飛んで行き、壁に大の字で減り込んでいた。
今の一撃で臨界突破者は、解除されてしまっている。
「がはっ」
大量の血反吐を吐き、地面に俺は倒れ込こんだ。
ルイーザが身体のから出て、不滅では無くなったが、それでも、俺には左目の呪いで永遠に死ねない為、少しづつ傷が修復していく。
血反吐なんて吐いたの、何時ぶりだろうな。
左目の能力で見たものを、記憶しているとはいえ、永い時間生きていると、色んな事を忘れちまって、いけねぇや。
俺はなんとか立ち上がり、辺りを見渡す。
「はぁ、はぁ、随分と飛ばされたな……」
何でいきなり殴ったりしたんだ、ルイーザの奴。
ルイーザが居た方向に目をやると、ルイーザが猛スピードで、俺に近付いてきていた。
俺は再び変化する鎧の臨界突破者になり、ルイーザを迎え撃つ格好を取った。
一発でももらえば確実に、鎧が破壊されてしまう。
絶対にルイーザの攻撃は、躱さないと……。
だが、臨界突破者は、一瞬のスキを付いたルイーザの一撃で、再び解除されてしまった!
「くっ!」
ルイーザは俺の首を掴み、壁に押し付ける。
二度もルイーザの一撃を受けたせいか、思う様に身体が動かない。
「何時からお前はそんなに弱くなった!」
ルイーザは鬼の形相で言う。
「……俺が弱くなった?」
それは、一体どういう意味なんだ?
「そうだ! 昔のお前はそんな弱い男じゃなかった筈だ! 中途半端が何だ! お前はセシリア生き返らせる為に、戦って来たんじゃないのか! 大切な人を護る為に戦って来たんじゃないのか! それとも、あの時のお前の言葉は全部、嘘だったのか!」
首を掴む手を離し、俺の胸ぐらを掴みルイーザは叫ぶ。
「俺にどうしろって言うんだよ! 神の領域に至る方法も分からない! 幾つもの強さの可能性に手を伸ばし、強くなろうとしても強くなれない! セシリアを生き返らせる方法だって、何にも分かっちゃいないんだぞ! これが、中途半端じゃなかったら何なんだよ!」
今度は俺がルイーザの胸ぐらを掴み、ずっと胸に閉まっていた思いを、行き場のない怒りを、ルイーザにぶつける。
「ゼロ?」
すると、俺とルイーザの口論に第三者が入って来た。
俺を何時でも一途に、想ってくれた梨沙だ。
「何でここに……」
俺は、ルイーザの胸ぐらを掴む手を離し、梨沙に言う。
「ナナさんが、そろそろ休憩にしたらって、それで、私が呼びに来たの……」
怯えた様な表情をして梨沙が言う。
「そうか、今行くよ……」
俺はルイーザに目をやり、俺の身体に入るよう促した。
ルイーザは素直に俺の中に入り、ルイーザとの口論と修行は一時中断となった。
俺は梨沙と共に地下から出て、広間に入ろうとしたが汗が気になったので、風呂に入ってからにする事にした。
「俺、風呂入ってくるわ」
梨沙にそう言い俺は風呂場に向かった。
脱衣所で服を脱ぎ、浴室に入り身体を洗う。
その際、浴室に一人の人物が入って来た。
その人物とは梨沙だったのだ!
俺は身体を洗う手をやめ、梨沙に視線を向ける。
「何で……」
普段の俺ならめちゃくちゃ喜ぶ、シチュエーションなんだろうが、今の俺はこの状況に喜ぶ事は出来なかった。
「いいでしょ、恋人同士なんだから……それと、あんまり見ないで、恥ずかしいから」
頬を赤らめ俺の隣に座り、身体を洗い始める梨沙。
何で急に……。
一緒に風呂なんて入った事、無かったのに。
やっぱり、地下での会話を聞いて、一緒に風呂に入るなんて事を……。
「……あ、あぁ、悪い」
俺は再び自分の身体を、洗い始めたのだった。




