18 刹那の領域
俺に一体、何が起きたんだ……?
この、黄金のオーラは、一体……。
自分の身体を見渡すが、黄金のオーラを纏っている以外は、何の変化も無かった。
疑問は尽きないが、この変化が何時まで保つか分からない以上、この変化の理由を考えるのに、あまり時間を費やす訳にはいかないからな。
取り敢えずあれこれ考えるのは、シェリルに勝った後にしよう。
「……一体、ゼローグに何が起きたんだ? あの黄金のオーラは何なんだ……」
俺達を追って来たレイナが、俺の変化に驚き言う。
「その黄金のオーラ……はぁ、まさか、奥の手を隠してたなんてね。それだけボクとの戦いに、本気になってくれたって事かな?」
振り向いたシェリルが肩で息をして言う。
「奥の手じゃねぇよ」
俺がそう言うとシェリルは、目を見開き驚いていた。
そして、シェリルが一泊空けて言う。
「それじゃあ……その黄金のオーラは一体……」
驚くシェリルに俺はこう言う。
「知るかよ、俺が聞きたいくらいだ……。さて、お話はここまでだ。この姿がどれだけ維持で出来るのか分からないから、さっさとけりを付けさせてもらうぜ」
俺は瞬時にシェリルとの距離を詰め、シェリルの額に軽くデコピンをした。
――刹那、デコピンを喰らったシェリルは、後方に凄まじい速度で吹き飛び、後ろにあった大きな岩に、大の字で減り込んでいた!
おいおい、本気かよ……。
軽いデコピンであの威力っ! 流石に我ながら引くわ……。
もし俺が本気でシェリルに殴っていたら、シェリルの頭と体は繋がっては、いなかっだろうな……。
シェリルのそんな無残な姿、絶対に見たくないもんな。
女の子を傷つけたくないから、加減した訳だが……良かったわぁ。
まぁ、ボロクソになる迄、殴り合って今更だけどさ……。
さて、シェリルがどうなったのか、見てくるか。
ここからじゃ、岩に大の字で減り込んでいる事しか、分からないからな。
体力がかなり消耗しているし、全力で飛び出した方が良いよな……。
……ん? ちょっと待てよ。
軽いデコピンでシェリルが、岩に減り込んだんだよな……。
全力で飛び出したら不味いよな……。
いや、絶対に不味い……。
あっぶねぇ、あっぶねぇ。
気付いて良かったわぁ。
よしっ! 軽くだぞ、軽く。
俺は軽く飛ぶと自己暗示し、シェリルに向かって軽く飛び出す――。
――っ! 俺はいつの間にか、シェリルの目の前に立っていた。
やっぱり、軽く飛んでよかったわぁ。
見たところシェリルは息もしてるし、気を失っているだけの様だった。
「この勝負、俺の勝ちだな、シェリル」
気を失っているシェリルを後にして、エスフィールが居る方に、飛び出そうとしたが、突如、黄金のオーラは霧散すると、再び途轍もない疲労感が俺を襲った!
俺は地面に四つん這いの格好となり、ぜーはーと息をしていた。
この疲労感は……さっきの倍、以上はありそうだな……。
決着がついたのを確認すると、レイナ達はシェリルの方へ走って行った。
そういえば、この勝負に勝ったらシェリル達の目的を聞く、約束をしてたってけか。
まぁ、そんな余裕、今の俺には無いけどな……。
とうとう俺は地面に突っ伏す状態となる。
身体に、力が入らねぇ……。
やべぇな…………。
はぁ、はぁ、意識が、朦朧と、してきた……。
このざまじゃあ、研究所と屋敷を覆う隔離空間や、シェリル達にかけた時間輪廻は、解除されてそうだな……。
シェリルを肩を貸し、俺に歩み寄るレイナが言う。
「約束だ、私達の目的を教えよう。私達の目的はアリストレア王国の再建、研究所を襲ったのは、人工生命体の技術を手に入れる為だ」
「はぁ、はぁ。それじゃあ、俺の屋敷を、はぁ、襲った理由は……」
息も絶え絶えの中、俺はレイナに問う。
「…………あの子達がどうしてるのか、気になってね……」
儚げな表情でレイナが、寂しそうにして言う。
あの子達……か。
「ゼローグ殿……ボクとの戦いは、楽しかったかい?」
意識を取り戻したシェリルが、弱々しく言う。
「あぁ、最っ高に楽しかったぜ……」
俺は意識も朧げの中、力を振り絞りシェリルに答える。
シェリル達の姿がぼやけて見える程、消耗している見たいだな……。
「よかった……」
その言葉を残しシェリル達は何処かへと消えていった――。
そろそろ、限界だな。
エスフィールの安否を、確認出来ないのが心残りだが、流石にこの状態じゃあな。
無事でいてくれよ、エスフィール……。
*****
天界にて――
「ご報告致します。下界にて僅かな時間ではありますが、何者かが神の領域に至ったようです!」
神兵が最高神に向かって、跪き言う。
「えぇ、知っているわ。それは、きっとあの子よ。ふふふ、一歩前進した様でよかったわ、あの子……」
最高神は微笑み言う。
「どうやら、シェリルという魔導師とのギリギリの戦いで、至ったようですぞ。最高神様」
神兵同様に跪き、一人の男が言う。
「もしかしたら、それがあの子が神の領域を、完全に使いこなす、切っ掛けになるのかもしれないわね……」
顎に手をやり最高神が言う。
「ギリギリの戦いが、あの者を、神の領域へと至らせると?」
男は最高神に問う。
「えぇ、そう。可能性の話だけど、その可能性は十分にあるわ」
真剣な眼差しで最高神は男に言う。
「でしたら、儂らの代行である彼らとの戦いで、神の領域に完全に至る可能性が、あるかもしれませんな」
男は言う。
「そうね……だけど、今じゃなくていいわ。今はあの子を休ませてあげたいから……。その時はお願いねゼウス」
慈しむ様な表情で最高神は言う。
「承知しました、最高神様」
ゼウスと呼ばれた男は、立ち上がりそう言うと、その場を後にした――。




