14 恐怖
はぁ、この姿じゃ、怯えて戦いどころじゃねぇからな、仕方ねぇや、一度元の姿に戻るか。
こんな事になるなら、魔王化にならない方が良かったかなぁ。
でも、魔王化にならないと魔剣が使える理由を説明できないしな。
仮に魔王化にならずに説明しても、信じる訳ないし結局は、魔王化になるしかないもんなぁ。
「さぁ、続きを戦ろうぜ」
俺は魔王化を解除して、へたり込んだレイナ達に言う。
しかし、魔王化を解除してもレイナ達は、未だへたり込み怯えた表情をしている。
魔王化になんのは失敗したな。まさか、こんな事になるとは……。
でも、よくよく考えれば直ぐに気付いていた事か。魔王を目の前にして、平気で立っていられる筈がないって……。
どうしたものか……。完全にお手上げだ。
うーむ、何か良い方法は無いだろうか……。
『あのよぉ、ゼローグ』
なんだよ、今俺は忙しいんだ、話しかけんじゃねぇよサタン。
『そんな事は分かってる。あの三人を元に戻したいなら、お前の時間回帰の能力を使えばいいんじゃないのか?』
あ、なるほど! お前天才かよ!?
それにしても、本当に便利だよなぁ神器時空って。
『うーん、やっぱりお前、時々ポンコツになるな。昔とは大違いだ、それもこれもあの女との出会いがそうさせたか……』
あの女じゃなくてセシリアだ。俺にとって最っ高で大切な……誰よりも愛した俺の女だ。
『本当、昔とは随分と変わったな。お前』
俺もそう思うよ。
セシリアと出会って、俺は随分と変わっちまった……。昔の俺が今の俺を見たら、なんて言うだろうな……。
『さぁな、嘆かわしい……とか言うんじゃねえの?』
ふっ、そうかもな……。
さて、もの思いにふけてないで、さっさとあいつらを元に戻そう。
「時間回帰!」
時間回帰の能力でレイナ達は、元の状態――俺に怯える前の状態に戻る。
今回は記憶も怯える前の状態に戻した。
記憶を元に戻さずそのままにしてれば、必ずあいつらはまた俺に怯え、戦う事が出来なくなるからな。
さぁ、これでやっと第二ラウンドが開始できるな。
「さて、第二ラウンド開始といこう」
俺が第二ラウンドの開始を告げると、レイナ達三人は俺に向かって、斬りかかって来る!
俺は三人の斬撃を軽やかに躱し、グラムを地面から引き抜き、三人の斬撃を受け流す。
斬撃を躱し、斬撃を受け流す。それを幾度も繰り返す。
そして、何度も刃を交え、グラムの一撃を躱した時に出来る、スキを狙って三人に斬りかかる。
――がグラムの一撃はレイナ達には届いていなかった。
眼前のフードが付いた黒いマントを、目深にかぶる何者かに妨害される。
いきなり、この場に現れたって事は……こいつ魔導師か。
もしかしたら、レイナ達が絶対空間を通り抜けたのもこいつの仕業か……厄介だな。
それにしても、グラムの一撃を防ぐとはな。魔導師の中でも、相当の使い手なのだろう。全く、面倒くせぇな。
「何者なんだ? お前」
俺は眼前の人物に問う。
「彼女達の仲間さ、最強の騎士殿」
フードを上げて魔導師が言う。
おぉ、レイナに負けず劣らずの美人だな。
水色の瞳に白髪のボブヘアーで毛先が、カールしていて、ほんわかした雰囲気を放つ少女だった。
「お前、名前はなんて言うんだ?」
俺が名前を聞くと目の前の少女は、ハッとした表情となった後、深々と一礼してこう言う。
「申し遅れた、ボクはシェリルと言う。以後お見知りおきを」
ボクっ娘か……。うむ、口調とほんわかした雰囲気のギャップが素晴らしい!
もう、百点満点! レイナと一緒にうちの騎士団に入って欲しい!
って、無理だろうけど……。そう思うと悲しくなってきたな。はぁ。
「助かったわ、シェリル」
シェリルに歩み寄りレイナが言う。
「さて、ここは一旦引くよ、レイナ。流石にボクでも最強の騎士の相手は務まらない。例え四人で戦っても、ボロ負けするのが目に見えてるからね。そういう訳だからここは一度引かせてもらうよ」
そっちの目的を聞くまで、引かせる訳ないだろうが。
ここで隔離空間を使っても、多分逃げられるから、今回は新技披露といこうじゃないか。
「悪いがそういう訳にはいかないんだ」
俺は新技の時間輪廻を発動して言う。
「何しても無駄だよ。瞬間移動!」
瞬間移動の魔法を使いシェリルは、レイナ達と共に何処かに消えた。
しかし、何処かに消えた筈のシェリル達は。この場所に戻って来ている。
シェリル達は何が起きたのか、分からないという反応だ。
「貴方の仕業だね? ゼローグ殿」
瞬時に俺の仕業だと見抜いたシェリルが言う。
「正解! お前達がここから消える前に、俺は時間輪廻を発動していたんだよ。能力は単純、お前達がここから一定の距離を離れると、この場所に戻って来るようになっている。つまり、ここから逃げる事なんて出来やしないのさ」
俺はシェリル達に時間輪廻の能力の説明をする。
「噂に違わぬチート能力を所持してる様だ、全く嫌になるね。それに、どうやら、貴方との戦闘は避けられないようだ」
シェリルがうんざりげに言う。
「さぁ! お前達の全力を以て、この俺を満たしてくれぇ!」
俺は高らかにシェリル達に言う。
さぁ、四人の全力でどれだけ、俺を楽しませる事ができるか……面白くなってきたぜ。
「とんだ戦闘狂ね。はぁ……仕方ないわね。第三ラウンド開始といきましょうか!」
同じくうんざりげにレイナが言う。
レイナの第三ラウンド開始の発言により、戦いの火蓋は切られた――。




