06 出会いと約束
俺達七人は宿屋に着き、一号室に集まっていた。
部屋の真ん中にあるテーブルの左側に、アルシアとメロディアの順番で座り、左側はオリヴィアと梨沙の順番で座る。
俺、ナナ、凛は俺が龍の手で窓側に作った、椅子に座っている。
俺の右側にナナが座り、俺の左側には凛が座っている。
椅子と言っても実際は、床から伸ばした龍の手に、座っているだけなんだけどね。
こうして、俺達七人は今まで、何をしていたのかを話し始めた。
「どうしてあの時、わっちを置いていったでありんすか……」
凛は今にも泣き出しそうな顔で、俺の方を見つめている。
さっき合ったときは、顔に出さなかったけど、本当は今にも泣き出しそうなのを、今まで抑えていたんだろう。
「ごめんな。まだ幼かったお前を危険な戦いに、巻き込みたくなかったんだ」
そう言って俺は立ち上がって、凛を優しく抱き寄せる。
すると凛は、溜まっていた物を吐き出すかの様に、泣きじゃくる。
「大丈夫か?」
「うん」
漸く落ち着いて凛は涙を拭いていた。
その後は俺が今まで、何処に居たのかを凛に話していた。
「つまりお兄はこことは別の世界にいて、その別の世界から梨沙と一緒に、この世界に戻って来たでありんすか?」
「そういう事」
「凛ちゃんとゼロちゃんは、どういう経緯で出会ったの?」
そう言いアルシアは俺に、視線を向けると梨沙達四人も、俺に視線を向けてきた。
「凛と出会ったのは確か……二万年くらい前だったかな多分。凛は銀狐の妖怪で妖狐ってのは、長い年月を経て妖力を増やし、それにより尻尾が増えていって、最終的には九尾の狐になるんだけど、凛は神の加護を宿していた為に捨てられたんだ」
「たったそれだけの理由で捨てられたのか」
そう言いオリヴィアは怒りを顕にしている。
他の皆も憤りを感じているようだった。
「本当は神の加護を宿していても、問題は無いんだけどな。だが、妖狐の長は神の加護を宿していたら、九尾にはならないと判断し、まだ幼かった凛を川に流したのさ。俺は偶然、川で凛を見つけて暫くの間、育てていたんだ。まぁ、その後俺はマールと一緒に、妖狐の里に行って、速攻で妖狐を一匹残らず全滅させたけどな」
「マール様と一緒に行ったのは、凛様を捨てた理由を知る為ですね」
「当たり」
ナナが言ったように、マールを連れて妖狐の里に行ったのは、凛を捨てた理由を知るためだ。
全く、酷え話だ……。
「それで凛は今まで何処で何をしてたんだ? 廓言葉で喋ってるって事は、遊郭に居たんだろうけど……遊女にでもなってたのか?」
「わっちは、お兄以外には裸は見せん」
顔を赤くしてそう言う凛。
「それじゃあ、どうして廓言葉で喋ってるんだ?」
「女好きのお兄なら、遊郭に絶対に来ると思って、色んな物に化けて、身を潜めている内に、言葉がうつったでありんす」
「どれくらい遊郭に居たんだ?」
「四千年くらいでありんす。でも、幾ら待っても来ないから、色んな所に行って旅をしていたでありんす」
四千年も待っていたとは驚きだ。
俺なら直ぐに飽きるだろうな。
「これで一通りの事は話したかな?」
「はい。ご主人様と凛様が、今に至るまでの経緯は全て、お話しました」
「私達は梨沙ちゃんとナナちゃんと一緒に、部屋に戻ってさっき買って来た服に、着替えに行こう!」
そう言ってアルシアは四人を連れて、自分達の部屋に戻って着替えに行った。
この部屋には俺と凛しか居ない。
多分アルシアは俺達を気遣って、部屋に戻ったんだろう。
「お兄」
「ん?」
「もう二度とわっちを置いて、何処にも行かないって、約束してくれるでありんすか?」
「あぁ約束するよ。もう二度とお前を置いて、何処にも行ったりしない。ずっと一緒だ」
俺は凛を抱き寄せて見つめ合う。
凛は今まで隠していた、耳と尻尾を出していた。
そして俺達はそっと口づけを交わす。
俺達はその後お互いに、二万年もあいた溝を埋める様に、他愛もない話等をしていた。
アルシア達の着替えが終わり、この部屋に戻って来たのは二時間程経った後だった。
外はすっかり暮れて夕方になっていて、部屋に来たアルシア達は、新しく買った服を着ている。
アルシアは昨日着ていた、へそが出た青いシャツに、下半身は水色のショートパンツ、星柄のニーソックスを履いている。
メロディアは白いTシャツに、グレーのロングスカートで、白い短めの靴下を履いている。
オリヴィアは黒の長袖に、白いカーディガンを着ていて、膝丈程の黒いスカートに、白い靴下を履いている。
……昨日から思っていたけど、オリヴィアは黒色が好きなのかな?
梨沙は青いノースリーブの丈の、短いワンピースを着ていて、タイツを履いている。
最後にナナは白いミニスカート、黄色いシャツ、靴下は履いていなくて裸足で、サンダルを履いてる。
メイド服以外を着ているナナは、とても新鮮だ。
俺達七人は食堂に行き、夕飯を食べていたのだが、俺達以外の宿泊客が居ないので、不思議に思っていると、ナナが察したのか何故俺達以外の、宿泊客が居ないのかを教えてくれた。
「女王陛下が気を利かせて、貸し切りにしてくれたんですよ」
「そうなんだ」
「ゼロちゃん知らなかったの?」
「検索空間で場所を聞いた後は、直ぐに解除したから、聞いてなかったんだよ」
それから皆で夕食を楽しんだ後は、俺の部屋に集まって、皆で夜までトランプをして遊んでいた。
夜になるとアルシア達は、自分の部屋に戻って行って、凛は狐の姿に戻って、俺と一緒のベッドに寝る事になった。