09 面倒くせぇ
「この施設は地上十階の施設です。先ずは一階から案内しますね」
人工生命体研究所の一本道を先頭に、俺達を案内してくれている少女リィアレが言う。
人工生命体研究所は俺が勝手に名付けて、そう呼んでいる。
一本道の両サイドには幾つもの扉があり、中の広さは部屋ごとにバラバラになっている。
「地上十階ってマジかよ。半端ねぇ……」
流石、俺の屋敷の五倍の大きさは、伊達じゃないな。
そういえば、何で凛は俺に抱きついて来たんだろうか……。
その事を凛に聞いてみると、凛はこう答える。
「何となくでありんす」
「何となくで俺に抱きついて来たの!?」
衝撃なんだけど! 何となくで抱きつくってどういう事だよ!
軽く傷ついたわっ!
「それじゃあ、梨沙は何で俺に抱きついたんだ?」
俺が抱きついて来た事について、梨沙に質問すると、梨沙はこう答える。
「え、私は凛さんが抱きついて、ゼロを独り占めしてずるいなぁって……」
…………。
……。
ん? じゃあ、何だ、つまり……、梨沙も唯も俺の事が好きで、抱きついた訳じゃなかったのね……。
ハハハ……。
……はぁ。
俺は壁に寄っかかる様にして、体育座りをする。リアンは胸と両足の隙間? に座っている。
「はぁ……。どうせ、俺なんて……」
さっき、三人が抱きついて来た理由を知り、俺は溜息をして言う。
「溜息なんてついてどうしたんだい? 旦那様」
俯く俺の顔を覗き込んで唯が言う。
「……もしかしてゼロ、私達が抱きついて来た理由を知って、気を落としてる?」
梨沙が俺の心を見抜いた様に言ってくる。
そう、今の俺は梨沙の言った様に、梨沙達が抱きついて来た理由を知って、これ以上に無いくらい、気を落としているのだ。
もう、人工生命体とかどうでもいい。
もう、どうにでもなってしまえ。
「なるほど、そういう事かえ」
手をポンっと叩いて、俺が気を落としている理由を知り、唯が納得した様に言う。
「でも、ほら、リアンはゼロの事が好きで、抱きついただろうし、そんなに気を落とさなくても……」
俺を元気づける為に梨沙が言う。
「ふっ、本当に俺の事が好きなら、一度は抱きついて来る筈だろ……。だけど、リアンは屋敷で一度も、抱きついては来なかった。つまり、リアンは梨沙達の真似をしただけだろうさ……」
はぁ……。
もう、何も信じられない。
悲しくなってきたなぁ。
「はぁ……お兄、顔を上げるでありんす」
俺は凛にそう言われて、顔を上げると突然凛にキスをされた!
何度か凛とキスはした事はあるが、やっぱり凛の唇はプリンの様に、ぷるぷるしていてとても柔らかい。
「お兄、前にわっちがプロポーズした時に、言った事を覚えているでありんすか?」
俺の目を見る凛はとても真剣な顔をして言う。
えっと、確か……誰よりも――。そう、誰よりも――。
俺はあの時、凛が言ったプロポーズの言葉を言う。
「貴方の事を誰よりも――」
「愛しているでありんす。……わっちはずっとずっとお兄の事を、愛し続けてるでありんす。だから、元気だして、お兄ぃ」
凛が言葉の続きを優しい表情をして言う。
「ありがとう……凛」
俺は凛の頬に手を伸ばして、凛の頬を撫でながら言う。
「流石、正妻の凛だね。妾もあんな風に出来たら……」
「正妻はセシリアさんのポジションだと思うけどなぁ」
そんな風にやりとりをする唯と梨沙。
確かに正妻はセシリアのポジションなんだろうけど……。
セシリアを生き返らせた時に、セシリアより先に凛と婚約した事を、怒られそうで怖いな……。
「案内の続き頼むよリィアレ」
俺は立ち上がってリィアレに言う。
「は、はい」
リィアレはそう言った後、この施設の案内を再開した。
一本道を歩いて行き一つの扉の前に着く。
この部屋の中には何があるんだろう?
「ここが目的地なのか?」
俺は扉の前に立つリィアレに問いかける。
「はい。それじゃあ、中に入りましょう」
リィアレは扉に手を掛けて、部屋の中に入った。
リィアレに続いて俺達は部屋の中に入る。
中はかなり広い。多分、俺の屋敷の広間の何倍もある広さだ。
部屋の右側は用途が良く分からない機械が幾つもある。
多分、その機械を使って人工生命体を作る研究をしていたのだろう。
左側には幾つもの棚があり、その棚は多分研究資料等が置いてあるんだろう。
あの数を調べるだけで数ヶ月はかかりそうだ。面倒くせぇ。非常に面倒くせぇ。
「リィアレ、ここは一体何の部屋なんだ?」
俺がリィアレに聞くとリィアレはこう答える。
「人工生命体を作る研究をしていた場所です。右側の機械で人工生命体を作ったり、精密検査等をしたりしていました。そして、左側の棚には人工生命体に関しての研究資料があります」
どうやら、俺の予想通りだったみたいだ。
もう一度言おう、面倒くせぇ……と。
はぁ……まぁ、面倒くさがっても調べる量が減る訳じゃないし、さっさと調べよう。
さぁて、どっから手を付けたものか……。
取り敢えず時間の掛かりそうな、研究資料から調べようかな。
五人も居れば何とかなるだろ……多分。
「先ずはあの阿呆みたいな量の、研究資料を調べるから手伝ってくれ」
俺はそう皆に告げると早速、研究資料を片っ端らから調べる。
梨沙達も散らばって山積みになった、研究資料を調べていた。
研究資料の置いてある棚は、扉から見て横に二十列もある。それが縦に十列……。棚は二つのある棚の背面? を合わせてあって、向こうに居る凛の背中が見える。
俺は部屋の隅にある棚から調べていた。棚から研究資料を手に取り調べていると、リアンが一番端にあった研究資料を取ろうとしていた。
「これが見たいのか?」
俺はリアンが取ろうとしていた、研究資料を手に取って言う。
「きゅう!」
そうだ! って言ってるのかな?
俺は手に持っていた研究資料を、一旦しまうとリアンと共に手に取った、研究資料を調べる。
俺は資料の一ページ目を見て。目を見開いて驚いていた! マジかよ! もう、これ以上面倒事を増やさないでくれ!
資料の一ページ目にはこう書かれていたのだ、人工神の加護研究資料と――。
三度言おう……超面倒くせぇぇぇぇぇぇえええええ!




