05 記憶が示す場所
「うぅん……ふわぁぁ」
目が覚めるとベッドには、寝息を立てた凛と唯が、気持ちよさそうに眠っていた。
俺どれくらい寝てたんだろう? なぁ、ルイーザ、俺は何時間寝てたんだ?
『えーっと、昨日お前がリアンと共に寝たのが、十三時くらいだったな。で、今は朝の八時だから、お前が寝ていた時間は十八時間だから、半日以上は寝ていた事になるな』
ハハハ、マジかよ……。十八時間って……すげぇな。「俺、最高で十八時間も寝てたんだっ!」って自慢出来るな。まぁ、「寝すぎたろ!」って言われるのが目に見えてるけどさ。
それにしても、なるほどね。だから、ベッドに凛と唯が眠っていたのか、納得したわ。
『余程疲れていたのだろう、最近のお前は悩み事が多いからな』
確かにルイーザの言う様に最近は、俺を悩ませる事ばかりだったな……。
神の領域に正体不明、そして、リアンとの出会い。
はぁ、俺はどうしたらいいんだ……。こんな時、セシリアが居たらな……。
「きゅうぅぅ」
ん? この声は……。俺は声のした方を見ると、リアンが目を覚ました様だった。
リアンは大きな欠伸をした後、ベッドを這うようにして、俺の方に寄って来くると俺の膝にちょこんと座った。
あれ? 気のせいかな、リアンが大きくなったような……。そんな訳ないか、気のせいだよな!
それにしても、やっぱり可愛い顔してるなぁ。こんな、異形の存在だけど、顔は本当に可愛いなぁ。あぁ、癒やされるわぁ。
っと、こんな事してないで、さっさと顔洗って歯磨こう。
俺は膝に座っているリアンを抱きかかえて、部屋を出て一階の洗面所に向かった。
洗面所に着くと俺は龍の手を使い龍の手で椅子を作り、そこにリアンを座らせた後、顔を洗う。
その際に椅子に座っていたリアンが、俺の真似をして自分も顔を洗おうとしたが、昆虫の手では水を掬う事が出来ず、リアンは何度も水を掬おうとしていた。その姿が余りにも可愛かったので、少しの間黙ってリアンが水を掬う姿を見ていた。
俺は近くにあったタオルを、水で濡らして絞った。
これなら、リアンも顔を洗えるだろう。
「リアン、目を閉じて」
「きゅう?」
リアンは首を傾げて鳴いた。目を閉じるのが分からないのか? 俺は一度手本として、目を閉じてみるとリアンも真似して目を閉じた。
俺はリアンが目を閉じたのを確認すると、濡れたタオルでリアンの顔を、痛くないように優しく洗う。
「きゅう!」
リアンの顔からタオルを離すと、リアンは無邪気な笑顔で鳴いた。どうやら、濡れたタオルは気持ち良かったようだ。
その後俺は歯を磨いた後、再びリアンを抱っこして部屋に戻った。
部屋に入ると既に凛と結は、目が覚めた様で着ぐるみパジャマから普段着に着替えていた。
「おはよう、二人共」
俺は目が覚めた二人に言う。抱っこしていたリアンも、「きゅう」と鳴いた。
「おはよう、お兄」
「おはよう、旦那様」
そう言って二人は返事を笑顔で返してくれた。
「さて、広間に行くか!」
俺達は朝の挨拶を交わした後、部屋を出て一階の広間に向かった。
広間には俺達を覗いた全員が揃って居た。
『おはよーう』
「きゅう!」
『おはよう、三人共!』
「おはようございます、旦那様、凛様、唯様、リアン様」
俺達が言った後、梨沙達もおはようと返してくれた。まぁ、エスフィールは俺には言ってないだろうけど。
ナナが朝食の準備をしている間、俺達はソファーに座り朝食を待っていた。リアンは俺の膝の上に座り、おとなしくしている。
少しの間待っているとナナが扉を開けて、台車に朝食を乗せて入って来た。ナナが台車に乗せた朝食をテーブルに置いた。
『いただきます!』
「きゅう!」
全員で手を合わせて言うと、リアンも皆を真似して手を合わせて、元気よく鳴いた。
リアンは食パンを手にとると、食パンを見回したり、匂いを嗅いだりした後、食パンを一口食べるが首を傾げている。
ジャムを付けてなかったからな、味がしなくて首を傾げているのだろう。俺は苺ジャムの入った瓶を取り、スプーンで掬いリアンの食べたパンにジャムを塗る。
「ほら、食べてみな」
俺は苺ジャムを塗った食パンを、リアンに食べさせると、リアンは夢中で食パンを食べていた。
「きゅう!」
美味しいと言っているのだろうけど、夢中で食べたせいか口の周りには、ジャムがべったりと付いていた。
「口にジャムが付いてるぞ」
俺はティッシュを何枚か取って、リアンの口を拭いた。まるで子育てだな。世の母親はこんな大変な事をしてんのか。
……母親か……。俺の母親もこいう事をしてくれてたのかな……。どんな人だったんだろうな……。
「よし、これでいいぞ。次は何のジャムを塗るんだ?」
リアンの口を拭いた後、何のジャムを塗るのかリアンに聞いてみる。
「きゅう」
リアンは自分の塗りたいジャムの入った瓶に手を伸ばした。と言ってもリアンは、何のジャムが入ってるか分からないから、何を基準で選んだかは、分からないけどさ。
俺はリアンが選んだ瓶を手に取り、もう一枚のパンに塗った。ブルーベリーか、林檎の方がリアンの口に合いそうだけど……ブルーベリーはリアンの口に合うかな? まぁ、何事も挑戦だよな。
リアンはブルーベリーを塗ったパンを一口食べると、苺ジャム同様夢中になってパンを頬張っていた。微笑ましいなぁと思いつつ俺も、パンにジャムを塗り口に運ぶ。
パンを食べ終えたリアンの口はやっぱり、ジャムがついており、再びティッシュでジャムを拭いた。
『ごちそうさま』
そう言った後、俺達は食器やジャムの入った瓶を台車に乗せる。
ふぅ、さて、マールの所に行ってリアンが、何処から来たのか調べてもらうとするか。
「俺はリアンと一緒にマールの所に行く」
俺がそう言うと、凛、唯、梨沙の三人が同時に、こう言った。
「わっちも行きたい!」
「妾も行きたいよ、旦那様」
「私も行きたい、ゼロ」
それじゃあ、マールの所に行くのは俺、リアン、梨沙、凛、唯か。残りは屋敷で留守番だな。師匠が居るし問題ないだろうけど、念の為に隔離空間で屋敷を覆っておこう。
「そんじゃ、ちょっくら言ってくるわ。留守番よろしくな!」
俺は空間移動を使いマールの住む辺境の地に移動する。
マールの住む家は木で作られた一軒家程の大きさをしている。俺は扉をノックすると、マールが欠伸をして扉を開けた。
「なんの用だい? ゼローグ」
「朝早くに悪いな、マール。リアンの記憶を俺と共有させる事出来るか?」
俺は抱きかかえたリアンを、マールに見せて言う。
「また、面倒事を背負い込んだんだな……話を戻すがその、リアンって娘の記憶が残っていれば出来るぞ」
少し悲し気な表情をした後、マールが言う。
「そんじゃ、頼む。リアンの記憶があればだけど……」
これで何にも覚えていなかったもう、手の内ようがない。頼むから覚えていてくれ!
マールはリアンの頭に手を乗せ目を瞑る。暫くするとマールを目を開きこう言う。
「記憶は残っていたぞ」
「本気か! それじゃあ早速記憶の共有を頼む!」
いやぁ、良かったよ。これで記憶は何にも残ってませんだったら、マジで終わりだったからな。リアンが覚えていてよかったわぁ。
つーか、覚えていないと話が進まないから困るんだけどさ。
「それじゃあ、やるぞ。記憶の共有!」
――っ! これが、リアンの記憶。そして、リアンが居た場所。こりゃあ、更に面倒な事になったぞ……。




