01 訳が分かりませんっ!
天界にて――。最高神と異世界からの侵略者の存在を、魔王が認知していた事を報告した神兵が向き合っている。
「あの子?」
首を傾げて神兵は言う。
「そう、私の大切な子。今はフィリナ王国最強の騎士、ゼローグと呼ばれてるみたいね。あの子」
寂しげな表情をして最高神は言う。
「大切な子とは、一体……」
「この世界に於いて最も、と言っていい程に重要な存在、ってとこかしらね」
そんな中、この重い空気を破る様に、一人の少女が笑顔で走って来た。
外見は中学生程、肩くらいの長さの白い髪に、金色の瞳、顔は幼さが残るが、最高神と似た容姿をしていて、少女の手には白い花で作った冠が握られている。
「母様、見て! お花の冠作ったの! 褒めて、褒めて!」
「凄いじゃない、えらい、えらい」
そう言い最高神は我が娘の頭を、小動物を愛でるように優しく撫でた。
*****
俺――ゼローグは屋敷の地下で神の領域に至るヒントを得るために瞑想していた。
……ふぅ。……駄目だ。どうすりゃ神の領域に至れんのかねぇ。全くのノーヒントでどうやって、神の領域に至ればいいんだよ。きっかけさえありゃあ、どうとでもなるんだけどなぁ。
百年後。異世界からの侵略者、来訪者に備えなきゃ行けねぇのによぉ。百年で神の領域に至る自信がねぇ。はぁ……。
そんな風に神の領域に至るにはどうしたらいいか、思考を張り巡らせていると不意に、俺の中に居る奴に声をかけられた。
ルイーザかと思ったが、声をかけた人物の正体はルイーザではなく――。
『随分と悩んでる様だなぁ。ゼローグ』
なんだサタンか、何の用だよ。俺は今忙しいんだ。話なら後にしてくれ。
『いいのかぁ? そんな事言ってよぉ』
何だよ。何が言いたいんだよ? 言いたい事があるんならさっさと言え!
『いいか、ゼローグ。お前は可能性の塊なんだよ』
可能性の塊? どういう事だよ?
『お前は俺の本体との戦いで魔王化に目覚めた。疑問に思わないのか? サタンの魔王化が出来るなら他の魔王の、魔王化もできるんじゃないかと……』
そうか、俺は十二の魔王になれるって事か。なるほど、可能性の塊ってのはそう言う事か。
『そう、お前は十二の魔王になる事が出来る。そして、その先もな』
その……先? 魔王化の先って何だよ?
つーか、そもそも魔王化の先ってあんのか?
『……魔神化。魔王化を遥かに超越した力。魔神化、その名の通り魔王が神の領域に至った力。俺の本体、そして、他の魔王達もこの魔神化を使える』
やっぱりあいつら神の領域に至っていたんだな。でも、あいつらはどうやって神の領域に至ったんだ?
『何だ、気付いていたのか』
当然だ、あいつらは異世界からの侵略者が悪神だと知っていた。
神と戦えるのは神のみ。つまり、神の領域に至った奴じゃなきゃ、神と戦う事が出来ない。
悪神が一人二人ならあいつらは俺に神の領域に至れとは言わない。俺に言いに来たって事はあいつらの人数、十二人以上の悪神が居るって事だ。
だからあいつらは俺に報せに来た、百年後来る来訪者の存在を……。少しでも戦力を増やす為に……。
『流石だねぇ。さて、お前の可能性の話に戻そうか。さっきも言ったように、お前は可能性の塊だ。それが、魔王化と魔神化』
なるほど、十二の魔王化と十二の魔神化。全部で二十四の力か……。これだけの成長の幅があるから、可能性の塊って訳ね。
『それだけじゃないぞ? お前が……いや、お前とルイーザが編み出したあの姿、余りに強大すぎて封印したあの力も、神の領域に至る可能性があるんだぞ』
お前はエスパーかよ。何処まで知ってんだよ俺の力の事を。
『ずっと見ていたからなお前の戦いを……。あいつらと一緒に……』
あいつらって、レヴィやメフィー達の事か?
『あぁ、そうさ。お前が気を失った時とか、レヴィが話しかけてだろ?』
っ! あれって、お前達だったのかよっ!
つーか、衝撃の告白なんだけどっ! じゃあ何? 俺は十二人の魔王に今までの出来事全部、見られていたって訳? プライベートも糞もねぇじゃねぇかっ!
『そう怒んなって、安心しな戦闘以外は殆ど見てねぇからよ』
殆どって、結局見てんじゃねぇか。はぁ、もういいや。
『お前のプライベートな所を主に見てたのはレヴィだがな』
はぁ、やっぱりレヴィか。だと思ったよ。
話を戻そう。さっきから脱線してばっかだな。
あいつらはどうやって、神の領域に至ったんだ?
『全員で死にかけるまで戦いあったのさ』
ハハッ! めちゃくちゃだな。頭可笑しいんじゃねぇの? どうりで昔より強くなってると思ったよ。
なるほどねぇ、全員で死にかけるまで戦うか……。
『お前の場合はそうもいかないだろ? だからぁ、これについては俺もお手上げ』
へ? おい、今、何て言った? お手上げ? 可笑しいだろうがぁぁぁあああ!! てめぇふざけんなよぉ? 今までの話何だったんだよ! 全部無駄じゃねぇかっ!
つーか、お手上げなら話かけんじゃねぇよっ! 時間を返せこの野郎! 真面目に聞いて損したわっ!
『長いツッコミお疲れ』
『長いツッコミお疲れ』じゃねぇよっ! マジでぶっ飛ばすぞてめぇ!
……あー疲れた。戻ろう。おめぇ、マジで必要な時以外、話しかけんじゃねぇぞ!
俺は地下から上がり広間に入る。広間では梨沙達がソファーで寛ぎ、トランプをしていた。梨沙達は俺に気付くと「お疲れ」と言って駆け寄って来た。
「本当、疲れた。少し横になるわ」
俺はソファーに横になると暫くの間、目を瞑っていた。
ん? 気のせいかな、何かお腹の辺りが重くなったような……。そう思い目を開けてみるとそこには、狐の姿になった凛と同じく絡新婦の姿になった唯が、俺のお腹で眠っていた。
……何故? 状況がよく理解出来ないぞ? どういう事だ?
そう思っていると、近くに来た梨沙から説明がされた。どうやら、二人は急に眠くなり、部屋まで連れて行けそうにもないから、狐と絡新婦の姿になって、俺のお腹の上で寝ていたらしい。
凛と唯が俺のお腹の上で寝ている理由は分かったが、これは面倒だ。二人を起こさない様に、起き上がらなくてわ。ってか、よく考えれば空間移動を使えばいいのか。
俺は空間移動で一度凛と唯を床に移動して、起き上がるともう一度空間移動を使い、ソファーに移動させる。ふぅ、起きてないよな? 二人を確認すると仲良く寝息を立てていた。
よしっ! ミッションコンプリート! 流石俺っ! ……さぁて、悪魔でも倒しに行こうかな。暇だし。そう思い、俺は検索空間を発動させて悪魔を探すと、早速、悪魔を見つけたので倒しに行こうと思ったら――。
「っ! どういう事だ?」
「どうしたの? ゼロ」
梨沙はそう言って俺の顔を覗き込んだ。
「検索空間に現れた悪魔が一瞬で消えた……」




