38 力の代償
ウロボロス・ドラゴンとなったゼロは、魔王サタンと壮絶な戦いを、繰り広げていた。
ウロボロス・ドラゴンは凄まじい火力の炎と通常攻撃のみで、サタンを圧倒していた!
ウロボロス・ドラゴンの放った炎は大地を黒焦げにしている。サタンもウロボロス・ドラゴンに向けて魔力の弾? を打ち出し攻撃していたが、ウロボロス・ドラゴンにはたいして効いていないようだった。
この事にサタンは毒づきながら言う。
「たくっ! 嫌なるぜ、俺の攻撃が全く効かないなんてなぁ。……さて、どうしたもんかねぇ」
ウロボロス・ドラゴンは四枚ある羽をはばたかせ、空高く飛ぶ! サタンも後を追い空高く飛んだ!
空中でウロボロス・ドラゴンとサタンの攻撃がぶつかり合い、衝撃波が生まれていた。衝撃波の振動は轟音と共にここまで届いていた。
「……凄い……」
私は自然とそう漏らしていた。ウロボロス・ドラゴンの攻撃も魔王サタンの攻撃も、明らかに常識を逸脱している。
もし私もゼロと同じくらい強かったら、ゼロみたいに傲慢になってしまうかも……。
……いや、どんな人でもこれだけ強いと、傲慢になっちゃうよね。
「本当、どっちも化け物じみた強さで嫌になるね」
オリヴィアがそう漏らす。
「私もあんな風に強くなれるかな……」
レイチェルさんが二人の戦いを、見守りながら言う。
「あそこまでは無理でも君達は今よりも、もっともっと強くなれるよ!」
魔王レヴィアタンは振り向いて、笑顔でそう言う。こうして見ると魔王とは全く思えない。でも、それは、隣に居る魔王メフィストフェレスにも、言える事かな……。
……そういえば、この世界に来て王都に向かう馬車の中で、アルシアが言ってたっけ、「ゼロちゃんは一人で魔王全員と殺りあえるくらい強い」って……。
あの時はそれがどれくらい凄いか、分からなかったけど、今なら分かる、昔のゼロがどれだけ強かったのか。ゼロは凄いよ、あんなに強い人達とたった一人で戦えるのだから。
……すると、空中での戦いを終えたウロボロス・ドラゴンと、サタンが降りて来た。サタンはかなり体力を消耗している様で、ぜーはーと肩で息をしていた。
「あぁ、疲れる。何時になったら倒れんだよ、あの野郎」
サタンが言う。
「加勢しようかぁ? サタン」
消耗しているサタンを見ながら、心配げにレヴィアタンが言う。
「あぁ、だが、この状態で勝てると思うか? こいつに」
「無理!」
サタンの質問に即答するレヴィアタン。
「やっぱり、全員で来た方が良かったかな……」
メフィストフェレスは顎に手をやりながら言う。
「流石に全員で来ちゃマズイだろ」
「そうだよねぇ……どうしよっか?」
ウロボロス・ドラゴンの余りの強さに頭を悩ませる魔王達。
「どうすっかねぇ」
頭を掻きながらサタンは言う。
「つーか、ゼローグの野郎、簡単に暴走すんじゃねぇよ! あぁ、クソっ! 苛ついてきたじゃねぇか!」
相当苛ついている様でサタンは、地面を力強く蹴っていた。
「……ふぅ、応急処置完了っと!」
額から溢れる汗を手で拭いアルシアが言う。
どうやら、何とか胸の刺し傷を塞ぐ事が出来たようだ。
良かった……本当に良かった。後は暴走したゼロを、どうにかするだけだけど……。
「後はゼローグをどうにかするだけか」
フィーユさんが立ち上がりながら言う。
「一か八か、勝てる保証はないが、四人で暴走したゼローグに挑んでみるか?」
不敵な笑みで言うメフィストフェレス。
「それが、今私達に出来るベストだろうな」
「それじゃあ、決まりだね!」
フィーユさんとメフィストフェレスの顔を、交互に見てレヴィアタンが言う。
レヴィアタンが言った後、三人は同時に頷くとサタンに駆け寄り、四人はウロボロス・ドラゴンと睨み合う。
刹那、フィーユさんと三人の魔王は飛び出して行き、ウロボロス・ドラゴンに攻撃を開始する。サタンは拳で、レヴィアタンとメフィストフェレスは魔力の弾を、フィーユさんは刀で――。
ウロボロス・ドラゴンとフィーユさんと、三人の魔王の戦いが激化する中、凛さんが目を覚した。凛さんを支えながらアルシアがこう言う。
「大丈夫? 凛ちゃん」
「……うん。わっち……何がどうなってるでありんすか?」
刺された箇所を擦りながら、首を傾げて言う凛さん。
「凛ちゃんが死んだ後、ゼロちゃんが暴走して、今はフィーユさんと三人の魔王がウロボロス・ドラゴンになったゼロちゃんと戦ってるよ」
凛さんが死んだ後の事を説明するアルシア。
「あれが……お兄……」
ウロボロス・ドラゴンとなったゼロと、フィーユさんと三人の魔王の戦いを見て、悲しげに言う凛さん。
「私達じゃ、足手まといにしかならないから、ここでフィーユさん達の勝利を信じよう」
アルシアが言う。
そう、アルシアが言うようにここに居る者は全員、足手まといにしかならない。
だから、私達はここで見守る事しか出来ない。私もフィーユさんや魔王みたいに強かったら……。自分の無力さが恨めしい。こんな時に何も出来ないなんて……。
「……わっちがやらないと……」
立ち上がり言う凛さん。
「凛さん?」
私は立ち上がった凛さんを見て、訝しげにしてそう言う。
すると、凛さんは神の加護門を使って龍の門を使い一匹の巨大な青いドラゴンを呼び出した。凛さんは青いドラゴンの背中に乗ると、ウロボロス・ドラゴン向けて飛んで行った。
「お兄ぃぃぃぃぃいいいいい!!」
凛さんはウロボロス・ドラゴンの近くに行くと、愛する人の名を呼ぶ。
「凛! ここは危険だ早く戻れ!」
フィーユさんはウロボロス・ドラゴンの近くに来た凛さんを、戻るように言うが凛さんはフィーユさんの方を見て、こう言う。
「嫌でありんす! わっちのせいでお兄がこなったんだから、わっちの手で元に戻すでありんす!」
そう言い凛さんはウロボロス・ドラゴンに更に近づいた。
「……お兄、元に戻って……」
そう言うと凛さんはウロボロス・ドラゴンの口にキスをした。
すると、突然ウロボロス・ドラゴンが静かになる。
刹那、ウロボロス・ドラゴンは漆黒の光に包まれる! ……まさか、凛さんのキスで元に戻った? 漆黒の光が止むとそこには、何時ものゼロの姿があった!
良かった……。本当に良かった……。
「まさか、凛のキスで元に戻るとはな……」
そう言いフィーユさん達はゼロを抱えて、此方に歩いて来た。フィーユさんは抱えていたゼロを地面に寝かせる。暫くするとゼロが目覚めてこう言った。
「ここは、俺は一体何を……」
「お兄!」
そう言って、ゼロに抱きつく凛さん。ゼロはどういう事かと、目が点になっていた。
「凛、なのか?」
今にも泣きそうな顔で凛さんに問うゼロ。
「うん!」
凛さんは笑顔でゼロに言う。
「凛! 良かった……生きてて良かった……」
ゼロは凛さんに抱きつき、目から大粒の涙を溢れさせて言う。
「手間かけさせんじゃねぇよ、ゼローグ」
安心した表情でサタンが言う。
「お前らが助けてくれたのか?」
サタンの顔を見てそう言うゼロ。
「その妖狐がお前を助けたんだよ」
凛さんを指差して言うサタン。
「そうか、ありがとう。凛」
優しい顔で凛さんに礼を言うゼロ。
すると、ナナさんや唯さん、アルシアにメロディア、オリヴィア、レイチェルやモニカがゼロに抱きつき涙を流していた。
暫くして皆はゼロから離れると、今度は私がゼロに抱きつき、キスをする。
「心配したんだから、バカゼローグ」
「ごめんな、梨沙……」
そう言ってゼロは私の頭を優しく撫でてくれた。すると、サタンが頬を掻いてこう言う。
「そろそろ本題に入ってもいいか?」
本題? ゼロを助けに来たんじゃなくて、何か用があって来たって事?
「本題ってなんだよ」
訝しげにしてゼロが言う。
「話す前に俺達を絶対空間で覆った後、龍の手で絶対空間を覆ってくれ」
「あ、あぁ、分かった。神器解放! 時空! 絶対空間! 神器解放、龍の手!」
ゼロはそう言うと私達を絶対空間という技で覆って、更に龍の手を使って龍の手を伸ばし、絶対空間を覆う。
隔離空間と対して変わらないと思うけど、何が違うんだろう。
「さて、話してくれ」
ゼロは立ち上がって言う。
「ゼローグお前はもっと強くなれ、じゃないとこの先の戦い、足手まといにしかならんぞ」
「どういう事だ? この俺が足手まとい?」
あんなに強いゼロが足手まといって、どういう事? ゼロ以上に強い人が現れるって事?
「来たる、来訪者との戦いに備えてな」
「……来訪者?」
首を傾げてサタンに問うゼロ。
「分かりやすく言えば、異世界からの侵略者って所だ。俺達は来訪者って呼んでる」
「話は終わりだ、絶対空間解除してもいいぞ」
サタンがそう言うとゼロは絶対空間と龍の手を解除する。
「行くぞ。そうだゼロ、目が覚めたらまたここにこい」
目が覚めたら? もうゼロは目が覚めてるのに、どういう事?
すると、突然ゼロが口から血を吹き出しその場に倒れた――。
第二章、全40話のつもりで書いていたんですが、37話で暴走したゼローグを元に戻して、異世界からの侵略者、来訪者の話をするのは無理そうだったので、今回1話増やしました。なので、第二章は全41話となっております。




