34 二人の少女の過去
「二人の過去を話す前に一つ聞いていいか?」
「どうして、自分達の過去を話す気になったかですよね?」
「あぁ」
そう、俺が聞きたかったのは何で恐れていた、自分達の過去を話す気になったのか。
「……あんなふうに優しくしてくれたのは、貴方が初めてだったから」
頬を赤く染め嬉しそうに言ったリーディエットは、とても優しい顔をしていた。
部屋で俺が言った事が、それだけ嬉しかったんだろうな。
『それだけじゃないと思うぞ?』
それだけじゃないってどういう事だ? ルイーザ。……他にも理由があるって事? ……うーん、どんな理由だろう……。
『……鈍い奴』
ん? ルイーザ、何か言ったか?
『何でもないよ、只の独り言さ……』
中に居るルイーザとの会話を終え、リーディエットに言う。
「そっか……そんじゃ、二人共ソファーに座れよ、話はそれからだ。」
「はい」
リーディエットは返事をした後、俺の座るソファーの左隣にあるソファーに、エスフィールと共に座った。
「話してくれ、過去に何があったのか」
俺が言うとリーディエットは力強く頷き、自分達の過去を話し始める。
「四年前の事です。当時、私は十五歳、妹のフィーは十二歳でした。お父さんは畑に行き野菜の収穫をして、お母さんは家事をする。……いつもと変わらないとっても幸せな日常でした。だけど、そんな幸せな日常も長くは続きませんでした。……村に人攫いが現れ村の両親を含めた大人達を殺し、私達を含めた村の子供達は、全員その人攫いに売り飛ばされたんです。あの日から私達の幸せな生活は、絶望の生活に変わったんです。……私達はとある貴族の家に奴隷として買われて、貴族達のは鬱憤を晴らすかのように、毎日私達を殴り蹴り、また殴り、また蹴る、そんな生活を四年間送ってました。そして、四年たった日に貴族達は私達を不必要として、貴方が私達を見つけたあの日にあの会場に売り飛ばしたんです。これが、私達の忌まわしき過去です」
体中が傷だらけだったのは、そういう事だったのか……。その貴族許せんな、こんなにも可愛い女の子に、殴る蹴るの暴行をするなんて! それに、その人攫いも許せんな。
だけど、先ずは二人に過去を話してくれた事に感謝しないとな。
「ありがとな、過去を話してくれて」
「いえ、貴方のお陰で勇気が出たんですから!」
「ゼローグでいいよ、リーディエット」
俺が言うとリーディエットは、嬉しそうにして返事をする。
「はい! ゼローグさん!」
「それにしも、貴族もそうだけど、その人攫い許せないね」
アルシアがそう漏らすと、メロディアがこう言ってきた。
「どんな奴らだったのか、聞いてもいいかい? リーディエットさん」
「はい、構いませんよ。その人攫いは自分を妖狐の生き残りだと言ってました」
リーディエットの言った事に俺は同様を隠せなかった。他の皆も俺と同じ様で驚きの声を上げていた。特に凛はそれを聞いて硬直していた。
「お兄……」
そう言った凛は不安げな表情で、俺を見ていた。俺は優しく凛の事を抱きしめて、凛の頭を撫でながら言う。
「大丈夫だ凛。安心しろ」
「あ、あの……」
この状況に、置いてけぼりなリーディエットに言う。
「凛はな、妖狐の生き残りなんだよ」
「えっ! 生き残りって……」
抱きしめていた凛を落ち着かせると、俺は凛の過去について、リーディエットに説明する。
「凛は神の加護を宿して居た為に、川に捨てられたんだ」
「神の、加護?」
聞いたこともないという顔で、リーディエットは首を傾げていた。エスフィールもリーディエットと同様に、首を傾げている様だ。
「そう、まぁ、説明するよりその目で見た方が良いかな。アルシア、二人に神の加護を見せやってくれないか?」
「うん! いいよ!」
そう言ってアルシアは立上がると、自分の神の加護をリーディエットと、エスフィールに披露する。
「おいで、妖精さん達!」
そう言ったアルシアの周りには、数人の妖精が集まり、アルシアの周りを舞っていた。
これに、リーディエットとエスフィールはとても驚いていたが、二人共笑顔になり妖精の舞を楽しそうに見ていた。
「凄い……」
「綺麗……」
妖精の舞を見て、二人はそう漏らす。
「なぁ、リーディエット。村を襲った妖狐は、他に何か言ってなかったのか?」
妖精の舞を見終えたリーディエットはこう言う。
「あ、はい、妖狐の里を滅ぼした奴に復讐するんだ! その為に人攫いになった。……って言ってました」
……っ! 本気かよ。それじゃあ、リーディエットとエスフィールの両親が死んで、人攫いに売り飛ばされて、貴族にボロボロになるまで暴行されたのは……俺の……せい……。
「お兄……」
「ゼロちゃん……」
そう漏らした凛とアルシアは、不安そうにして俺を見ていた。
「俺のせいか……」
「え? それって、どういう……」
意を決して俺は立上がって、リーディエットとエスフィールに言う。
「妖狐の里を滅ぼしたのは……俺だ……」
「それじゃあ、あんたのせいで、パパとママが死んだって事?」
俺の告白に、今まで殆ど口を閉していたエスフィールが言う。
「あぁ、そうだ」
俺が答えるとエスフィールはソファーから立ち上がり、俺の胸ぐらを掴み涙を流しながら言う。
「あんたのせいで、パパとママが死んだんだっ! あんたのせいで! ……あんたのせいで私達の日常が壊れたんだ!」
「辞めなさい、フィー!」
リーディエットはソファーから立上がり、エスフィールを制止する。
「だって、こいつのせいでパパとママが死んだんだっ!」
エスフィールを宥めながら、リーディエットは俺の目を見て言う。
「聞かせて下さい、どうして、妖狐の里を滅ぼしたのか」
「凛を川で拾って育てて居た時に、凛が妖狐だって事を知った。それで、どうして川で流れていた理由を知る為、記憶を読み取れるマールって奴と一緒に、妖狐の里に向かった。凛を捨てた理由はさっき言った神の加護を宿していたから」
俺が言うとリーディエットが捨てられた理由を質問してくる。
「どうして、神の加護を宿しただけで捨てられるんですか?」
「妖狐ってのは、長い年月を経て妖力を増やしそれにより尻尾が増えていき、最終的には九尾の狐になるんだ。だけど妖狐の長は神の加護を宿していたら、九尾にはならないと判断して、まだ幼かった凛を川に捨てたのさ。神の加護を宿していても何の問題もねぇのによぉ」
あの時の事を思い出し腹が立ち、俺は拳を強く握り締めていた。
「それで妖狐を滅ぼしたんですか?」
「……奴ら……妖狐が滅んだ理由はたった一つだ。俺の大切な凛に、あんな酷い目に遭わせたんだ、|妖狐(奴ら)が滅ぶ理由はそれだけで十分だ」
怒気を含んだ声で言うと、師匠と凛を除いたこの場に居た全員が、とても怯えた表情になっていた。




