26 三人目の魔王
俺達は屋敷に向けて、手を繋いで並んで歩いていると、凛がこう言ってきた。
「ねぇ、お兄」
「ん?」
「屋敷に居る皆は、もう寝ているでありんすかね?」
「寝てるんじゃないか? まぁ、ナナは起きてそうだけどな」
前に、食後の散歩をしに村まで、凛と唯の三人で歩いていた時に、アガレスに出合ったんだよな。
その時はナナが俺達三人を、一人で待っていてくれたんだよな。
アガレスと出合った時に、凛がアガレスと戦って、俺からのご褒美で尻尾が二本になって、パワーアップしてモード妖孤・二尾を、扱えるようになったんだよな。
そして、そのご褒美で俺と王都で、デートをしたんだよな。
その後、夕食を食べた後に、広場で俺は凛にプロポーズされて、俺と凛は婚約したんだ!
改めて振り返ると、あの時、アガレスに出合ってなかったら、凛と王都で二人っきりで、デートをする事は、無かったんだろうなぁ。
アガレスに感謝しないとな、あいつに出会ったおかげで、凛と婚約する事が出来たんだからね!
それにしても、まさか、七十二柱の悪魔に、感謝する日が来ようとは……。
「わっちらが婚約した事は、明日言えばいいでありんすかね?」
「そうだな……ナナが起きてたら、ナナには言っておこうか。何時も俺達の世話を、してくれてたからな!」
「そうでありんすね!」
そんな事を話していると、随分遠くから、からのさっきのシトリーとは、比べ物にならない位の魔力を感じた。
これだけの魔力となると魔王か? 今日はとことんツイてないな、さっき、七十二柱の悪魔に出合ったと思ったら、今度は魔王かよ!
はぁ、面倒な事になった……。
俺は、凛と二人っきりの時間を、楽しみたかったってのに! 七十二柱の悪魔といい、魔王といい、どうして俺の邪魔をするんだよ!
って、愚痴ってもどうしようもないか。
とてつもない魔力は、どんどん此方に、近づいてくる。
「来るぞ!」
魔王は勢いよく飛んで来て、地面に着地すると魔王は、何事も無かったかのように、地面に立っていて、シルエットのみが確認出来る。
辺りには土煙が濛々と、立ち上っている。
暫くして土煙が晴れると、魔王が立っている所は、クレーターになっていた。
ピンクのロングヘアーに、蒼い瞳、身長は多分百六十センチ程、レヴィアタン以上に露出の多い格好をしていて、色んな所から素肌が見えていて、裸と言っても過言ではない、……凄いセクシーな魔王だ。
そして、レヴィアタンと同じくらいの美人だ。
眼前にいるセクシーな魔王の名は、メフィストフェレス、……魔王メフィストフェレス!
魔王と目が合った瞬間、俺はとてつもない激痛に見舞われた。
「ぐぁぁぁぁぁあああああ!!」
「お兄!!」
俺は余りの激痛に、その場に膝を着いていて、激痛に耐えていた。
凛は心配そうにして、俺の側に駆け寄り、不安そうな顔で俺を見ているが、凛は何が何なのか、理解出来ずにいるようだ。
クソッ! この痛み、……あの時、村でレヴィアタンと、出合った時と同じだっ!
「うぁぁぁぁぁあああああ!!」
「お兄!」
……いや、同じ……じゃねぇ……あの時以上の痛みだ! クソッ! 痛てぇ、痛てぇ、痛てぇ! 体中が痛てぇよ!
刹那、あの村で起きた事と同じ様に、俺は身体の中に居る、何者かに身体の支配権を奪われていく感覚に再び陥っていた。
あの時と同じかよっ!
そこで俺は意識を失った――。
俺は立ち上がって、眼前に居る彼女に声をかける。
「久しぶり、メフィー」
「久しぶりね、ルシー。元気にしてた?」
彼女は笑顔で俺に言ってくる。
相変わらずの綺麗な笑顔だ。
「まぁまぁだ」
「そう……あの娘の事が気になるんでしょ? あの娘、貴方にとても懐いていたからねぇ」
「俺を恨んでるだろうな」
「えぇ、貴方の事、とても恨んでいたわよ」
「だろうな、まぁ、俺はあいつを裏切ったんだから、当然の事だけどな」
謝っても許してくれないだろうな。
そもそも、俺があいつ会う資格なんて無いか……あいつには本当に、悪い事をしてしまった。
「でも……あの娘は、貴方の気持ちも理解していると……そう言っていたよ。泣きそうな顔でね」
「そうか……あいつには謝っておいてくれ。……くっ! ……限界か……」
倒れそうになった所を、メフィー駆けつけて、俺を支えてくれた。
「ルシー! 平気か?」
「どうやら限界の様だ」
そこで、俺の意識はプツリと途絶えた――。
*****
『三人目の魔王に接触したか……』
『残り……九人』
『はぁ、残り九人かぁ……遠いなぁ』
『まぁ、気長に待とうよ!』
『そうだな』
まただ、前も同じ様に、こいつら何かを話してる。一体何の話しているんだ? 残り九人って何の事だ? それに、ここは何処なんだ?
『早く目覚めないさいよ、ゼローグ。貴方の婚約者が心配してるわよ』
何で俺の名を知ってるんだ? そういえば、王宮で寝ていた時も、似たような事を言われたな。だけど、声音が全然違う。何者なんだ? 俺の婚約者って……凛が俺の心配をしてるのか?
『そうよ……だから、早く目覚めないさよね。大事な婚約者なんでしょう?』
そうだ、凛は俺の大切な――。
「お兄?」
「うぅ、凛……か?」
「お兄!」
凛は大粒の涙を流して、俺に抱きついてきた! その顔は安堵の顔となっている。
「……っ……心配したでありんす……っ……十日も寝込んでっ……目覚めないかとっ……思って……」
俺は十日間も眠っていたのか、だから、凛はこんなにも――。俺は凛の頭を、撫でて上げようとしたが、身体が一切動かなかった。王宮で寝てた時と同じか……。
「心配かけてごめんな……凛」
漸く凛は落ち着いた様で、目を赤くしながら、服で涙を拭いていた。後で心配かけた詫びに、凛の事を思いっきり、抱きしめてやろう。
「……ううん、大丈夫でありんす。わっちは今から、広間に居る皆を呼んでくるでありんす」
「あぁ、分かったよ」
凛は俺の頬にキスをすると、俺が目覚めた事を、広間に居る皆に知らせに行った。
凛だけじゃなくて、他の皆にも心配をかけちまったな。
まさか、十日間も寝込んでいたとはな。
それにしても、凛は、どうやって俺を部屋まで、運んできたんだろう?
まぁ、凛が戻って来たら、説明してくれるか……。




