25 神器の可能性
「神器の二つの可能性? どういう意味だ!」
「そのままの意味さ、神器には二つの力の解放がある。一つが限界突破、そして、もう一つが臨界突破これが神器の二つの可能性だ。んでもって、二つの能力には大きな違いがあるんだ。限界突破は命を削るが性能は、臨界突破の十倍になる危険なパワーアップ。そして、臨界突破は性能は限界突破に劣るが、命ではなく体力のみを削る安全なパワーアップ。本来はどちらか片方しか、習得する事は出来ないんだが、俺はその両方の力を扱える」
「何故貴様はどちらか片方しか、習得する事が出来ない力を、両方とも扱えるんだ」
「簡単さ、俺が天才だからだ! ……さて、お話はここまでだ、始めようか罰の執行を! 臨界突破!」
途端、右手に持っていた煉獄が、光輝き無数の光の粒子となる。
「刀が光の粒子に……」
光の粒子は、俺の全身を覆う様に、足、太股、腰、腕、肩、胸、そして顔に集まり、鎧を形成していき、全身鎧と化す。
腕の鎧からは、煉獄の炎が燃え盛っている。
まぁ、煉獄の炎も言っても、煉獄が放射していた炎程は、熱くはないんだけどね。
「臨界突破者、煉獄、全身鎧!」
「紅い全身鎧……これが、臨界突破」
俺は、俺と凛とシトリーを囲っていた隔離空間を解除すると、凛がこう言った。
「あれ? お兄、隔離空間を解除したでありんすか?」
「あぁ、もう使う必要は無いからな」
「使う必要が無いとはどういう事だ?」
「この姿は、神器解放時に常に放射していた熱を、鎧に収束させた姿。この姿になれば周りに仲間が居ても、安心して戦える。まぁ、微量の熱は放っているけどな」
「ふっ、面白い! おらぁぁぁあああ!!」
シトリーは、手元に魔法陣を展開して、禍々しいオーラを放つ魔剣を取り出し、俺に向かって斬り掛かってくる。
俺はシトリーの魔剣の一撃を、片手で受け止める。すると、魔剣は一瞬で溶けていき、ドロドロの黒い液体になる。
「そんな……俺の魔剣が溶けた……だと……そんな、馬鹿な!」
シトリーは自分の魔剣が、ドロドロに溶けた事に、酷く狼狽していた。俺は、そんなシトリーに、とても呆れていた。
「はぁ……お前、人の話を聞いてなかったのか?」
「何?」
「言っただろ、この姿は神器解放時に、常に放射していた熱を、鎧に収束させた姿だと」
シトリーは、俺の言った事を理解したようで、ハッとした表情をしていた。
「人の話はよく聞くべきだぜ。……さて、今度は俺のターンだ」
俺は手を前に出して、炎を放射して刀の形にする。
「煉獄刀!」
「炎が刀になった」
「これで終わりだ」
俺は煉獄刀を地面に突き刺すと、刺した所から、シトリーを中心に円を描くようにして、炎が燃え盛っていく。
「煉獄・灼熱地獄!」
「うぁぁぁぁああああ!!」
「地獄の業火に焼かれて死ね」
あっという間にシトリーは、黒焦げとなるが、まだ意識がある様だ。普通ならこれで死んでるんだけどな。俺は、左手に消滅の力を集中させて、シトリーに放った。
「なんだ、この球体は」
シトリーは、俺が放った消滅の力に、手を伸ばして触れると、触れた箇所がどんどん消滅していく。
「俺の腕がぁぁぁぁああああ!! くそぉぉぉぉおおおお!!」
シトリーを完全に消滅させた後、俺は臨界突破を解除する。俺達のデートを邪魔しなかったら、もう少し長生き出来たのにな。
「ふぅ、食後の軽い運動にはなったかな。行こうぜ、凛!」
「うん!」
俺と凛はまた手を繋ぎ、屋敷に向けて歩きながら、話していた。シトリーとの戦いで、時間を食っちまったからな。
歩くペース少しだけ早めたいけど、歩くペースは、凛とゆっくり歩いて帰りたいので、ゆっくりのまま歩いている。
「レストランで食べたご飯、美味しかったでありんすね」
「あぁ、凄い美味しかったよな。それとあのジャンボパフェも、もう食べたくないけど」
「わっちも、もう、あのジャンボパフェは食べたくないでありんす」
あのジャンボパフェの破壊力は酷かった、その前に、ステーキを食べていたのも、悪かったのかもしれないんだけどね。
それに、あの後気持ち悪くなって、宿屋で休むことになったんだよな。
「デート楽しかったな!」
「うん、すっごく楽しかったでありんす。……わっち、お兄に出会えて幸せでありんす!」
「あぁ、俺も幸せだよ。凛」
俺と凛は、向き合って口づけを交わし、今度は互いの舌を絡め合う。
長く濃厚なキスを終えて、俺は凛の事を抱きしめていた。
「愛してるよ、凛」
「わっちも、誰よりもお兄の事を、愛しているでありんす」
「さて、イチャつくのはここまでにして、そろそろ行こう。じゃないと帰りが遅くなっちまう」
「うん!」
俺と凛は歩くペースを早めて、屋敷に向けて歩き出した。
何時かセシリアを生き返らせて、凛と一緒に三人でこんなふうに、歩く事が出来たらいいな。
「何時かセシリアさんと一緒に、三人で並んでこんなふうに、歩きたいでありんすね」
どうやら凛も、俺と同じ事を考えていた様だ。
その為にも凛も言った様に、魔王を倒して必ずセシリアを生き返らせる。
それが駄目なら、俺が何がなんでも生き返らせてやる。
「あぁ!」




